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わずか12年間、歴史に翻弄された北の防衛拠点を伝える「仙台藩白老元陣屋資料館」

江戸時代の末期、諸外国からの防衛を担う拠点跡。黒船来航による鎖国の終焉にともない、幕府は蝦夷地の警護を強化しようと考えた。当時の松前藩のみでは北海道全域をカバーできぬとして、東北の諸藩に護衛を依頼した。その内のひとつ、白老に跡地が残るのが、仙台藩の陣屋である。陣屋とは、軍や兵隊が宿営する防衛拠点のこと。お城の簡易版のようなもの。今でいう自衛隊の駐屯地であろうか。

1855(安政2)年、仙台藩からの選抜チームは、ここ白老の地が防衛拠点には最適であるとして、拠点化を決定。三方を丘に囲まれ、東西に川が流れることがその理由だった。翌年、土塁と堀を築き、その中に本陣・勘定所・兵具蔵などの施設を建てた。120人ほどの仙台藩士たちが暮らし、決死の覚悟で北の守りに任務していたという。

しかし、時代は大きく変化して、彼らに悲劇をもたらす。江戸幕府が倒れ、明治維新が起こったのだ。新政府軍との戊辰戦争が発生すると、仙台藩士たちは白老からの撤退を決めた。わずか12年間。北方警備の歴史に、突如として幕を閉じた。

資料館の外観

国の史跡に指定され、北海道遺産の認定を受ける本施設は、資料館が併設されている。歴史的背景を始め、敷地全体のジオラマや、アイヌとの交流に関する資料などが展示される。

見所いっぱいの資料館内部

実際の跡地は自由に散策ができる。当時、植えられた赤松のうち、1本だけが残っている。170年近く成長した松はみごとである。静かに歴史を見守っている。

当時に植えられた赤松

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