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眠れないので


眠れない。眠れない。眠れない。クッションを抱えながらぼんやりと夜の暗闇を見つめていたら、スリープにしたままだったパソコンがウィンと音を立て、急に画面があかるくなった。とくになんのアップデートをする様子もない。ただ電源がついた。こういうことは、たまにある。

ちょうど、しょうもないからと思って、公開しては非公開にする作業を3回繰り返した記事のことを考えていた。しょうもないという気持ちは変わらないけど、パソコンが促すように動き出したので、再公開することにした。また消すかもしれない。キナリ杯から一週間、岸田さんの言葉を反芻しながら悩みつつさぐりさぐり書いたけど、しょうもない話だから。しょうもないんだ、ほんとうに。私は昔からどうしようもない。仕事がつらい、行きたくない。デキルの一言で蔑ろにされる毎日が、心の中では悲しいから。

上の弟が結婚する。とっくに家を出ているのに、未だにうちには彼の郵便物が届く。指輪のDMを拾ってから何ヶ月経ったっけ。日曜日、実家で食べる夕飯のときにようやく本人が切り出した。知ってた。おめでとう。引くほど素っ気ない声しか出なかった。自他ともに認めるブラコンなのでどうしてもさみしいが先に立った。おめでとうという気持ちに嘘はないけど。何でこんなにさみしくなるのかな、妹がほしいってずっと言っていたんだけど。変なの。そうして、両親は、私にこそ結婚してほしいと思っているんだろうなと考えた。先週帰ったときに、母親がウェディングドレスのことを持ち出したのを忘れていない。先のことはわからないよ、でも、私はたぶん結婚せずに生きていくと思う。10代があまりにつらかった。結婚や家庭、子どもを持つことを、私は幸せの形だと認識できていない。どうしても、親を選べない子どもの不幸がさきに目につく。だから小説でも書いてこなかったんだと、最近、気づいた。

居場所がない。居場所がない。居場所がない。15の夜に喘いだあの息苦しさが迫り上がってきて眠れない。眠れないな、困っている、いま。きちんと寝ないと、メニエールの症状が出てもっとつらい目に遭うのに、眠れない。

昼間に流し見ていたYouTubeの番組で、つらいことは思い出すたびにどんどん記憶が固定化されてしまう、みたいなことを言っていた。私の言葉はいつも過去ばかりだな、それがよくないんだろうなというのは、薄々勘づいていたことだったから、そうかやっぱりそうかと思った。都合よく忘れていきたい。叶うなら。改変上等になりたい。だけど、うまくできない。いつも。


眠らないと。パソコンはちゃんとシャットダウンしよう。飲みたくないが仕方がない、ジアゼパムを飲もう。眠れますように。起きたときの私が、いつもどおり、不遜な私でありますように。居場所をさがさなくたってへいきでいられる、孤独に慣れた私で、必要なところに立っていられますように。


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