スーパーヒーロー

中2の時に文化祭公演のために書き下ろした脚本「スーパーヒーロー」です。
個人的には当時会心の出来だったので今でも気に入ってます。
公演時間は大体45分、大会でもやってみたかったなと思いますが叶わずでした・・・


ストーリーテラー
これは文明が栄えて滅んで、また栄えて滅んで、何度も繰り返した後の世界のとある村で起きた出来事のお話です
ある時、見たこともないような大きくて激しい嵐が村に迫っていました
村人はみな慌てふためき、我先にと逃げ出す者、すべてを諦めて立ち尽くす者など村中が大混乱になりました
そして、まさにいま村に嵐が襲いかかろうとしたその時、凄まじい音と共に稲光が走り、気がついた時には嵐はすっかり去り、空が明るくなっていたのです

(上記ナレーションに合わせて)
大荒れの天気の中、みすぼらしい男がフラフラを歩き回る
天気が一段と荒れた時、雷鳴と共に光が弾けるような風景が離れた所に見える
そして一気に空が澄み渡り太陽の光が射してきた
その時、空から何か四角い装置のようなものが飛んできた
男はそれを拾い上げてどんなものかを探るように触ってみる

その時遠くから数人の男がこのみすぼらしい男に近寄ってきた
「あなたがスーパーヒーローでしたか」
「あの嵐を退けるとは。村の言い伝えの通りですね。驚きました」
「ささ、どうぞこちらへ。村のみんながお礼を言いたがっております」
男たちに伴われ、みすぼらしい男は村へと向かっていった・・・

ストーリーテラー
村の言い伝えって一体何なんでしょう?そしてあのみすぼらしい男は一体誰なんでしょう?
・・・そして月日は流れ、あの日から5年後 ・・・

スーパーヒーローに憧れる男(主⼈公)がとある村を⽬指して旅をしていた

離れた場所で何やら作業している男(謎)を⾒かける

主:「すいませーん、この近くにヒーロー村ありませんか?」
謎:「ヒーロー村?近くに村はあるけどそんな名前の村だったかなあ?」
主:「あなたはヒーロー村の⽅ではないんですか?」
謎:「僕は村の⼈間じゃないよ。村とは少し離れたこの場所でのんびり機械をいじって暮らしてるのさ。たまに村に⾷料を買い出しには⾏くけど、村の⼈たちとはほとんど交流はないね」
主:「え?ずっと⼀⼈で暮らしてるんですか?ご家族は?」
謎:「⺟さんは僕が⼩さい頃に死んじゃったからずっといない。⽗さんも 3 年前に病気で。だから今は僕⼀⼈だね。まあでも⽗さんから引き継いだ仕事もあるし、毎⽇やること多くて充実してるから寂しくはないね」
主:「へえ、強いんですね。俺なんかずっと両親に⽢えっぱなしで。この歳になっても仕事もせずに家でダラダラ過ごしてるのを⾒かねて、スーパーヒーローに弟⼦⼊りして根性叩き直してもらえ!て家を追い出されちゃいました。だからこうして、スーパーヒーローがいるっていうヒーロー村に向かってるんですよ」
謎:「そのスーパーヒーローさんはどんなすごいことを成し遂げた⼈なの?」
主:「えー?あの超有名⼈を知らないんですか?あの 5 年前の嵐を退けて村を救った張本⼈ですよ!村に古から伝わる⾔い伝えの通りだって⼤騒ぎになってたの知らないんですか?」

(急に声⾊をかえて)

主:「この村に厄災が迫る時、英雄が来たりて奇跡の装置を⽤いてこれを退けるなり」
謎:「おう、どうした。急にかっこいいな君」
主:「恥ずかしいな!とにかくこの⾔い伝えの通り、村にいるスーパーヒーローがあの⼤嵐を何やら特殊な装置を使って退けたらしいんですよ。」
謎:「それはすごいね。僕もそんなすごいスーパーヒーローなら⼀度会ってみたいな。作業が⼀段落するまで待っててくれたら、僕が君を村まで連れて⾏ってあげるよ。」
主:「ほんとですか?助かります。じゃあここでしばらく待ってますね。⼀段落するまでどれくらいかかりますか?」
謎:「うーんと、5 年位かな?」
主;「ごっっ!!?」
謎:「うそうそ、すぐ⽚付けるよ。いや、今やってる機械作りを仕上げるにはあと 5 年くらいかかるからさ。早くやらなきゃとは思ってるんだけどね」
主:「⼤変なんですね。どんな機械なんですか?」
謎:「ちょっとした道具だよ。⽗さんから⾔われて作ってるんだけどさ。⽗さんも爺さんから⾔われて作ったらしい。爺さんも曾祖⽗さんに⾔われて作ってたんだって。ずっと続いてるらしいから僕で⽌めちゃうわけにもいかないからね」
主:「伝統⼯芸品みたいなもんなんですね。へえ、すごいな。」
謎:「さてと。これでよし。お待たせしました。じゃあ村まで⾏こうか」
主:「はいっ」

村人たちが上手から入ってくる

村 1:「あの時の嵐はマジでやばかったよなー。こんな村なんか全部ふっとんじゃうかと思って俺らみんな泣いてたもんな」
村 2:「あの時のお前の慌てっぷりは今から考えると笑えるな。嵐で全部⾶ばされるからって家の前の⽥んぼを掘り返してバカでかい⽳掘ってたくらいだからな!よくあんなデカイ⽳掘ったもんだよ」
村 1:「あの時は必死だったんだよ。全部⾶ばされちまうなら先に⽳の中に避難しとけばいいだろって思ってさ。まあ結局スーパーヒーロー様があんな嵐をふっとばしてくれたからな」
村2:「あれから観光で潤うようになったのもありがたいよな。特に村の名前を「ヒーロー村」に改名してからは⼈気も⼀段と増したな」
村1:「あれはナイスアイデアだっただろ。俺なんか毎⽇寝ないで考えたもんね。最⾼にクールでかっこいい村の名前はないか!って。それで思いついたんだよ。ヒーロー村。最⾼だろ」
村2:「まあ最⾼かどうかは置いといて、分かりやすい点は評価する」

反対側からスーパーヒーローが歩いてくる

村1:「あっ!スーパーヒーロー!こんにちは!これ、今⽇のお届け物です」
ス:「おう。今⽇もご苦労。今⽇のお届け物は??なんだろな〜??」
ス:「おい!なんだよこれ。また⽶と芋しかねえじゃねえか!俺は⾁が⾷いたいって⾔っただろ。なんで⾁が⼊ってねえんだよ!」
村2:「すいません。スーパーヒーロー。ここ最近天候があまり良くなくてこんなものしかお届けできないんですよ」
ス:「うるせえなあ。⾔い訳なんかはどうでもいいんだよ。俺が⾷いたいって⾔ってるんだから持ってくればいいの!誰のおかげでこの村があると思ってるんだよ。俺様だよ?このスーパーヒーロー様がいたから村があるのをもう忘れちゃったの?」
村1:「すいませんすいません。次はなんとかしますから、今⽇はこれで勘弁してください」ス:「ちっ。仕⽅ねえなあ。もう次は無いからな?ちゃんと⾁もってこいよ?うまい⾁だぞ?」

遠くに歩いていくスーパーヒーロー

村1:「あの⼈すごい⼈なんだけど、なんか前と⼈格変わっちゃったよな」
村2:「そうだなー。5年前はもっと素朴な感じの⼈だったのにな」
村1:「まあでもスーパーヒーローだしな。あの時の恩は返さないとバチが当たるよな」
村2:「うん。とりあえずどこかでうまい⾁を調達しないと。どうしたものか・・・」

捌けていく村⼈2⼈
村に⼊っていく主⼈公と謎の男

主:「ここがヒーロー村かー。想像してたよりは普通だなあ」
謎:「ヒーロー村って⾔われてるのは知らなかったけど、ここは昔から特に代わり映えのしない、いたって普通の村だよ」
主:「でも今はあのスーパーヒーローがいる世界で⼀番クールな村!みんなの憧れスーパーヒーロー!あー、早く会いたいなー」
謎:「で、君はそのスーパーヒーローにどうやって会えるかは知ってるの?」
主:「それは前もって調査してありますよ。公式 Twitter によると、事前に公式スーパーヒーローLINE アカウントをフォローしてそこに書かれてる⼝座に⾦額を振り込むと諸々のサービスが提供されるとか」
謎:「令和!」
主:「で、10000 円でサイン⼊りスーパーヒーロータオル1枚、50000 円でサイン⼊りスーパーヒーロー公式写真集1冊、100000 円でスーパーヒーローとのチェキ券、1000000 円で弟⼦⼊りの権利がもらえるらしいです」
謎:「⾼い!」
主:「で、俺は親が事前に 100 万円振り込んでもらったんで、ちゃんと弟⼦⼊りの権利があるんです!」
謎:「⾦持ちか!」
主:「でも不思議なんですよねー。100 万円振り込んだら連絡先と集合場所が書かれた DM が来るはずなんですけど、いつまで経ってもなにも送られてこないんですよ。」
謎:「典型的なやつ!」
主:「きっとスーパーヒーローのアカウントが乗っ取られたとか何かしらのトラブルが運営側にあったに違いないので、だったらスーパーヒーローの所に来ちゃえば良いかなと思って」
謎:「ピュア&ポジティブシンキング!」
謎:「いや、まあ。なんだ。君が良いやつなのはわかったけど、それで村のどこにスーパーヒーローがいるのかは分かってるのか?」
主:「それはバッチリですよ。Youtube の公式配信を 1000 回は⾒てますから。スーパーヒーローの部屋の背景の映り込みからグーグルマップで完璧に位置を特定できてます!わざわざ忙しいスーパーヒーローに住所を書いて送らせるような⼿間はかけさせられませんから!」
謎:「サイバーなストーキング!」
主:「というわけで、この⼤きな三⾓形の建物の右斜正⾯の 3 階部分にスーパーヒーローはいるはずです。いきましょう」
謎:「僕はどうやらとんでもなくヤバいやつと⼀緒に来てしまったのかもしれない」

スーパーヒーローの家の前にて

主:「いよいよスーパーヒーローに会えますね。緊張するなあ」
謎:「でもそんな詐欺野郎・・・いや、忙しいスーパーヒーローが急に来た君に会ってくれるだろうか?」
主:「それは⼤丈夫ですよ。なんせ俺は弟⼦⼊りの権利を持ってるんですから!きっとスーパーヒーローも会えてよろこんでくれるはずです」
主:「ピンポーン!スーパーヒーローさん、ふるさと納税の返礼品の宮崎⽜のお届け物でーす」
謎:(⼩声で)「おいっ、なんだその呼びかけは!完全に嘘じゃん!」
ス:「はーい」ガチャ
主:「こんにちは!」
ス:「なんだお前は」
主:「はじめまして!弟⼦の**です!連絡頂けないんで来ちゃいました!」
ス:「弟⼦だと?だいたいお前、ふるさと納税の宮崎⽜持ってねえじゃねえか!主:「まあそれは、ちょっとしたジョークですよ」
ス:「ふざけんなよお前!嘘をつくのはな!⼀番やっちゃいけないことなんだぞ!⼈を騙すのはものすごく悪いことなの分かってるのか!」
謎:「いま僕は⼼の底から⼤声で「お前が⾔うな」と⾔いたい!」
主:「ふるさと納税の件はすいません。でもどうしてもスーパーヒーローの弟⼦になりたくて来ちゃいました。⼀応、俺は弟⼦になる権利は買ってあるはずなのですが・・・」
ス:「弟⼦の権利?あー。あの LINE のやつか。(反対⽅向を⾒ながら)めんどくせえなあ。しかたない。適当にあしらって帰らせるか」
ス:「あー。新しく弟⼦になりたいというのは君だったか。会えて嬉しいよ。で、君は?」謎:「僕ですか?僕はスーパーヒーローがどんな⼈か気になって彼に着いてきた者です」
ス:「まあな。村を天災から救ったわけだからな。」
ス:「で、弟⼦になりたい君。スーパーヒーローの弟⼦になる権利はあるというが、君はまだ弟⼦になる⼊り⼝に⽴ったにすぎん。これから⻑く⾟い修⾏に耐えてようやくスーパーヒーローの弟⼦として認められる必要があるのは分かっているか?」
主:「はい。わかっています。がんばります!」
ス:「分かっているならよろしい。ではまず修⾏の第⼀弾から始めるとしよう。弟⼦たるもの、師匠の欲しているものを察知する能⼒が必要だ。これができないようでは弟⼦失格だ。では問おう!今私が欲しいものは何だ?どうだ!お前などには知る由もなかろう!」
主:「⾁でしょ」
ス:(⼤げさに驚く)「!!な、なぜそれを!!」
主:「まあ公式配信でも⾁が⾷べたいって⾔ってましたし、さっきのふるさと納税のやつでもう⼝が完全に宮崎⽜の⼝になってるでしょ」
ス:「お、お前・・・、⾒かけによらずやるじゃないか」
主:「というわけでもうさっき Uber に注⽂しときました。A5 ランク宮崎⽜のすき焼きセット。もうすぐそこまでドライバーさん来てるんで受け取りにいってきまーす」

部屋を出ていく主⼈公

ス:「ここまでやるやつは今まで会ったことがないな」
謎:「実家が⾦持ちで異常な⾏動⼒が伴うとこうなるのか」
謎:「ところでスーパーヒーローさん、さっき彼から聞いたんですがあなたは 5 年前の天災を何やら特殊な装置を使って退けたとか。もしよかったら⾒せてもらえませんか?」
ス:「⾺⿅者、あの伝説の装置をそう簡単に⾒せるわけないだろう。」
謎:「そこをなんとか!どうしても気になるんですよー」
ス:「駄⽬だ駄⽬だ。あれは選ばれしものだけが⽬にすることができる特別なものなんだ」

部屋に戻ってくる主⼈公

主:「ただいま戻りましたー。はい、これが A5 ランク宮崎⽜のすき焼きセットでーす」
ス:「おお!でかした弟⼦よ!最⾼にうまそうじゃないか」
主:「あれ?お⼆⼈でいままで何をお話されていたんですか?」
謎:「いや、君が話してくれた装置を⾒せてくださいってお願いしてたんだけどね。⾒せてくれないらしいんだよ」
主:「えー!それは⾒たい!俺も⾒たいです。村に語り継がれている伝説の装置!せっかくスーパーヒーローの弟⼦になれたんだし、ぜひ⾒たいです!」
ス:「こいつにも⾔ったが、あれはそう簡単に⾒られるものではない。あれは限られた⼈間しか・・・」
主:「もし⾒せてくれないならこのすき焼きセット、持って帰りますけど良いですか?」
ス:「こ、こいつ・・・」
主:「ほらー、もうすっかり⼝の中がすき焼き待受け状態になっちゃってるでしょー。ほらこの匂い。この美しい⾁の⾊合い。これ⾷べたら⼝のなかでとろけるだろうなー。おいしそうだなー。」
ス:「ぐぬぬ・・」
主:「さあ、どうします?このすき焼きセット、なかなか⼿に⼊らないですよー。最近は⾁が⼿に⼊りにくくなってますからね。俺は実家のコネで特別に買えるんですけど、普通の⼈はなかなか買えないだろうなあ。あー。美味しそうだなあ。」謎:「なんていやらしいやつなんだ」
主:「どうしようかなー。冷めちゃう前に持って帰って⾃分で⾷べちゃおうかなー。もったいないしなー」

チラッとスーパーヒーローを⾒る

ス:「わかったわかった。特別にお前らに⾒せてやるから早くそれをよこせ」
主:「お安い御⽤です。どうぞ」

⼤喜びするスーパーヒーロー

ス:「お前ら特別の特別だからな!誰にも⾔うなよ!ちょっとそこで待ってろ」

奥へ⾏って四⾓い装置を⼤事そうにもってくるスーパーヒーロー

ス:「ほら、これだよ。⼤事に扱えよ?傷つけんじゃねえぞ」

⼆⼈に装置を渡して⼤喜びですき焼きを⾷べるスーパーヒーロー

主:「へえー。これがあの伝説のスーパーヒーローの使う装置かー。なんかよくわかんないけどすごそうだなあ」

装置を⾒つめて何かひっかかったように⾸を傾げる謎の男

主:「あれ?どうかしたんですか?」
謎:「いや、なんでもないんだけど、なんかあの装置がなんとなく⾒覚えがあるんだよなあ。でもそんなわけないしな」
主:「そうなんですか?でもきっと勘違いですよ。だって伝説の装置ですもん。」
謎:「うーん、たぶんそうなんだろうね」
ス:「おいお前ら、もういいだろ。これ⾒たって誰にも⾔うんじゃないぞ。で、弟⼦⾒習いのお前、お前は⾒どころがあるから正式に弟⼦にしてやる。これからもうまいメシを⾷わせろよ。とりあえずここに住まわせてやるから俺の部屋の⽚付けと掃除をやれ」
主:「わかりましたー。これからよろしくお願いします。師匠!」
謎:「じゃあ僕はそろそろ帰るよ。スーパーヒーローの弟⼦になれて良かったね。また近くに来たら僕の家に寄ってよ。」
主:「村まで案内して頂いてありがとうございます。助かりました。またお伺いしますね」
ス:「ほらほら、部外者は早く帰れ帰れ。おい弟⼦、早く部屋の掃除しろ」
主:「はーい」

別れて家に戻っていく謎の男、でも何か腑に落ちない様⼦。
スーパーヒーローの部屋を掃除する主⼈公、でもスーパーヒーローが⾒ていない所ではなんとかしてサボろうとする
掃除をサボっているところを⾒つかり

ス:「おい!やっぱりサボってんじゃないか!お前が掃除した所はいつもまだ汚れてるんだよなあ」
主:「えー。ちゃんとやってますよ。今はたまたま。たまたま休憩してただけですよ」
ス:「ウソつけ。スーパーヒーローの弟⼦になれてるんだからもっと頑張れよ。」
主:「これでも頑張ってますよ。あ、じゃあとりあえず機嫌直してもらうためにまたうまい⾁、注⽂しましょうか?」
ス:「お前、そればっかりだな。でも今⽇はお前に別の仕事がある。ちょっと隣の村まで⾏って俺の⼈気がどのくらいあるかを調べてきてくれ」
主:「えー。隣村ですか?急いで⾏っても 1 週間はかかりますよ?しかもなんでわざわざ隣村まで⾏って⼈気調査なんかするんですか?」
ス:「最近この村の農作物があまり良くないんだよ。だから隣の村で俺の⼈気を⾼めて、両⽅から貢ぎ物をもらうようにすればいいんだよ。どうだ、名案だろ。」
主:「まあ名案だとは思いますけど、隣村ですよ?遠すぎますよー。」
ス:「うるさい!弟⼦は師匠の⾔うことは絶対!⾏けと⾔われたら⾏ってこい!」
主:(嫌そうに)「はーい」

場⾯変わって主⼈公が⼀⼈で歩いている

主:「って⾔ったけど、隣村まで⾏くのまじで⾯倒くさいなー。よし、⾏くのはやめよう!そこらへんで適当に時間つぶして、「⼤⼈気でしたよ」て報告すりゃ OK だろ」
主:「あ、そういえばあの⼈の家は隣村に向かう途中にあったな。ついでだし、会いに⾏ってみるか」

村のはずれで機械を作っている謎の男

主:「おーい、(謎の男)さん!お久しぶりです」

図⾯をまじまじと⾒つめながら何やら悩んでいる様⼦

主:「おーい!ねえってば!もしもーし」
謎:「おお、君か。ごめんごめん、全然気が付かなかったよ」
主:「どうしたんですか?難しい顔して」
謎:「実はこの図⾯を⾒ていて気になることがあってね、どういうことかと思って悩んでいたんだよ」
主:「これは何の図⾯ですか?」
謎:「⽗さんの図⾯だよ。前に⾔っただろ。僕の⼀族はずっとこの機械を作ってるって」
主:「ああ、そんなこと⾔ってましたね。で、なにをそんなに悩んでるんですか?」謎:「いや、これは僕の勘違いなのかもしれないんだけどさ」
主:「なんです?」
謎:「ほら、図⾯のこの部分、よく⾒てみて。なんか気になることない?
主:「ん?うーん?これですか?あー。確かに。なんかどこかで⾒たことあるような・・・」謎:「だろ?そうなんだよ。この図⾯のこの部分、あの時スーパーヒーローの家で⾒せてもらった伝説の装置に似てるような気がするんだよ」
主:「あっっ!それだ。あの時みた装置に形がすごく似てますね」
謎:「そうなんだよ。でもなんで⽗さんの残した図⾯にあの装置に似たものが載ってるのか、全然意味がわからないんだよね」
主:「うーん、たまたま似たような形をしたものを作っていた、とか?」
主:「ところで、この図⾯を元に作っている機械ってどんなものなんですか?」謎:「わからない」
主:「わからない?」
謎:「そう。わからない」
主:「わからないものをどうして作ってるんですか?」
謎:「どんな機械かはわからないけど、僕の⼀族はこれをずっと作れって⾔われてるんだよ。⽗さんもなぜ作ってるかは教えてくれなかったし、たぶん知らなかったんじゃないかな」
主:「スーパーヒーローの装置に似たものが付いた謎の機械・・・。気になるー!超気になりませんか?なんかどうしてもこの謎を解きたくなってきました!名探偵と⾔われたじっちゃんの名にかけて!この俺が!謎を解き明かす!!」
謎:「君のおじいちゃんは名探偵なの?」

主:「いえ?違いますけど?⼀度でいいからこれ⾔ってみたかっただけです」謎:「まあいいや。とりあえず僕も⾃分が何のために機械を作ってるのか気になってきたし、調べてみるとしよう。ところで君は?こんな所で油売ってて平気なの?」
主:「⼤丈夫⼤丈夫。謎を解くまでご⼀緒しますよ」
謎:「よくわからんけど、ありがとう。⼼強いよ。とりあえず家にある曾祖⽗さんの残した⽂献から探ってみようか。確か、⽗さんがいつか「この機械の⽬的を爺さんに聞いた」って話してた。たぶん曾祖⽗さんは機械の⽬的を知ってたんだと思う。だからきっとどこかに記録を残してるはず」
主:「よーし、この謎は俺たちが解いてみせるぜっっ!!」

場⾯変わって謎の男の家
⾒渡す限りの本、少なく⾒積もっても 10000 冊以上はある

主:「これが曾祖⽗さんの残した⽂献?」
謎:「そうだよ。曾祖⽗さんは本の⾍だったらしいからね。恐らくだけど、とっくに忘れされていた僕の⼀族の機械の⽬的を探るために研究していたんじゃないかと思う。」
主:「で、この⼭のような本の中から⽬的のものを探す、と。」
謎:「そう。でも探すべきは曾祖⽗さんの書いたものだけだから。⼤半は除外できるよ」
主:「うへえ。でも⾃作の本っぽいやつだけでも 500 冊以上ありますよ・・・」
謎:「この中から正解の本にたどり着くのはなかなか⾻が折れるな」
主:「とにかく探すしかないか。⽚っ端から全部⾒ていくしかないですね」
謎:「そうだな。じゃあ僕は右の端から呼んでいくから君は左側から頼むよ」
主:「めんどくさいけど仕⽅ない。がんばりますか」

明転→暗転を繰り返しながら「1 ⽇⽬」「2 ⽇⽬」「3 ⽇⽬」「4 ⽇⽬」「5 ⽇⽬」・・「10 ⽇⽬」と写しながら 2 ⼈は本を読んでいる

10 ⽇⽬の朝

謎:「これだ、やっと⾒つけた」
主:「あー。そっち側に正解があったかー。俺が先に⾒つけたかったー」
謎:「まあそう⾔うな。2 ⼈で頑張ったから⾒つかったんだよ。ほら」
主:「どれどれ??ふーむ、うむうむ、ふーん、へえ、なるほどー。・・・って全然分からーん!なんじゃこの謎の数式の羅列は!」
謎:「ははは、まあちょっとわかりにくいかもね。」
主:「これ、何が書いてあるかわかるんですか?」
謎:「まあね。で、どれどれ。ふむふむ。なるほど。曾祖⽗さんによると、この機械はどうやらある条件下で⾃動的に起動するシステムらしい。その条件は・・・うーん、これはちょっと僕でもわからないな。これは気圧?⾵速?他にもいくつか条件がありそうだな。でもとにかく天候に関するいろいろな条件を監視して、それが異常値になると⾃動的に起動する機械、みたいだ。」
主:「へー、なるほどー。って全然意味がわかりません」
謎:「ははは、要するに天候の状態が異常になったらそれを⾃動的に正常化するバランス装置みたいなものだね」
主:「へえ、バランス装置。なんかすごいですね。そんな機械を代々作っているんですか。・・・・・って、ん?あれ?」
謎:「いやあ、僕も調べてみるまで知らなかったよ。あの機械にそんな意味があったなんて。でも分かって良かった。すっきりしたよ。これで⼼置きなく機械作りに専念できる」
主:「いやー、ちょーっと待ってくださいよー。いま俺、とんでもないことに気がついちゃった気がします」
謎:「とんでもないことって?」
主:「わからないんですか?この機械ですよ。この機械。これがスーパーヒーローだったんですよ!」
謎:「機械がスーパーヒーロー?何を⾔ってるんだきみは?」
主:「いいですか?この機械はバランス装置だって⾔ってましたよね?これが天候のバランスを取ってくれていたんですよ。村に伝わる⾔い伝えについて前に話しましたよね?「この村に厄災が迫る時、英雄が来たりて奇跡の装置を⽤いてこれを退けるなり」って。」
謎:「うん。覚えてるけど、それが何か?
主:「だから!厄災=天候による⼤災害なんですよ!たぶん今からずっとずっと昔、この村に天災が襲ってきた時、あなたの先祖がこの機械を作って天災を退けたんですよ。そして天災が周期的にこの村を襲うことが分かったあなたの先祖は、この機械を作り続けることを⼀族の習わしとして伝えてきたんですよ。」
謎:「え?でも 5 年前の天災を退けたのは君の師匠なんだろ?」
主:「そこですよ問題は!本当に師匠があの天災を退けたんでしょうか?誰かその瞬間を⾒た⼈がいるんでしょうか?村の⼈達に聞いてみましたけど、天災が去った後に師匠があの装置を持っている所しかみんな⾒てないんですよ。」
謎:「で、あの装置はこの図⾯にあるものと同じ、ということは?」
主:「これは予想ですけど、5 年前のあの天災を退けたのはあなたのお⽗さんが作った機械なんじゃないですか?天災が村に迫る中で天候の変化を感知した機械が起動して事なきを得た。そして、何かの拍⼦に機械の⼀部が外れてあの装置のようなものだけが師匠の元に届いた、と」
謎:「君、急にすごいな。名探偵かよ」
主:「⾔ったじゃないですか、この謎は必ず解き明かすって」
謎:「驚いたよ。でも君の⾔っていることが真実だとして、じゃあ君の師匠は完全な偽物ってことになるな」
主:「そうですね。残念ながら。まあ個⼈的には嫌いじゃないですけどね」
謎:「それはなんかわかる気がする」
主:「まあ、偽物だとしても村のみんなには⼈気ありますし、⼈格的には問題ありますけど今のままスーパーヒーローでいさせてあげれば良いかなと思います」
謎:「まあ、そうだな。今更真実をみんなに⾔った所で意味はないしな」
謎:「とりあえず僕は僕の使命を全うするよ。⽬的がはっきりしたことだし、できるだけ早くこの機械を完成させないと」
主:「そういえば、なんで代々同じ機械を作り続ける必要があるんでしょうか?⼀つ作ってそれを使い続ければ良いんじゃないですか?」
謎:「曾祖⽗さんによると、この機械は動作する時のエネルギーが大きすぎて、⼀度しか使えないらしい。」
主:「なるほど。だから代々ずっと作る必要があるんですね」
謎:「まあ、この前みたいな天災は滅多にあるもんじゃないだろうし、たぶん 20 年か 30 年に⼀度くらいのペースで作れば良いんじゃないのかな」
主:「俺も時間あるとき⼿伝いに来ますよ。この機械が動いてるところ、この⽬で⾒てみたいし。なんせ本物のスーパーヒーローですからね」
謎:「ありがとう。助かるよ。さて、謎も解けてすっきりしたところで、久しぶりに外の空気を吸いに⾏くとするか」

10 ⽇ぶりに外に出て驚く 2 ⼈
嵐のような⼤⾬と⾵が吹き荒れてまるで 5 年前のような状態

主:「なんだ・・これ?いつの間にこんな天気に?」
謎:「全然気が付かなかった。これじゃあまるで 5 年前の再現じゃないか」
主:「すぐに機械を完成させることはできないんですか?」
謎:「無理だ、前にも⾔っただろ?完成まではあと 5 年はかかるって。制御に必要な装置部分の製造には時間がかかるんだ。そんな急には完成しない」
主:「制御に必要な装置って?」
謎:「ほら、この図⾯のこのぶぶん・・・・」

主謎:「あっっ!」

主:「これ!もしかして師匠の家にあるやつそのまま使えるんじゃ?」
謎:「どうだろう?使⽤時の衝撃で外れたとするとどこか故障していると考える⽅が普通だけど・・・」
主:「でもないよりはマシでしょ。もし故障してなければすぐに機械は使えるようになりますか?」
謎:「可能性はゼロじゃないけど・・・」
主:「じゃあその可能性にかけましょう。今から師匠の家まで⾏ってあの装置をもらってきましょう」
謎:「そうだな。どのみちそれしか助かる道はなさそうだ」

嵐の中、村に向かって駆けていく 2 ⼈・・
⼤荒れの天候の中、⼤混乱する村⼈

村1:「⼤変だー。嵐が来るぞー。はやく逃げろー」
村2:「逃げるってどこにだよ?逃げる場所はないってことは分かってるだろ」
村1:「そんなこと⾔ったってよー。」
村2:「⼤丈夫だ。この村にはあのスーパーヒーローが居てくれるんだぞ」
村1:「そうか。そうだったな。」
村2:「だからまずはスーパーヒーローにこの状況を伝えてなんとかしてもらうようにお願いしよう。」
村1:「よし、急いでスーパーヒーローの家まで⾏こう」

スーパーヒーローの⾃宅前につく村⼈

村1:「スーパーヒーロー!いらっしゃいますか?村が⼤変なことになってるんです!早くなんとかして下さい」
村2:「急いでください。もう少しで嵐の本体が村まで迫ってきます。このままだと家も⼈も全部吹き⾶ばされてしまいます」
村1村2:「スーパーヒーロー!スーパーヒーロー!」

反応のない様⼦に怪しむ村⼈

村1:「おい、なんで返事がないんだよ。」
村2:「こんだけ騒いで気が付かないわけないだろ。もしかして病気かなにかで倒れてたりするとか?」
村1:「それは⼤変だ!今すぐ確認しないと」
村1:「あれ?扉が開いてる?なんでだ?いつもは厳重に閉まってるのに・・・」
村2:「とにかく中の様⼦を確認しよう」
村1:「スーパーヒーロー!⼊りますよー!どこですか?⼤丈夫ですか?」

しーんとする室内

村1:「おかしいな、どこにもいない」
村2:「どこかに出かけてる?でも⼾締まりもしないでどこかに⾏くか?
村1:「おい!⾒てみろ、あの⾦庫が開いてるぞ!しかも中⾝は空だ」
村2:「そういえば村の⼈間が貢いだ宝⽯類もぜんぶ無くなってるな」
村1:「おい、これ・・・」
村2:「ああ。あいつ、逃げたな」
村1:「おい、スーパーヒーローじゃないのかよ。なんで⼤事な時に逃げてんだよ」
村2:「俺にもわからんよ。そういえばあいつの新しい弟⼦に聞かれたことがあったな。師匠が前の天災を退けた様⼦をその⽬で⾒たのか?って。その時は特に意識しないで「その瞬間は⾒ていないけど天災が去った後に装置を持って⽴っている所を⾒た」って答えたけど、もしかしてあの天災を退けたのはあいつじゃない、てことなのか?」
村1:「え?そんなことあるか?だってあの装置持ってたのは俺も⾒たぞ。あれを使って天災を退けた、ていうのが村の⾔い伝えの通りだったろ?」
村2:「それはそうだけど、誰もその瞬間は⾒ていないからな。こうやって⼤事な時に逃げたことを考えると、スーパーヒーローじゃなかった可能性が⾼いんじゃないか?」
村1:「おい、じゃあ誰がこの村を救ってくれるんだよ」
村2;「残念ながらそんなやつはいないってことになるな」
村1:「どうすればいいんだよ?全部ふっとばされるぞ?」
村2:「あ、あそこはどうだ?前の天災の時にお前が頑張って準備した⽳。とりあえずあそこに逃げ込めばなんとかなるんじゃないか?」
村1:「なんだよー。あれ掘ってた時お前バカにしてたじゃないか。」
村2:「悪い悪い。でも今はそれくらいしか頼れないんだよ。急いであそこまで向かうぞ」
村1:「よし、じゃあ村の他のやつらにも声かけておく」
村2:「たのむ。俺は先に⾏って準備しておくよ」

大きな荷物を持って村の中を隠れるように歩くスーパーヒーロー
誰にも見つからないようにコソコソとしている

ス:「あぶねえ所だったなー、なんか俺のこと呼ぶ声が聞こえたから金目のものまとめて逃げてきたけどギリギリだったわ」
ス:「村のやつら、どうせ俺様にこの嵐をどうにかしてくれって言うだろうからな。まったく。俺はただの人間だぞ?こんな嵐をどうにかできるわけねえだろっつーの」
ス:「まあ散々設けさせてもらった村のやつらには悪いが、ここらへんでさよならだ。よいしょっと」

重そうな荷物を担いで村を出ていこうとするスーパーヒーロー
近くで村1、村2のスーパーヒーローを探す声が聞こえる・・・

ス:「おっと、こっちに行ったら見つかっちまうな、村の出口は使えないだろうしこの荷物も重たいから走れないしなあ。ちょっと欲張りすぎたか?」
ス:「いやいやいや、これは俺様の大事な財産だからな、誰にも渡すわけには・・・」
ス:「おっ、こんなところに良い穴があるじゃねえか。ちょうどいい。ちょっと雨宿りがてら隠れさせてもらって、雨が弱くなったらさっさと逃げるとしますか・・・」

見つけた穴の中に入っていくスーパーヒーロー

嵐の中、なんとかして村にたどり着いた主⼈公と謎の男

謎:「とりあえず君の師匠の家まで急ごう」
主:「いや、たぶん装置はそこにはないと思いますよ」
謎:「え?なんで?」
主:「だってあの師匠ですよ?誰よりも性根が腐ってるクソ野郎のあの⼈が、こんな時に⾃分の家に残ってるわけないじゃないですか。今頃⾦⽬の物を持ってどこかに避難してますよ」
謎:「さすが、類は友を呼ぶ・・・」
主:「え?何か⾔いました?」
謎:「いや、なんでもない」
主:「とにかく、師匠は別の場所にいますよ。で、師匠がいまどこにいるかというと・・・」
謎:「何してるんだ?」
主:「ああ、GPS ですよ。師匠の服に仕込んでおきました。いついかなる時でも師匠の位置を把握して的確に最⼤限仕事をサボるのが俺のスタイルですから!」
謎:「君のその天才なのかクズなのか判別しづらい所は魅⼒的だね」
主:「とはいえ遠距離では場所つかめないんですけどね。同じ村にいてくれさえすれば場所は掴めます。で、今の師匠の場所は・・・・えーと、村の外れの⺠家のそばですね。これは村⼈1さんの家の近くかな?」
謎:「よし、場所がつかめればこっちのもんだ。さっそくそこまで急ごう」
主:「了解です。急ぎましょう」

村⼈1の家まで⾛っていく2⼈

村⼈2:「おーい、そこの2⼈、こんな所でなにしてる?今から村⼈1の作った⽳を避難所にして向かう所だが、君等もそこに⾏きなさい」
主:「あ、あの時の村⼈さん。」
村⼈2:「ああ、あいつの弟⼦の君か。君は師匠と⼀緒じゃなかったのか?」
主:「ええ。まあ⾊々ありまして。師匠の場所は分かってるのでそこに向かう途中なんですけど」
村⼈ 2:「なに?あいつの居場所が分かるのか?どれどれ?おい。この場所は村⼈1の作った⽳がある所じゃないか。なんでこんな所にいるんだ」
主:「さあ?理由はわかりませんが、もしかして避難してるんですかね?」
村⼈2:「あいつはスーパーヒーローの義務も果たさず逃げたんだぞ。どうせそこで隠れて村から逃げるタイミングを見計らってるんだよ」
主:「まあその可能性は否定しませんが、とりあえず俺たちも師匠に⽤があるんで、そこまで急ぎましょう」
村⼈2:「そうだな。⾔いたいことは⼭程あるがとりあえずそこまで向かおう」

⽳の中で隠れているスーパーヒーロー
⽳が空く⾳を聞いてひどく驚く

主:「やっぱりここにいたんですか師匠」
ス:「お、お前か。今までどこに⾏っていたんだ」
主:「やだなあ、師匠が隣村までお使いに出したんじゃないですか。いま帰ってきたところですよ」
ス:「そ、そうか。で、隣村での俺の⼈気はどうだった?」
主:「そんなことより師匠、こんな嵐が迫ってきてる時にこんな所でなにしてるんですか?」ス:「い・・・いや、ほら、なんというか、村⼈のために安全な場所を探しておこうと思ってな」
主:「え?でもこんな嵐なら楽勝ですよね?だから村⼈の避難場所なんか気にしなくて良いじゃないですか?」
ス:「ま・・まあな。そうだな。お前の⾔う通りだ。ははは、なんでこんなこと気にしてたんだろうな」
村⼈2:「そろそろ本当のことを⾔ったらどうだ?あんたはスーパーヒーローなんかじゃないんだろ?」
ス:「な・・・・なにを⾔ってるんだ。俺はスーパーヒーローだ。5年前の天災を退けたのは俺だぞ。お前がその⽬で⾒てるじゃないか」
村⼈2:「あんたの弟⼦に⾔われて気がついたんだよ。俺はその瞬間は⽬撃していない。俺が⾒たのは嵐が去った後にあんたが装置を持って⽴っていた所だけだ」
ス:「それが俺がスーパーヒーローの証拠じゃないか!俺が!この!装置を使って!嵐を退けたんだぞ!」
村⼈2:「じゃあ今そこまで迫っている嵐もその装置を使ってなんとかしてくれよ。スーパーヒーローなんだろ?」
ス:「そのとおりだ。俺はスーパーヒーローだからな。こんな嵐なんかあっというまにこの装置で退けてやろう。いいか!俺はスーパーヒーローだからな!」

⽳から出ていく素振りを⾒せるスーパーヒーローでもなかなか出ていくことはできない
うなだれ、膝から崩れ落ちるスーパーヒーロー

ス:「無理だ!俺にはそんなことはできない!俺はスーパーヒーローなんかじゃないんだよ」
泣き崩れるスーパーヒーロー
村⼈2:「やっぱり偽物か。よくも5年間も俺たちを騙してくれたな」
ス:「俺だって!好き好んでスーパーヒーローなんかになったわけじゃない!俺は何もできない男だった。仕事も家庭もうまく⾏かず、すべてを諦めて死に場所を探していたんだ。俺はあの時、空から落ちてきた装置を拾っただけだ。そしたらお前らは俺のことを勝⼿にスーパーヒーロー呼ばわりして。分かってるのか?俺をスーパーヒーローだって勝⼿に呼び始めたのはお前らだ!⾃分で望んだわけじゃないのにスーパーヒーローの役⽬を押し付けられた⼈間の気持ちがお前らに分かるか!毎⽇毎⽇スーパーヒーローのフリをして、いつの間にか⾃分で⾃分のことが分からなくなってきた。もう俺は⾃分がどんな⼈間だったのかも思い出せない。俺はお前らの作った幻想のスーパーヒーローを演じる人形でしかないんだよ」
村⼈2:「そんなこと⾔って、毎⽇偉そうにしてたのもあんただろう。スーパーヒーローを演じるのが嫌だったらさっさと村から出ていけば良かったんだ。スーパーヒーローとしてみんなからチヤホヤされるのが嬉しかったんだろ?」
ス:「ううう」
主:「師匠・・・。でも師匠の気持ちも分かりますよ。村⼈のみんなからスーパーヒーローを期待されてそれを演じるうちに引くに引けなくなったんですよね」
主:「でも、やっぱりみんなを騙してたのは悪いです。とはいえそうやって反省している気持ちを汲んで、師匠にまたスーパーヒーローになれるチャンスをあげましょう」
ス:「お前は何を⾔ってるんだ?」
主:「ね?」
謎:「そうだね。なあスーパーヒーローさん。その装置を僕らに渡してくれないか?」
ス:「あ?べつに構わないが、これは何も動かないぞ」
謎:「分かってますよ。これは機械の⼀部分ですから。でもとても重要な物なので渡してもらえるともしかするとこの嵐をなんとかできるかもしれません」
ス:「お前は・・・何者だ?」
謎:「ただの機械好きの男ですよ、今はあなたの弟⼦の名探偵の助⼿をしているだけです」ス:「よく意味はわからんが、俺が持ってても役に⽴たないからな。⾦になるかと思って持ってきたが、もし役に⽴てるなら使ってくれ」
謎:「ありがとうございます」
主:「師匠、意外と素直っすね」
ス:「うるさい、弟⼦は師匠の⾔うことを聞いてればいいんだよ」
主:「はい」
謎:「じゃあ、その装置を持って移動しましょう。少し距離がありますが、⾛っていけばそんなに時間はかからないはずです」
村⼈2:「話はよくわからんが、その装置があればこの嵐がなんとかできるのか?」
謎:「分かりません。でも可能性はゼロではないと思います」
村⼈2:「よし、わかった。この⽳は村⼈ができるだけたくさん⼊れるように空にしておくのが良いだろう。この4⼈でその場所まで向かうとしよう」
主:「急ぎましょう。もうすぐそこまで嵐が迫っている」

機械の場所まで来た4⼈
嵐はそばまで迫っていて⾵⾬は激しさを増すばかり

謎:「よし、ここにこの装置を繋いで・・・こうすれなとりあえず動かせるはずだ」主:「頼むぜー。これで動いてくれよー、もう時間がないんだ」
ス:「なんだかわけがわからんが、この機械がなんとかしてくれるんだな?」
謎:「この装置が問題なく動いてくれれば、ですけどね。さて、これで接続は OK のはず。じゃあ機械を起動してみます」

⼤きな起動⾳が鳴り響く
でも途中で機械が動作を停⽌してしまう

謎:「なんでだ?ちゃんと図⾯通りに繋いだのに。やっぱりこの装置が故障してるのか?」主:「どうしたんですか?せっかくここまで持ってきて繋いだのに!やっぱりダメなんですか?」
謎:「いや、ちょっと待ってくれ、配線は問題ない。装置も⼀応動いてはいる・・。なんで正常に起動してくれないんだ?・・・そうか!センサーの⼀部がまだ正常に動作していないから機械が起動してくれないんだ。」
村⼈2:「どういうことだ?この機械は全く使い物にならないってことか?」
謎:「いえ、機械⾃体は動作するはずです。この装置も故障していませんでしたし、それ以外の部分については僕が作って来てましたから。問題はセンサーです。気象条件に反応して動作する仕組みがうまく機能していないんです。だから、この異常な気象条件にも関わらず、機械が反応してくれない。この機械は本来、⼈の意思とは関係なく⾃動で動作するものなんですよ。だからセンサーが正しく機能しない限り、全く意味のないものになってしまうんです。」
村⼈2:「つまり、このままでは嵐が来てもどうしようもない、と」
謎:「残念ながら、そういうことになります」
主:「ちょっとまって。いま機械⾃体は動作するって⾔いましたよね?つまり機械は動くけどセンサーが反応しないだけ。てことは、無理やり機械を動かしさえすればなんとかなるってことじゃ?」
謎:「それはそうだけど、この機械は元々⾃動で動くことを想定してるから手動で動かすことは考えられていないんだ。多分機械の中に⼊って無理やり ON すれば動かすことはできると思うけど、そうなると中で操作する⼈は外に出ることはできなくなる。そのまま機械が起動してドカーン、だ。この機械が⼀度しか使えないってことは君は知ってるよね」
主:「じゃあもう、どうしようもないってことじゃないですか」

無⾔の4⼈
沈黙のあと、⼝を開く男がいる

ス:「お前さっき、中に⼊って動かせばなんとかなるって⾔ったよな?」
謎:「⾔いましたけど、中に⼊ったら最後、もう出てこられませんよ」
ス:「上等じゃねえか。俺が中に⼊ってやってやるよ」
主:「師匠!本気ですか?中に⼊ったら⽣きて帰ってくる保証はないんですよ?」
ス:「本気だよ。どうせもうスーパーヒーローじゃねえってバレちまったんだ。この先⽣き延びても⾯⽩いことなんかないしな。嘘でもスーパーヒーローとして過ごした俺が最後にかっこいいことができるなら最⾼だろ」
謎:「もう⼀度⾔います。中に⼊って操作したら最後、もう出てくることはできません、本当にやるんですか?」
ス:「なんども⾔わせるな。決意が鈍るだろうが。俺は偽物だけど⼀応スーパーヒーローなんだよ。最後くらい格好つけさせろ」
ス:「おい弟⼦!お前も俺と同じくらいクズだけどな、お前が⾷わせてくれたすき焼きは最⾼だったぞ。もし⽣まれ変わったらまた⾷わせてくれよな」
主:「師匠・・」
ス:「じゃあもう時間もねえことだし、そろそろやるわ。中に⼊ってスイッチを⼊れたらいいんだな?」
謎:「そうです。そしたら後は機械が起動して嵐を退けてくれるはずです」
ス:「良いじゃねえか。じゃあなお前ら。嘘つきのスーパーヒーローのこと覚えていてくれよな」

機械の中に⼊っていくスーパーヒーロー
叫び声と共に機械を起動、機械が動き出して轟⾳と光と共に嵐を退ける・・・

暗転→明転
崩れた機械と残された3⼈

主:「うまく・・・いったのか?」
謎:「どうやら成功したみたいだね」
村⼈2:「何がなんだかまだ良くわからんが・・・村は救われたんだな」
謎:「そうですね。今回はあのひとが本物のスーパーヒーローでしたね」
村⼈2:「あの嘘つき野郎が最後に⼀仕事したってことか・・・」
主:「師匠・・」

村の方から村1が駆け寄ってくる

村1:「おーい、なんかすげえ光ったと思ったら急に嵐が無くなったぞ?なにがあったんだー?」
村2:「村1、村のみんなは無事か?」
村1:「おう、全員避難してたし無事だ。それに嵐はもうどっか行っちゃったみたいだしな」
村2:「ああ、そうだな・・・」
村1:「で、ここで何してんだ?やっぱりあの嵐はスーパーヒーローがなんとかしてくれたのか?」

崩れた機械の中からスーパーヒーローが弱りながら出てくる

主;「師匠!!無事だったんですか!!」
ス:「あー?あれ?俺⽣きてんのか?なんでだ?スイッチを押して光りだした瞬間にもうダメだと思って諦めたんだけどな」
主:「師匠、その鍋は?」
ス:「ああ、これはお前がごちそうしてくれたすき焼きの鍋だよ。⼈⽣最⾼にうまかったメシだからな。死ぬときも⼀緒に持っていこうと思って機械の中まで持っていったんだよ」
謎:「あー。これはたぶんアレですね。この鉄製のすき焼きの鍋のおかげで守られて無事だったと。まあ間違いなく幸運だったのが理由ですけど」
村⼈2:「今までのことは嘘だったとしても、今回村を救ってくれたのはあんたなのは間違いない。さすがスーパーヒーローだ。嘘をついていたことはみんなには黙っといてやるよ。村⼈にとってはあんたはスーパーヒーローだからな」
ス:「それでいいのか?」
村⼈2:「いいよ。でもこれからはあんまり偉そうにするなよ。働いて協⼒してくれれば、これまでのことは許してやる」
ス:「すまなかった。これからはできるだけ協⼒するよ」
主:「俺も弟⼦としてがんばりますよ」
謎:「僕はまたこんなことが起きても⼤丈夫なように、できるだけ早く機械を準備しておくことにするよ」
主:「俺も⼿伝います」
謎:「頼むよ。次は今回みたいに誰かが中に入って操作するなんてことがないようにしないといけない。それに、一度の災害で壊れる装置なんかナンセンスだしね。僕がもっとマシなものを作ってみせるよ」

村1:「なんかよくわかんないけど、やっぱりスーパーヒーローはすげえってことですね」
村2:「ああ、そういうことだな」
村1:「村のみんなにもう大丈夫だって知らせないと!村2、急いで行こうぜ」
村2:「さあ、あんたらも村まで行こう、今日は朝まで宴会だ!」
ス:「おっ、ちゃんとすき焼きは出してくれよな!」
主:「そーゆーところがダメだって言ってるんですよ師匠!」

一同談笑しながら走っていく→暗転

ストーリーテラー

みなさん、この村に伝わっていた言い伝えは覚えていますか?
あの言い伝え、実は僕が知っているものと少し違うんです。どうして昔の言い伝えと今の言い伝えが変わっているのか、僕は知っています。みなさんももう知ってるんじゃないかな?

「この村に厄災が迫る時、英雄が来たりて奇跡の装置を⽤いてこれを退けるなり。英雄はその頭をすき焼きの鍋にて守るものなり。」

え?僕ですか?
僕はただの職人ですよ。先祖代々、とっても大切なものを作り続けてます。
実はもうすぐひいじいさんの夢が叶いそうなんですよ。もうずっと壊れずに村を守り続ける機械。これが完成したら、久しぶりにひいじいさんの墓参りでもして報告してこようと思ってます。きっと今も主さんやスーパーヒーローさんと文句言いながら楽しくやってるんでしょうね。
あっ、もうこんな時間だ。早く行かないと村の宴会に間に合わないや。じゃあみなさん、またどこかで。・・あー、早くすき焼き食べたいなー・・・・・。

(下手にはける)

暗転

キャスト全員登場、あいさつ


終劇

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