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生後100日の次男に寄せて

2020年9月7日、夜明けとともに生まれた次男は12月16日で生後100日を迎えた。

よく笑い、よく飲み、よく眠る穏やかな子。
服はほとんど長男のおさがりだが、文句も言わず(当たり前だが)、ちゃーんとその中におさまっている。
私の実姉からもらった北欧テイストのベビージムの下でおもちゃを揺らして遊び、のぞき込むとニコーっと笑顔を返してくれる。
兄の動きをじーっとみたり、ゆっさゆっさと揺さぶられて迷惑そうな顔をしたり。
そんな、柔らかい子だ。

そんな彼の穏やかさに甘えて、大して気にもかけずここまで来てしまった。
いつからかって、それはもうお腹の中にいたころから。

長男が生後6か月の頃に妊娠が判明し、そのまま卒論提出、大学卒業、就職と駆け抜けた。長男は保育園に入り、寝返りをうつようになり、ずりばい、ハイハイと瞬く間に成長し1歳を迎えた。
自分が妊婦であることを忘れてしまうような生活だった。

生まれてからもそう。
3時間おきの授乳以外はほとんど自己主張の無い次男は、伝い歩き、一人立ち、一人歩きと人生で最も濃い成長を遂げている最中の長男の影に隠れて静かに生きていた。
一日中一緒にいたはずなのに、長男と散歩に行くときは必ず次男を抱っこしていたはずなのに、この胸に抱いて授乳していたはずなのに、2人が寝静まった夜に、あれ、今日の次男ってどんなだったっけ…と考えてしまうこともしばしば。

もちろん生まれたての赤ちゃんなのだから、どうしても泣き止まなくて抱き続けたことや、兄と同時にギャン泣きで手が回らず途方に暮れてしまったことだってある。
今だってお風呂上りは毎日声が枯れるほど泣いている。
だけど、そんな姿も帳消しにしてしまうような穏やかさを、彼は兼ね備えている。

このnoteは、自分への戒めでもある。私は彼の穏やかさに甘えすぎている。

だって、生まれたてのか細いあの子は、まだ合わない目線でぽやっと空中を見つめていたあの子は、ようやく自分の手を見つけたあの子は、生後100日を迎える前の私の子は、もう帰ってはこない。
全てが愛しい時間だったはずなのに、私はそれを無下にしすぎてしまった。

お腹にいたころから生えているほわほわな髪の毛、少し湿疹が出てきてしまったけどもちもちなほっぺ、気づけば出生体重の2倍以上に成長していたむっちりとした身体、夫に似た一重のまなざし、私にそっくりな形の小さな爪。
穏やかで、優しくて、あったかい空気。
彼のすべてを愛している。この胸に抱けることを毎日幸せに思う。

だからこそ、これからは一瞬一瞬をもっと大切にしなくては。

母になって1年半、成長とは多大な喜びと同じだけのさみしさを併せ持つことを十分理解している。
明日になれば1日分成長した我が子に会える。今日の我が子にはもう2度と会えない。
だから、1日1日、大切な”今日”を、五感すべてで覚えておこうと、次男の100日を機に今一度心に刻む。

長男が100日を迎えたときも、当時の想いをnoteに残した。

この頃の私は、毎日我が子を生かすことに必死だったように思う。
初めての育児。気軽に相談できる友人もおらず、まだ支援センターや公園にいく月齢でもなく、夫は育児に協力的ではあったが仕事が忙しく、息子と2人ですごす日々。
その日々が過ぎていくことに一抹のさみしさこそあったものの、過ぎた時間の愛しさには気が付けなかった。
長男に関して、わたしはいつもそうだったかもしれない。
わたしの唯一無二の宝物を、守らなくてはならないという責任に押しつぶされそうになっていた。

次男が生まれて、彼が醸し出す柔らかな空気は、緊張でこわばった私の心を溶かしてくれた。
いつも漂うミルクのようなかすかな香りに癒された。

逆に、次男が泣いて泣いて大変な時は、長男の笑顔や、ヨチヨチと歩いてきて私に抱き着くまっすぐな愛情に救われた。

夫不在の時に2人とも同時に泣いてしまって手が付けられないときは、さすがに私もしんどくて、半分一緒に泣きながら二人を同時にぎゅーっと抱きしめる。
だんだんと落ち着いてくると、長男に笑顔が戻り、次男はミルクを飲んで満たされた表情になる。二人の暖かさに、私も満ち足りた気持ちになった。

1人育児から2人育児になり、当然2倍の手がかかるし、2倍の負担もある。
夫が家にいるときはまだ余裕も持てるが、多忙な仕事ゆえに家にいられない時間も長い。
手が回らず、自分が二人欲しい!と切に願う瞬間も、毎日のように訪れる。
だけどなんだか、今のほうがずっと育児を楽しめている気がする。

それは、長男が1歳をこえ自分で歩けるようになったからとか、私が育児に慣れてきたからとか、そういうこともあるけれど、やっぱり一番は、

次男、君が生まれてきてくれたから。

あの日、深夜に駆け込んだ病院で陣痛を乗り越え、やっと君に会えた時。
立ち会ってくれた助産師さんがカーテンを開けてこう言った。
「まさに夜明けと同時に生まれてきたね」
あとから調べると、君の出生時刻とあの日の日の出時刻はほぼ一致していた。

君は間違いなく、我が家を照らす新しい光だ。
君が私のお腹にやってきて、小さな長男を抱えながら不安で不安で押しつぶされそうになってたあの頃の私に胸を張って言える。
幸せな宝物は2倍になった。

生まれてきてくれて、ありがとう。
生後100日、おめでとう。

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