春の訪れ
爽やかな少し冷たい風が春の陽気の中をさっと通っていく。
空がすっきり晴れて、飛行機が映える。
ぽつりぽつりと咲き始める花。
そして思い出すよもぎの香り。
春休み
祖父母の家でよくよもぎ餅を作って食べた。
よもぎの葉を土手で拾って、つくしと猫じゃらしも拾って、くっつき虫をたくさんくっつけて帰宅。
「随分といろいろ持ってきたねえ」
母がとげとげをとってくれる。
家中に種がバラバラこぼれる。
それをほったらかして餅つき機の中を覗く。
ゴトゴトだんだんまとまっていく餅とよもぎのいい香り。
それと蒸かしたあずきの優しい香り。
餅を丸めるのはいっつも手伝った。
水で手をしっかり濡らしても、餅がべちゃべちゃくっついて本当に難しい。
うまーく形にできる祖母と母は、特殊な手なんじゃないか、なんて思ったりした。
手にくっついた餅を食べながら、春の香りを感じる。
鼻に抜けるよもぎの少し独特な匂い。
きれいに丸められた餅にあんこをかけてもらってちびっちゃく食いちぎりながらもごもご食べる。
母がきな粉を取り出して振りかけてくれる。
ちょっとむせながらふがふが食べる。
開いた窓からちょっと見える桜。
小さな飛行機の音。
ほんのり流れる春の風。
春の始めの、この空気が好き。
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