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刻印

書いては消してを繰り返す。

小さい頃は紙に書くことしか知らなかった。
消しゴムで消しても真っ白にはならなかった。
少しずつ跡の残りづらくなる方法を学んで、
跡の残りづらい道具を選ぶようになった。

それでも無かったことにはならなかった。
それが私の存在した証であり、歴史だと思っていた。

今ではSNSに投稿をしたり、こうして記事を載せることで私は0と1の世界に存在を証明している。

この薄い端末で文字を打っている間は、簡単に無かったことにできる。
Back spaceキーを押すだけで、そこには真っ白な画面が現れる。

ふと全てを真っ白に消してしまいたくなる。
存在していた証拠も、私に関する記憶すら全てきれいさっぱり無くなれば未練なんて無くなるのに。

私が居なくなることで悲しんでくれる人がいるだろう、飼い猫はどうなるだろうか。

そんなことを考える私は死ぬのには向いてない。
生きていくしかないなら、足掻こう。

1人でも多くの人に私の存在を刻みつけて、私の居なくなった世界で1秒でも長く私の居た記憶を思い出して貰えるように。