デイドリームスイーパー
辺りは田舎道に変わっていた。西日が突き刺す。
蝉の声が響き、キツネ面に浴衣の子供たちが俺を一瞥して走り行く。
警戒されている。
既にキルゾーン。ここじゃ異物は俺の方だ。
ミッションの情報を反芻し、呑まれぬよう抗う。
ここはターゲットの住むマンション100階スペシャルスイート。踏み込んだら、この有様。かなり夢に侵食されている。
標的は齢200超のくそじじい、汚いカネで寿命を延ばしに延ばし、ここ30年はボケも酷かったらしい。
で、発症した。
田舎道はやがて、こんもりとした雑木林に吸い込まれる。お囃子が聞こえてきた。喧騒。夏祭りか。
道に沿って屋台が現れる。甘酸っぱいりんご飴、極彩色の金魚、吊り下げられた機械義手義足、お面売りは客の首ごとすげ替えている。
じじいの少年時代と会社時代のごった煮。全身を自社製品に置換しても、脳みそはどうしようもなかったか。
時間はかけない。銃を抜く。
途端に屋台の主人が、子供たちが、振り向く!
綿菓子屋は両腕からブレード展開、子供らは眼窩から銃口がせりだし、射的屋の胸が観音開き機関銃が火を吹く!
俺は前傾姿勢で即座にトップスピード。群がる機械人形をタックルで弾き飛ばし、銃弾をすり抜け、一直線に奥を目指す。
最奥にある社の扉が開き、苦悶する老人の顔が11個付いた仏像が身をのりだす。6つの腕が刀を構え、泣き叫ぶ!
「嫌、いや、イヤ。僕まだままだだだ遊ぶんだ」
「目覚ましだぜ、往生しな!!」
銃声!!!
◆ ◆ ◆
「聞いてねぇス」
「いや、明日から新人を見てもらう」
ボケ老人を叩き起こして、擦り傷だらけでオフィスに戻れば、これだ。
報告書もあるってのに。
「若い力、ありがたいスね。でも俺の下じゃなくていいですよ?」
「今度のは優秀だから、成績の良いお前の部下にして、学ばせる。たまには組織運営に貢献しろ。」
ボスは目も合わせず、ファイルを押し付ける。
俺は目を走らせる。
「聞いてねぇス。女ですか」
【続く】
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