森の中のキャッスル

あの西洋風の建物は、まだ存在するのだろうか。
相当、遠い日の記憶である。
小学生の時、遠足という行事があったのだが、なぜどういう理由で郊外へ出るのか、よくわからない。子どものリクエストで行き先が決まることは1000%ありえない。なにかしらの入札で決まるのだと思う。それは必ずと言っていいほど、高速バスに乗る。パーキングエリアに入った記憶がない。ずっと高速道路をバスは走っていたような気がする。その当時、高速バスにはトイレは付いていない。相当な無理なスケジュールだったんじゃないかと思う。
高速道路だ。私のいるエリアから高速道路に乗ると、暫くすると森しかないような景色ばかり続いた。たまにトンネルに入ったり、また抜けるとそこは雪国であった。。。という場合もあるかもしれないが、たかだか小学生の遠足なので、雪国へ行くこともなく、そこそこ近場で、たかがしれていて、まぁ、ずっと、森とトンネルの風景しか出てこない。海とか絶対ない。ずっと、ずっと、森とトンネルしかない。結構小学生でも飽きてくる風景しか出てこない。のだが。。。
違うものが出てきた。
キャッスルだ。
西洋風の城だ。たしか、尖った赤い屋根のキャッスルだったと記憶している。すると、クラスで一番頭が良い女の子が言った。
「私、大きくなったら、絶対、あそこへ行く!」
すると、クラスで一番頭が良い女の子が言ったから、それに触発されて次々と別の女の子が「私も行く!」「私も!」とほとんどクラス全員と言ってもいい女の子たちが『将来、あの赤い屋根のお城へ行くんだ!』という空気感でバスの中が熱気を帯びた。

今思うと、それは完全にラブホテルだと思われる。。。ラブホテルである可能性が高い。ある種の『昭和の大人の悪ふざけ』というか、完全にノリで作ったやつじゃないかと思われる。。。あれだ。中に入ると悪趣味のやつなんじゃないか?天井鏡とか、意味わからないステンドグラスとか、いちばんわからないのは、円形ベッドが回る。。。全部、やりたいことがわからないやつだ。。。無駄遣いめ。

さて、『いちばん頭が良い女の子』だ。彼女は将来の夢は『小説家』と言っていた。もうひとり将来の夢は小説家と言っていた女の子がいたが、彼女も頭が良い子だった。なんというか、日本で勉強ができる子とクリエイティビティは結びつきにくいかもしれない。なぜかというと、クリエイティビティはあんまり人から褒められる人には向かない。基本、ひとり遊びだからだ。褒められることを生き甲斐にすると、最終地点は異性というわりと『金』に結びつきやすい感じになりがちのような。。。そういうのが、事件っぽい感じになりがちのような。。。めんどくさいやつだ。実際、クリエイティビティがすぐにお金に結びつく場合は少ない。稀にすぐに結果を出す人はいる。そういう場合は長く続けられる場合が少数か、『へんないきもの』に寄生される場合がある。難しく世界だ。

人から、クラスでいちばん頭が良い女の子は官僚になったらしいと聞いている。ほんとうかはわからないが、勉強ができる人はそっちの道が自然だろうと思う。上にあがってナンボ。人を蹴落としてナンボ。実際、私の時代の教育というのは、そういう世界だった。

人を見下して、ナンボ。

で、彼女は、あの森の中のキャッスルに

ほんとうに行ったのだろうか。。。


教訓:頭が良いやつが言ったことがほんとうとは、わからないし、日本では多数決が正義と習ってきたが、多数だからと言って、それが正解ともかぎらない。

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