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価格設定は悩ましい、という話

はじめに

漆器って「高級品だなぁ」と思いますか?
庶民には手の届かないモノだと思っていませんか?

「そんなことはないですよ」
と言いたいところですが、

正直、私も高いと思います!

漆器販売店に入店すること自体、そもそも敷居が高いと感じる人は多いでしょう。
入店したら何か高価な物を勧められるのではないかという不安もあります。(※そんなことはありませんが)
で、実際に商品の価格を見るとやっぱり高い!

お椀にしても、お箸にしても、お皿にしても、
器として機能するだけいいなら100均で充分なのでは?
…と思ってしまう。

プラスチック製品の方が断然安くてお買い得だ!


「消費者」としての目線から見ると、私もそう感じます。

でも、「漆器の作り手側」から言わせてもらえるなら、
まず、「プラスティック製品は環境に良くありません!
漆器は自然由来の材料を使っているので地球にやさしいです」

そして、
「漆器製品は、時間も手間も材料費もかかっています。
だから価格はこのくらいになります。
ご理解ください。」
となります。

※実際、漆の値段はどんどん高騰してますし、他の材料(金粉など)も高いのです。

私は作り手になってからそんなに経ってないので、
売る側の気持ちも買う側の気持ちも、どちらの言い分もわかります。

だから、値付けは本当に悩ましい…。

工賃の考え方

私の在籍している漆器工房は、受注生産がメインです。
問屋さんから注文を受けて、木地を預かりそれに漆を塗って加飾して納品して、工賃をいただきます。

扱う器は、
汁椀、ぐい吞み、皿、箸、スプーン、諸々と、種類は様々です。

これまでに一度でも着手したことがある器はその時の値段を参考にできるのですが、今までにやったことがない形状の器だったり、塗り方・仕上げ方に独自の注文があったりすると、その都度価格を考えます。

これがいつも本当に悩ましい…。


漆器の値段を決める要素としては以下のようなものがあると思います。

・材料費(木地、漆、金粉、等)
・道具、消耗品代(耐水ペーパー、砥の粉、磨き粉)
・作業費(=技術料、作業日数)
(・儲け?)

受注生産の場合、木地は提供されるのでその材料費はいただきません。
ですので、ウチの場合、基本は使った漆の量と作業量(時間)で算出する感じです。

小さい器だと使用する漆の量は少ないかも知れませんが、
塗りの作業が大変な場合は手間や日数がかかるので、その分の技術料をいただかねばならない、と考えます。

厳密に使用した漆の量を算出するのは現実的に無理なので、そこは経験則、というか過去の例にならってという感じになるでしょう。

だから経験の浅い自分は、値段を聞かれたとき父に丸投げすることがほとんどです(笑)。

過去にこんなことがありました。
とある問屋さんから今まで扱ったことのない形状の器に新規の塗り注文が来て、「いくらぐらいでやっていただけますか?」の問いに、私は心の中で
「このくらいだろうか?」と思っていたところ、
父は私の考えていた金額の10倍で話し、問屋と交渉成立しました。
「自分が口出さなくて良かった」とその時は胸を撫でおろしました(苦笑)。

展示会での販売価格を見てみる

漆作家さんや漆芸家さんは、個展やグループ展などの展示会で自分の作品の販売をしていることがあります。
製作者と「直」のやりとりなので、漆器販売専門店より安く買えるかも知れません。
漆器専門店は利益を捻出しないといけないので、その分が上乗せされているはずです。
まあ、展示会でも会場の利用料や売り上げの数パーセントを負担するために多少の上乗せはしているでしょうけど。

で、漆器の価格決めですが…。
なかなか、そういう生々しい話は聞けないので推測です。

おそらく、上記の要素は関係あると思います。
その他に、

・場所代(展示会販売等)、搬送代(ネット販売等)、梱包費用、etc.
などを考慮しているでしょうか?

ある作家さんの展示会を見に行ったとき、写真を撮っていいか尋ねたところ、価格は映さないで欲しいと言われました。

日本各地様々な場所で展示をされている方で、その場所ごとに価格を買えているのだそうです。
色々とあるんですね…。

SE時代も?

無理やり、システムエンジニア(SE)時代の話をぶち込んでみます(笑)。

そういえばSEのときも、見積りを作るのが面倒で、
営業や顧客から「安い」だの「高い」だの言われるのが本当に嫌でした。

医療系システムの会社にいた頃は、「一人月いくら」の単価が既に決まっていて、例えば一人月100万円だとすると、3人がかりで開発に4ヶ月かかると見積もった場合、合計12人月となり、見積金額は1,200万円になります。
これはあくまでソフトウェアだけの数字。
ハードウェアや工事費用などは別途見積りが必要でした。
さらに、出張が絡む仕事の場合、交通費やら日当なども加えます。

ああー、よくこんな面倒くさいことやってたなぁー(笑)。
見積作ってるだけで結構な時間を消費しちゃってたなぁ。
(今は、AIがやってくれたりするのかなぁ…?)

ガツンといってやりたい、が

問屋側から、工賃を指定してくるケースもあります。
そういう問屋は職人を安い工賃で済まそうとしているので、
お椀一つ塗るのに200円前後で、と言ってくることもあります。

そういう値切ってくるようなところとは取引したくないものです。
(しかも、そういうところに限って急かしてくる。)

漆の値段が安い頃の感覚で依頼してくるんでしょうかね?
安い工賃でこき使おうとしているから職人さんが減っちゃったのではないのですか?

自分でバシッと金額決めて、誰にも文句を言わせない。
いつか、そんな作り手になりたいものです。


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