感想戯曲・戯曲『ONE NATION UNDER THE DEMPA』

 EP発売を記念して? また、演劇作品が上演されるということで。
 自分にとって萌えって? エモって? 考えた結果を戯曲にしました。
 ツアーのストーリーとか『古代アキバ伝説』を聞いて、こんな内容かも、とおもってざっくり書いて、マチネとソワレの間でしっかり書きました。戯曲を。
 戯曲が書けるので。
 14000字くらいあります。
 よろしくお願いいたします。

【登場人物】

三鷹蜜柑 オレンジの花を持つ少女
美空快晴 スカイブルーの花を持つ少女
桃瀬亞里亞 パウダーピンクの花を持つ少女
紺野瑠璃 ネイビーブルーの花を持つ少女
王子 たまご色の花を持つ少女

青騎士

古川
相沢リサ

   そこはまだどこでもない。
   が、なんとなくギリシャ悲劇でも始まりそうなムード。
   フードをかぶった合唱隊(コロス)が並んでいる。

合唱隊 むかしむかし——この星には萌えとエモがなかった。

   ここから先は合唱隊のひとりひとりが分担しながら読む。

合唱隊 この星にでんぱ組.incというアイドルグループが降り立って、ライブをおこなった。
    そのステージは、萌えとエモで満ちていた。
    人々はその姿から萌えとエモを知った。
    知ったのか?
    それとも取り戻したのか?
    曖昧なまま、観客たちは熱狂した。

   でんぱ組.incのメンバーである古川が合唱隊の奥から現れる。

古川  私は地球に戻ります。でも、もしよかったら誰かがやってください、こういうの。

   古川、合唱隊の方を向いて「え、いいんですよね」「あってますよね?」と小声で問いかける。
   合唱隊は慌てたようなそぶりで「いや、急に聞かれても」みたいな。

古川  誰かに任せる。
合唱隊 (え?)
古川  誰かに押し付ける。
合唱隊 (ええ?)
古川  誰かにやらせる、頼む、やってもらう……誰かを信じて、誰かに託す。

   古川が花束からオレンジ色の花をひとつ引き抜いて、蜜柑に付けてやる。
   古川、意味ありげに頷き、合唱隊の中へ消える。
   それを見送る蜜柑。

合唱隊 彼女は世界の人々に花を送った。
様々な色の花を。
それを受け取った中の一人、三鷹蜜柑は、彼女のようなアイドルになることを決意した。
でもいいの? 本当にそれで。
蜜柑  いいんです!

   チャイムが鳴って、合唱隊たちは一列に整列する。
   合唱隊の中から一人飛び出し、ローブを脱ぐと、教師になっている。
   教師の名前は、王子。

王子  世界を構成する二つの要素。

   合唱隊の反応は薄い。

王子  世界を構成する二つの要素。言ってごらんなさい、美空快晴!

   合唱隊の中から一人現れてフードを取り払う。
   彼女が美空快晴。

美空  世界を、構成……え、なんじゃろ。
王子  二つの要素。
美空  酸素……窒素……炭素、えいs

   合唱隊の中から一人、ローブを脱いで女生徒が現れる。
   名前は桃瀬亞里亞。

桃瀬  (すかさず)萌えとエモです。
美空  ああ……(桃瀬にありがと、って感じの笑顔)。
桃瀬  (ちょっと美空を見た後呆れた様子であからさまに無視する)
美空  (怒りで立ち上がりかけ、腰が浮く)
桃瀬  ぷいっ(と発声してそっぽを向く)
王子  さすが桃瀬さん。優秀です。
桃瀬  基本ですから。
王子  この世界の基本中の基本を覚えていないなんて、実に嘆かわしいことです。

   合唱隊がフォーメーションを組み始め、蜜柑と美空もそれに巻き込まれる。

王子  では……基本のキ、からいきましょう。

   『古代アキバ伝説』のパフォーマンスが突然始まる。
   振り回されるように歌い踊る美空。
      最後、美空が転んだところを蜜柑が起こしてやる。
   それを冷たい目で見ている桃瀬。



王子  美空さん、今日は居残りです。

   チャイムが鳴り、解散。
   誰もいなくなった舞台上に、Redboneの『Come and Get Your Love』が流れる。


   マスクをつけた女性、紺野瑠璃が現れる。
   彼女がしているイヤホンで流れているのが『Come and Get Your Love』らしい。
   鼻歌交じりに踊りながら舞台上を通り過ぎようとするが、何かを見つけて立ち止まる。
   その先から蜜柑が現れる。

紺野  ねえ、三鷹蜜柑って人、知ってる?
蜜柑  ……私ですけど。
紺野  だよね、知ってる。
紺野  俺はね、君を探していたんだ。それが僕の仕事。私は君の力を借りたいと思ってる。でんぱ組.incに入ってくれないか。
蜜柑  ……。
紺野  ああ、ごめん、まだこの星の言語を勉強中でね。一人称を決めかねてるんだ。
蜜柑  いや一人称は別にいいんですけど……。
紺野  実は、でんぱ組初代リーダーの相沢リサさんがこの星に来てね。彼女を軸にこの星で二号店を開く……はずだったんだけど音信不通になってしまってね。
蜜柑  え、大丈夫なんですか。
紺野  大丈夫なわけないだろ。彼女は、拠点の旗のもとにこんな手紙を残していてね。(と蜜柑に手紙を差し出す)
蜜柑  ……(受け取って読む)これ、本当なんですか。
紺野  そんなに驚くかい。
蜜柑  (読んで)「生まれてしまったこと、生きてしまったこと、生き残ってしまったこと、生き延びてしまったこと。すべてを申し訳なく思います」……びっくりしますよ、急にこんなの渡されたら。
紺野  じゃあ今度からあらかじめ言うよ。
蜜柑  それで……私は何をしたらいいんですか。
紺野  すごくシンプル。彼女の代わりにこの星に結成させるんだ。この星のでんぱ組.incを。
蜜柑  でんぱ組.inc……。
紺野  知ってるよね。
蜜柑  歴史の教科書で……。
紺野  うん、いいね。賢い。
蜜柑  本当にいるんですか。
紺野  いる……っていうか、君がなるんだよ。
蜜柑  え、私、え、メンバーですか?
紺野  君は古川さんから花を受け取ったんだろう? ならばできるはずだ。
蜜柑  ……。
紺野  決まりだね。リーダーの意志を引き継いで、我々でこの世界にもう一度、萌えとエモを取り戻そうじゃないか。
蜜柑  取り戻そうって、失われてるんですか? この世界を構成する要素はそもそも萌えとエモであり、私たちは空気中のそれらを体内に取り込むことで
紺野  そんな教科書丸暗記みたいなの、意味無いよ。
蜜柑  (とても切ない感じの表情)
紺野  (慌てて)でも、覚えたのは素晴らしいことだ。
蜜柑  (素晴らしい笑顔)
紺野  君の周辺にいないかな。年齢は問わない。才能あふれる人は。
蜜柑  ……私、いい感じの人、知ってます。

   そこに居残りから戻ってきた美空が現れる。

美空  お待たせしました~……(紺野を見て)あ? 誰、その人。
蜜柑  います、あそこに一人。
紺野  よし。
美空  え、何。
蜜柑  快晴、よく聞いて。私たち、どうやら選ばれたみたいなの。でんぱ組.incのメンバーに。
美空  は……。
蜜柑  快晴、やろうよ。
美空  ……。
蜜柑  こんなチャンス滅多にないよ!
美空  ……(紺野と蜜柑を交互に見て)やろうか。
蜜柑  試しに一つ、見てもらってもいいですか?
紺野  何を?
蜜柑  実力を。

   美空と蜜柑、『Mirror Magic?』のパフォーマンス。
   紺野が途中で止める。

紺野  すごいな。この星の人は。俺だったら困っちゃうところだよ。
蜜柑  これはテストで出たところで……うちら、ペアだったんです。
紺野  テスト。
蜜柑  はい。この星に萌えとエモをもたらしたでんぱ組.incについては一応義務教育で一通り。
紺野  実技のテストまであるのか。
美空  うちらの学校だけだよね。
紺野  なるほど……二人はひょっとしたら某より詳しいかもしれないな。
美空  ね、蜜柑、この人の一人称って、
蜜柑  うん、定まってないの。
紺野  じゃ、二人ででんぱ組ってことでいいかな。
美空  ……いや、二人は。
紺野  え。
美空  それは流石に……。
蜜柑  もう一人、いい人がいます。
美空  (厭そうな表情)え、それって、

   スクリーンが桃色に染まる。
   蜜柑たちが退場するのと入れ替わりで桃瀬が現れる。
   桃瀬のソロパフォーマンス。曲はたとえば『天使とLの庭で。』


   ひと段落したところで蜜柑と紺野が現れる。

蜜柑  桃瀬さん。
桃瀬  ……。
蜜柑  自主練中ごめんなさい、あの、ちょっとお話が。
桃瀬  興味ないから。
美空  よそうよ蜜柑、確かに桃瀬さん成績いいけど協調性無いし。
桃瀬  協調性(と鼻で笑う)協調性……? あ、協調性か。
美空  何が一瞬わからなかったんだろう。
蜜柑  あのね、桃瀬さん、この星のでんぱ組.incに入ってほしいの!
桃瀬  (その提案は嬉しいけどぐっと堪えて)三鷹蜜柑。あなたにとって、萌えって何?
蜜柑  え? あ、空気中に存在する、
桃瀬  そういうのを聞いてるんじゃない。萌えって何? エモって何? 何を求めてここにいるわけ?
蜜柑  ……。
桃瀬  気持ち悪いな……つまり、君の萌えだのエモだのってやらは、言われてやってるだけの猿芝居なんだ。
蜜柑  違う。
桃瀬  見せてあげるよ、本当の萌えってやつをね!
紺野  戦ってくれ。
蜜柑  ……やります。

   もうほとんど歌合戦みたいな勢いの桃瀬と蜜柑・美空のパフォーマンス。曲はたとえば『ムなさわぎのヒみつ⁈』


   一番の終わりに蜜柑たちが吹っ飛ばされる。曲が止まって、
 
美空  さすが学年一位……。
桃瀬  (主に蜜柑に)才能なんかじゃ勝てないよ。私は……まあ、おっしゃる通りすごくかわいい。

   間。

桃瀬  (反応が薄いのでもう一度)もんのすごくかわいい!!
蜜柑  はい。
桃瀬  それはまあ才能ではあるのですが。
蜜柑  はい、あ、でも、
桃瀬  それだけじゃダメなんだよ。かわいいだけなんてそんなの、山ほどいるからね。まあいいよ、百歩譲って私はもう超かわいいし誰も敵わないとしようか。でもね、それに甘んじてちゃ駄目なわけ。そんなんじゃそこら辺の石ころと同じ。河原にダイヤモンドが転がっていたとて、そのままにしていたら海に流されるだけ。
美空  いや、ダイヤは普通に、
桃瀬  ダイヤの原石ってのは言い得て妙ね。そう、ダイヤは磨かれてこそ価値がある。私は私を磨いて、より美しくならなければならない。それが努力ってこと。
紺野  (蜜柑たちに)いつもああなの?
桃瀬  才能一本で成績上位者に食い込んでるあなたが気に食わないんだよ、三鷹蜜柑!!

   間。

桃瀬  (反応が薄いので)三鷹蜜柑!
蜜柑  聞こえてます。
桃瀬  私は、あなたと一緒にやる気は無い!
紺野  それは困るよ。二人が一緒じゃないと。
桃瀬  ぷいっ(とそっぽを向く)
紺野  くそう、かわいいな……。
桃瀬  やです。一人でやりたいです。才能に頼ってる人と一緒にやるのは、心がもたない気がします。
美空  才能か……。
桃瀬  ……いやあんたじゃないし。三鷹蜜柑、あなたよ。
蜜柑  はあ。
桃瀬  私だけ頑張ってて、他の皆さんは適当にアイス食べながら稽古場でぐずぐずしてるのとか、絶対やですから。
蜜柑  ちょっと待って。何勘違いしてるか知らないけどさ、私だって頑張ってるから!
桃瀬  は? どれくらい?
蜜柑  待って、努力の量ってそうやってはかるものなの? 私は違うと思う。
桃瀬  少なくとも私ほど頑張ってるとは思えない。
蜜柑  何でわかるの? あなたは私の何を知ってるわけ?
桃瀬  私は寝る間も惜しまず練習してるよ、今だって練習してたけど、あなたは? どうなの? 惜しんでる? 寝る間。
蜜柑  11時には寝てます。
紺野  偉い。
桃瀬  偉いけどダメ。
蜜柑  何で。寝ちゃダメ?
桃瀬  今そういう話してないじゃん。
蜜柑  そういう桃瀬さんはちゃんと寝てんの?
桃瀬  当たり前でしょ。でも寝る間を惜しんでるから。ていうか授業中も寝てる人が11時に寝れるの?
蜜柑  寝れますけど。寝れますけど?
桃瀬  信じらんない。
蜜柑  ここにいるでしょうが!!

   二番から再開。
   拮抗する闘いだが、最終的には桃瀬が吹っ飛ばされる。

桃瀬  何で……。
蜜柑  チームワークさ。
桃瀬  嘘……そういうところが……許せないんだよ!

   喧嘩が始まる、となったその時、二人の間に現れる合唱隊のひとり。
   桃瀬と蜜柑に手刀を喰らわせ、消える。

青騎士 ……。
紺野  あの人は誰?
美空  この学園の一不思議の一つ。
紺野  少ない。
美空  青騎士ね。
蜜柑  誰が派遣したかわからないんですけど、いつも私たちのテストや授業を監視してるんですよ。
美空  あと(と、青騎士を演じる役者の豆知識を披露する)
紺野  それ一不思議っていうか、近所の名物お姉さんみたいなもんですよね。
美空  ……。
紺野  まあ、いいや(桃瀬に手を差し出し)立って。
桃瀬  (手を払って立ち上がり)そこまで言うならわかりました。入ってあげます。言っておきますけど
紺野  うん。
桃瀬  私が参加するのは、努力が才能に勝つってところを見せるためです。
紺野  うん。
桃瀬  別にでんぱ組.incとか、興味無いです。
紺野  うん。
桃瀬  すごい憧れのグループに加入できるのとか、そういうんじゃないので。
紺野  うん。
桃瀬  三鷹蜜柑さんを倒すためなので。邪魔しないでいただきたい。
紺野  (蜜柑に)いいの?
蜜柑  いいよ。
桃瀬  決まりね。
美空  私は反対だな。

   不穏な空気再び。
   すると静かに青騎士が現れる。

美空  グループで活動するんだよ。協調性の無い人が関わって大丈夫なの? 

   青騎士、美空に手刀を食らわせる。
   青騎士、退場。

美空  資料室のDVD、取って来よう。それ見て研究しよう。

   スクリーンには資料映像として、直前のライブツアーのダイジェスト映像が流れる。
   本当にダイジェストって感じの映像。

紺野  どうだった?
桃瀬  リーダーを決めた方が良さそうね。うちらの代はリーダーとセンターは兼任にしましょう。
美空  そこはよくない?
桃瀬  揉めたら面倒だから、私がやってあげる。リーダー兼センター。
美空  じゃ私トップ!
桃瀬  宝塚じゃないんだから。
蜜柑  いいよ、リーダー兼センター、トップ、(自分を指して)会長。こういう三人組でいこう。
桃瀬  決まりね。そうと決まればもうやることは一つじゃない?
蜜柑  待って、私も何か提案したい。
桃瀬  やってごらんなさい。

   蜜柑と桃瀬が何か話し合っているのを遠巻きに見ている紺野。
   美空、紺野に近づき、

美空  どうしたの?
紺野  何が?
美空  ちょっと暗い顔してたから。
紺野  いいえ、別に。むしろ、ほっとしてるんです。我が参加しなくても、三人でやっていけそうな気がして。
美空  へえ?
紺野  何ですか。
美空  別に。

   そこに王子が現れる。

王子  こんな時間までお勉強? 素晴らしいわね。
蜜柑  あ、すみませんDVD、今お返しします。
王子  そうよね。勝手に持っていくのはよくないわよね。
紺野  (美空に)勝手に持ってったの?
王子  (紺野に)あなたは?
紺野  わたくし? 紺野です。
王子  この学校の生徒じゃないわね。
紺野  ええ、地球から来ました。
王子  はあ……ようこそ。私の大事な生徒をどうするつもりかしら。
紺野  この星ででんぱ組.incを結成しようと思ってるんですが、そのメンバーにと……。
王子  そう……三鷹さん、あなた、なるのね。
蜜柑  え、そのつもりですけど。
王子  三鷹さん。あなたにとってエモって何?
蜜柑  それは……(桃瀬を見て)わかりません。
王子  授業で習ったこと、覚えていないの?
蜜柑  いや、覚えてます。覚えてますけど……。
王子  ……合格ね。
蜜柑  え。
王子  教科書丸暗記の答えだったら零点だった。そうね、この世界には、教科書的な萌えとエモであふれている。無理もない。もともと存在しないものを与えられた……自分たちで見つけたわけじゃないんだから手に入れるために模倣しようとするのは自然なこと。だから今この世界はそうならざるを得なかった。でもね、今こそ取り戻さなければならないんだよ、まことの萌えとエモをね。
蜜柑  なるほど、わかりました。(わからないけど)
王子  その覚悟、あなたにはあるの?
蜜柑  え~……あります。
王子  じゃあ、これを喰らっても平気なわけ?

   王子のソロパフォーマンス。曲はたとえば『キミのハートは私のもの♡』

桃瀬  この歌声……なんだかわからないけどエモい。
王子  これが……私の……エモ。
美空  センセ、すげー……間の取り方までエモい。
紺野  彼女もメンバーに加えよう。
蜜柑  賛成です。エモい先生が揃えば、最強です。
桃瀬  私も賛成。人数が奇数にならないとセンターはセンターにならないわ。
美空  先生、すみません、もしよかったらなんですけど、一緒に戦ってくれますか?
王子  私と勝負して、勝てたら、でどう?
美空  おおう……勝てるかな。
桃瀬  勝てるわよ。(紺野を見て)ねえ?
紺野  え?
蜜柑  先生! 覚悟!

   またも歌合戦のようなパフォーマンス。曲はたとえば『衝動的S/K/S/D』
   途中で、見守っていた紺野を桃瀬が引きずり込む。

王子  (紺野に)あなた、素晴らしかったわ。わかった。一緒にやろう。
紺野  ……ありがとうございます。
王子  リーダーは誰?
桃瀬  私です。
王子  あなたなら大丈夫そうね。今後の予定は?
桃瀬  あ~……そういうのはこの娘です(蜜柑を差し出す)
蜜柑  おあ、いや、
王子  そう。今後の話をしましょ。

   王子、退場。
   美空と蜜柑もそれに続いて退場。

紺野  さっきは何であんなことを。
桃瀬  わかんない? 今はあなたの力が必要なの。
紺野  それは今だけでしょ。
桃瀬  でも今必要なんだよ。いたら嬉しいどころじゃないの、必要なの。
紺野  ……。
桃瀬  休憩だって。よかったじゃん。

   桃瀬、退場。
   取り残される紺野。

   時間経過。
   連携がぎこちない『VANDALISM』のパフォーマンス。

桃瀬  待って! 止めよう。
紺野  うーん、どうだろう。
蜜柑  やっぱりあれだね、対決とパフォーマンスは別だね。
美空  ていうか、五人なんてまだやったことないし。
桃瀬  ここはリーダーとして一つ言わせて。
美空  トップとして言わせてもらえば、まだ早いってことだよ。
紺野  ……やっぱり、アタシ、やめます。
美空  ちょいちょい、どうしたのよ。
紺野  俺がいない方がチームとして綺麗だ。そうしたほうが早い。
桃瀬  早さのためにあなたを失うの? 冗談じゃない。そんなことしたら(悲しい、と言おうとするがやめて)……そんなことしたら、私がセンターじゃなくなっちゃうでしょ。
蜜柑  何でそんなに焦ってるんですか。
桃瀬  ええ、そうね。ゆっくりと成長していくのも醍醐味よ。
紺野  ……三鷹さんの言う通り、この世界は確かに萌えとエモで構成されている。それは、そうなんだ。で、今、それらがこの世界から減少してる。わかるだろ? その感じ。だから、萌えとエモを取り戻して、世界を救うため、でんぱ組.incの力は必要なんだ。時間が無い。うちらには時間が無いんだよ。
美空  世界平和のために何が何でも結成させないとってことね。
紺野  ああ、何が何でもだ。
桃瀬  どうなの? 会長の意見、聞こうじゃないの。
蜜柑  じゃあ……じゃ、う~んとね、じゃあ、ここに集まったってことだけでももうエモいんじゃない? だから、そういうことにしようよ。
桃瀬  ……ま、筋は通ってるか。
紺野  ……。

   王子を除く一同、全員それで手を打とうとする雰囲気。

美空  でも、いいの? ほんとにそれで。
蜜柑  ……。

   不穏な雰囲気に引き寄せられ、青騎士が現れる。

桃瀬  (青騎士に気づき)別に喧嘩しようってわけじゃないんだからさ。
紺野  でも、わかるよ。なんで来たか、なんとなく。
美空  もうチョップでも何でもしろよ! 

   青騎士がゆっくりと歩き始める。

王子  待って。秘密兵器があるの。

   青騎士の足が止まる。

桃瀬  何ですか、それ。
王子  私たちのグループをより、強くする仲間。ついに目覚めるときが来たってことね。

   AC/DCの『Shoot to Thrill』が流れる。

美空  何でAC/DC?
桃瀬  映画『アベンジャーズ』でアイアンマンが合流するときの曲なのよ。
美空  え、じゃあまさか、
桃瀬  そう! でんぱ組最強の助っ人はロバート・ダウ
王子  (遮って)そう! でんぱ組.incのリーダーは、その身をこの星の中心に、冷凍保存して生き残っていた! 彼女が目覚めれば、歴史は再び動き出す!
紺野  そうか、そこにいたんだ! 
蜜柑  じゃ、あの手紙はいったい……。

   音楽、盛り上がる。
   合唱隊のローブを着た人影が現れた。

王子  さあ! とくとご覧あれ!!

   ローブを脱ぐと、その中には一人の老婆。
   AC/DCのTシャツを着ている。

一同  ……。
紺野  資料とまるで違う。
桃瀬  ……相沢リサさんですか?

   老婆、反応が無い。

王子  え~……(諦めて)でんぱ組のリーダー、相沢リサさんです。
蜜柑  いや、おばあちゃんじゃん! めちゃめちゃなおばあちゃんじゃん!
王子  (強気で)面影はありますよ。
美空  面影があったとて! 面影があったとてでしょうよ!
相沢(?)……。
美空  やる気はあるみたいですよ。
桃瀬  無茶させらんないよ。
美空  冷凍保存、失敗したんじゃないですか。
紺野  これはこれでエモい。
桃瀬  「これはこれで」はもうダメな時のセリフですよ。

   間。

王子  終わったな……。
桃瀬  (言っちゃった……という顔)
美空  どうします?
王子  諦めよう、カーテンコールだ。ほら、並んで。

   するとどこからかカーテンコールっぽい曲が流れ(何かのインストゥルメンタル)
   王子、蜜柑に目で〆の挨拶を促す。

蜜柑  はい、え~……(気持ち切り替え)本日は、感想戯曲『ONE NATION

   突如雷鳴!
   スクリーンに神様が映る。
   それは明らかにでんぱ組.incのプロデューサーなのだが、誰もそれには言及しない。
   神様は『モンティパイソン&ホーリーグレイル』の神様っぽい感じか、もしくは二、三枚の写真をセリフの内容と合わせて出すようにする。この場合、写真の種類が多すぎてはならない。

神様  待て待て待て待て。

   間。

蜜柑  誰ですか?
神様  神様じゃ。
蜜柑  え?
神様  だから神様じゃ。
蜜柑  神様…………これ、4500円のお芝居ですよ。
神様  うむ。
蜜柑  マチソワ通し券8000円ですよ。
神様  うむ。だからなんじゃ。
蜜柑  そんだけ払ってもらって神様ってちょっとどうなんでしょう。
神様  うるさい。
蜜柑  うるさいって……。
神様  8000円がなんじゃ! 『ムーランルージュ』のB席より全然安いじゃろう。

   間。

桃瀬  ピンとこないたとえですね。
神様  (泣きそうな声で)世間知らず!
桃瀬  んまっ! 喧嘩なら買いますよ。
神様  喧嘩してる場合じゃないんだよ。あのさ……何で諦めた?
紺野  ……諦めてないですよ。
神様  嘘つけよ、整列してただろ。カーテンコールだったろ完全に。
紺野  カーテンコールかなあ?
神様  急にかわいくなるな。周りも止めろ。

   王子が最前列に愛想を振りまいている。

神様  最前列に愛想振りまくな!
桃瀬  二階席!
神様  おい、どうしたどうした。え? 怖いよ。急に。「え?」って顔やめてよ。怖いから。
美空  いいじゃないすか、諦めても。アイドルなんて……虹のコンキスタドールとかに任せておけばいいんですよ。
神様  あなたねえ。
紺野  雨模様のソラリス最高。
神様  ごめん勝手なこと言わないで、私これ録音だから。
紺野  さっき会話してたじゃないすか。
桃瀬  いいんですよアイドルなんて無数にいるんですから。うちらがやらなくても世界は回るし、少子高齢化は止まらないし、
神様  ちょ、マジ要点だけ喋らせて。いい? いける? あの、まあ確かに、アイドルはもうごまんといるよ。で、ぶっちゃけあなたたちが今ここで諦めたって、世界の流れは変わらないかもしれない。
蜜柑  ……。
神様  でもね。あなたたちが、やりたいって思ったっていう、それはとても大切なことだと私は思う。
蜜柑  ……。
神様  それはとってもエモいんじゃないかな。
蜜柑  ……。
神様  じゃあ最後にとっておきの画像を見せて終わることにいたしましょう。
紺野  いやマジでそういうのいいんで。

   神様が豪勢な食事を前に笑顔でいる写真が投影される。

桃瀬  うん?
神様  あ、間違えた。

   突然神様が消える。

紺野  何と間違えたんですか?

   間。

紺野  何と間違えたんですか!?
蜜柑  もういいよ。
紺野  だって気になるでしょ!
蜜柑  いいの。もう、覚悟、決まったから。
桃瀬  いるかいないかわかんない人あてにしてても始まらないでしょ。
王子  そうそう。

   一同、整列して、

王子  これはカーテンコールじゃない。始まりの整列だよ。

   名乗りの構え。

王子  教師の王子!
紺野  紺色の紺野!
美空  普通の快晴!
三鷹  三鷹の蜜柑!
桃瀬  唯我独尊・桃瀬亞里亞!

   一同、桃瀬の自己紹介には一瞬「それはどうだろう」みたいな表情。

桃瀬  五人揃って……
五人  でんぱ組.inc!!
紺野  二号店。
蜜柑  じゃあ二号店の一発目……『キラキラチューン』

   『キラキラチューン』のパフォーマンス。
   しかし絶妙に息が合わず、メンバーが次々と倒れてしまう。
   途中で曲が止まる。

美空  やっぱダメか?
紺野  諦めないで!
桃瀬  やっぱ一人でやるんだった……。
王子  今言うなよ。
桃瀬  ずっと言ってました。
美空  最初からやり直そう。
桃瀬  最初ってどこだよ。
美空  最初は最初でしょうが。

   不穏な雰囲気に導かれ、また青騎士が現れる。
   すると突然青騎士が舞い始め、何かが来る様子。
   逆光を背負って二つの人影が現れる。
   すると『運命論アイドリング』のイントロがかかり、歌いだすと同時にローブを脱ぎ捨てる。
   本物の相沢リサが現れる。
   若々しい。

紺野  音楽に応えてくれた……。
快晴  そんなディズニーランドのショーみたいな……。

   パフォーマンスがひと段落ついて、曲が止まる。

相沢  (主に客席に向かって)お待たせしました。

   間。

相沢  ん?
美空  いや……。
蜜柑  うちらもじゅうぶん待ったよね。
相沢  ああ、(さらりと)お待たせしました。
王子  本物だ……。
美空  ずいぶんさらりと挨拶してくれるじゃあないの。

   美空が怒ると、青騎士が立ちふさがる。

桃瀬  ていうか、青騎士は何なの?
相沢  私を守るため、そして次のでんぱ組を結成するためにサポートしてくれたの。そのまま長い付き合いになるよね。
青騎士 (頷く)
相沢  私もよくわからない。
青騎士 (動きで何か伝えようとするが、よくわからない)

   先ほどの老婆が現れ、二人のローブを回収する。

相沢  ここから先は私に任せて。
老婆  (頷く)

   老婆、退場。

相沢  ……さあ、やろう!
蜜柑  ちょっと待ってください!
相沢  ?
蜜柑  あの……
紺野  (遮って)あのおばあちゃん誰ですか?
相沢  私の代わりに地球と通信をしてくれてたの。
青騎士 (相沢に耳打ち)
相沢  通信機器が勝手にアップデートされちゃって、途中からグダグダだったんだって? それは……どうもすいません。で、(蜜柑に)あなたのお話は何?
蜜柑  あ、あの、お願いします(勢いよく頭を下げて)見ていてください、私たちを。私たちだけでもやれるってとこ、見ていてほしいです。
相沢  ……(たっぷりとメンバーを見回し、頷く)
蜜柑  (メンバーたちに)やり直そう……って言ったら怒る?
美空  いいや。

   他のメンバーたちも協力的な笑顔。

桃瀬  何百回でもやり直そう。納得いくまで。

   蜜柑たち、位置につく。
   『キラキラチューン』のパフォーマンス。
   完璧に終わらせて、

相沢  すごいね。(紺野に)任せて正解だったかも。
紺野  よしてください。
相沢       ありがと。ほんとに……嬉しい。
蜜柑  あ、そうだ。あの手紙、一体何だったんですか。
相沢  (察してはいるが)え?
蜜柑  「生きてしまったこと、
相沢  (恥ずかしそうに遮って)わ! あ、それは。
蜜柑  はい。
相沢  ……太宰が好きで。
蜜柑  は。
桃瀬  太宰治。地球の文豪。『人間失格』『女生徒』『走れメロス』『斜陽』
相沢  あと『待つ』
桃瀬  はあ(心底どうでもいい)。
相沢  太宰が好きで、それでなんか、生まれてすいません的な? 儚げな? 文章置いといたら、ちょっと良いかな、っていう……。
蜜柑  そうですか……。
相沢  はい……。

   間。

青騎士 今こそ「すいません」ですよ。
桃瀬  ていうか太宰の最後の作品は『グッド・バイ』っていう楽し気なものであって、
相沢  もうよして!!
美空  (桃瀬に)詳しいじゃん。好きなの?
桃瀬  別に。
蜜柑  てっきり江戸川乱歩あたりが好きなのかと。
紺野  夢野久作とかね。
蜜柑  だから意外、あ、
相沢  私帰る。
王子  待ってください! 謝れ桃瀬!
桃瀬  ぷいっ(とそっぽを向く)
相沢  (のが不愉快で)貴様あああ!!
王子  喧嘩しないで! (紺野に)見てないで止めて!
紺野  アイドルの喧嘩……エモい……。
美空  つーか、こんな理由で喧嘩するのはダサくない?
桃瀬・相沢 太宰はダサくない!
美空  すいません。
青騎士 次に進みましょう(と蜜柑を見る)

   一同、蜜柑を見る。

蜜柑  いや、今のリーダーは、
桃瀬  (わざとらしく哀しそうな表情で)そうね、リーダーは今私ですから……。
美空  言うねえ。
桃瀬  二曲続けて、お聞きください。

   ここからは青騎士たちも含めてパフォーマンスを行う。
   立て続けに『初体験』『でんぱせいばぁ☆』のパフォーマンス。

紺野  いいじゃん……やれるじゃん、うちら。
桃瀬  ここまでやれれば……。

   突然、蜜柑が膝をつく。

美空  わっ! 大丈夫!?
桃瀬  自身の萌えとエモを大量に消費したんだ。
美空  蜜柑!
青騎士 (何か構える)
王子  (を見て)古い習わしね。
青騎士 モア・エモ・エ・キュアネス

   桃瀬達も声を合わせ、繰り返す。
   何度か繰り返している中に蜜柑だけがくっきりと浮かび上がるような照明効果。
   人々の間から古川が現れ、蜜柑の傍らに立つ。

古川  ……。
蜜柑  すみません……やっぱり、できませんでした。
古川  何言ってんの。じゅうぶん頑張ったじゃん。
蜜柑  そうですよね。
古川  うん。
蜜柑  ……いや……いや、まだやれます。
古川  ……。
蜜柑  まだ、やれます、やります! だから……力を貸してください。
古川  あなたにとって、萌えって何? エモって何?
蜜柑  またその質問……この世界を構成する二つの要素で……それで……(周りの仲間たちを見て)なんか皆、言葉にしてくれなかったな……偉そうに、見せてあげるとか言いながら……でも、

   スクリーンに仲間たちの写真が投影される。

蜜柑  なんだかわからないけど、あったんです、そこに。あるとしか言いようがないものが、あった。

   豪勢な食事を前にした神様の画像が紛れ込んでいて、

蜜柑  あ、これは違うヤツです。

   スクリーンに映る画像が消える。

蜜柑  そこにある何かを受け取って、初めて生まれるんだ。この世界を構成する二つの要素。でも、萌えとかエモがそのまま空気の中にあるわけじゃない。それらのもとを受け取ることで、体の中に生まれるものなんだ。だから……世界の全てが、私に力をくれる。そして、世界の全てが、誰かに力を与えられる。
古川  ……。
蜜柑  私のことを待っていてくれる人がいます。だから、お願いです、力を貸してください。

   と、蜜柑が古川の手を握る。握れてしまう。
   蜜柑「あれ?」となる。
   古川、慌てて手を引っ込める。

蜜柑  え?
古川  ちょ……いきなり触られんのはちょっと違うかな。
蜜柑  え。
相沢  (笑顔で)遅いよ。
古川  アインシュタインによると時間は相対的なものだから、私が遅いんじゃなくて皆が……早かったんじゃない?
相沢  心配だから来てくれたんだよね。
古川  (露骨に厭そうな顔で)そういうんじゃないけど……(他のメンバーが笑顔で見守っているので)やめて、あったかい笑顔やめて!
一同  (あったかい笑顔のまま)はい。
古川  さ、やるよ。なんだかわかんないけど、お客さんが待ってる。
一同  (あったかい笑顔のまま)はい。
古川  それやめてったら!

   古川を含めたメンバーでパフォーマンス。
   曲はおまかせだが、例えば『でんぱれーどJAPAN』『Futer Diver』

紺野  じゃあ、でんぱ組.inc第二号ということで
美空  まあ、本物が出てきちゃったらね。
蜜柑  うちら贋者になっちゃうからね。
相沢  いいんじゃん? その辺は適当で。
蜜柑  え。
相沢  そもそも本物があるから贋者なんて言うのかもしれないし。じゃあ本物って何? って感じでしょ。皆が知ってる正解なんて、誰かがついた最初の嘘に過ぎないの。
一同  おお……。(良いこと言うなあ、な雰囲気)
青騎士 これ、女王蜂の歌詞から引用してます。
一同  ええ……。
青騎士 (無邪気に)アヴちゃんは素晴らしい歌詞を書きますよね。
相沢  ……私帰る。
蜜柑  リーダー!
相沢  (足を止める)
蜜柑  今度、ゆっくりお話させてください。
相沢  ……(拗ねた感じで)また引用するよ。
美空  それ脅しなんだ。
蜜柑  いいですよ。いっぱい話して、いつか、本当の言葉をもらいます。
相沢  そ。……じゃ、またよろしく。
青騎士 失礼します。
相沢  次会う時は私がリーダーだから……なんてね。
桃瀬  決闘で決めましょう。
相沢  (優しく微笑んで)うん、そうだね。世界の果ての意思に従うわ。

   誰も反応できない。

青騎士 今のは『少女革命ウテナ』の……(相沢、帰り始めているので)ひめ! 待ってください!

   相沢、青騎士、退場。
   すると古川、おもむろに立ち去ろうとするので、

蜜柑  あの、
古川  はい?
蜜柑  また、お願いします。
古川  ああ、はい、もちろん。
蜜柑  ……。
古川  ……でも打ち上げとかは無しの方向でお願いします。

   古川、退場。

王子  いい経験になった。じゃ、皆はちゃんと明日登校しなさいね。あと、美空さん。
美空  はい!
王子  もう居残りにならないようにね。

   王子、退場。
   桃瀬、王子が去ったのを確認して、蜜柑に近づく。
   警戒する一同。

桃瀬  ……。
蜜柑  ……。
桃瀬  今回は引き分けってことにしてあげる。

   桃瀬、退場するかと見せかけてなかなか出ていこうとしない。
   チラチラと蜜柑たちの方を見ながらゆっくり歩いたりする。

蜜柑  桃瀬さん。
桃瀬  え、何? は?
蜜柑  また一緒にやってくれるよね。
桃瀬  ……考えといてあげる。
美空  ……。
桃瀬  一か月前くらいに予定言ってくれれば空けるから。
蜜柑  うん。
桃瀬  セットリスト決めるとき、ちゃんと話し合おうね。
蜜柑  うん。
桃瀬  あと、稽古場
美空  もう行けば?!
桃瀬  美空さん。
美空  はい?
桃瀬  今後一緒にやってくからさ、その……私、あなたのこと、見直したってことにしといてあげる。

   桃瀬、やっと退場。

美空  何だよあいつ。
紺野  続ける気満々だったけど、二人はどう? まあ、こっちとしては続けてもらえるとありがたいんだけど。
蜜柑  うん、やるよ。

   間。

蜜柑  何で黙るの?
美空  私もやるよ。蜜柑がやるなら私もやる。
紺野  ありがとう。……って誘っておいてなんだけどさ、ここから先は修羅の道だよ。
美空  何で誘ったんだよ。
紺野  いや、修羅の道ではあるんだけど……君らとなら、やっていける気がしたんだよね。どうかな。
美空  修羅の道ねえ……(蜜柑に)どこまで行けるかな。
蜜柑  わかんないけどさ、行けるとこまで行ってみようよ。
美空  (優しく笑って)でも、いいの? ほんとにそれで。
蜜柑  いいんです!

   美空と蜜柑、微笑み合う。
   『檸檬色』のパフォーマンス。
   そこに出演者が合流し、カーテンコールへ。


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