親愛なる 安房直子さま

安房直子さんのことを後々すきになるとは、その時は思っていなかったのです。

安房直子さんの作品をはじめて読んだのは、小学3年生か4年生の時にテストで出ない読みものとして『鳥』が教科書に載っていて。授業でもテストとはまったく関係ないものだったので、

私のようにこの作品に入れ込むような気持ちになった人は極めて少数派だと思います。

テストに出ないので。

塾なんかでは飛ばされる作品で。おそらくはその次の作品の方が多くの人の記憶に残っていると思います。小学5年生だったかな?『きつねの窓』です。完全にテストに出るやつでした。親指と人差し指を4本藍色に染めるやつ。たいていの子どもはきつねの窓をつくっていました。

ずいぶん大人になってから、突然
「安房直子さんの他の作品も読みたいな」と思い、どんな作品があるのだろうと、検索していたら、作品集が出ていて。大人買いがキツいし、ゆっくり一冊ずつ揃えて読んでいったのですが

けっこうホラーな展開が多いことにギャー!でした。

全集が欲しい人は多いと思います。

その作品集の最終巻は、安房直子という人がどんな人だったか。ということが書いてあったのですが、いろいろ小説というか、少女漫画というか、安房さんの人生があまりにドラマティック過ぎて、私は驚愕しました。

安房直子さんは、今の私の年齢で他界されています。

他にも、あくまでも同人サークルにこだわり、商業としての文学とか商業活動に

まったく興味がなく、揺れなかったところが、また安房さんらしいな。と思いました。

経済的に安定した一生の中でも、安房さんの普通の家庭とは違う生活というのは、悩んで悲しんで、文章をしたためていったのだと私は想像します。

息子と夫とサークル活動。それが安房さんのすべてだったのではないか?と想像します。

東京と軽井沢。私からすると、憧れの生活で。お金にも家族にも恵まれた生活と思われる中で一生の孤独を抱えて安房さんは強い女性だったと私は思っています。

それにしても、早すぎた。

私はかわいらしいおばあさまになった安房直子さんに会える可能性があったことを思うと、時間が待ってくれなかったことを悔やみきれません。

孤独な天才、安房直子さんを思う。

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