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#14 分からない人々
世の中、分からない人で溢れているとつくづく思う。
今日見かけた人だけでも、分からない人は結構いた。
霞ヶ関駅から日比谷図書館までの交差点、向こうから昼休憩のサラリーマンと思しき集団がやって来た。すれ違いざま、ふと彼らを見ると、全員判で押したように水色のシャツに、グレーのスラックス、首からは入構証をさげていた。
まるで量産されたロボットのようだ。
僕の感覚だと、揃いも揃ってみんなと服装が上下同じだったら、恥ずかしくなって、一緒に外に出歩こうなんて発想にならない。彼らには羞恥心が備わっていないのだろうか…。
夕方、体を動かしに近所のスポーツセンターへ行くと、ここにも分からない人がいた。
ロッカーがあるので、マシンがある場所には誰も飲み物やタオル以外は持ち込まない。が、そこへ、リュックを背負い、マスクをつけた男が現れた。見るからに他の人とまとっているオーラが違うので、僕は体を動かしながら、目の端で彼のことを観察していた。
すると、彼はランニングマシンに乗った。さすがリュックはランニングマシンの飲み物を置くような場所に無理矢理置いて走りだしたのが、走っていたのはたった二分だった。二分のランニングに意味はあるんだろうか? と、思いながら、今の行動からますます怪しさを増したその男は、次にエアロバイクに跨った。そこで、リュックから大量の資料を取り出し、それを読みながら漕ぎだした。もう、どっちかにしろよ、と思わずにいられない。
そんな男を観察しつつ、反対では、さっきから別の妙な男のことも捉えていた。
その男は、いろんなマシンがあるにもかかわらず、なぜか壁に向かって腕立てのようなことをしたり、マシンの間を縫うようにぐるぐると徘徊しているのだ。時折、後ろに立たれたりするのが気になってしょうがない。
時刻は夜の八時を過ぎていた。何もする気が無いのなら、帰ればいいのに。寂しいんだろうか?
スポーツセンターを後にして、近くの銭湯を目指していたら、ギャル同士の初対面の現場に遭遇した。
車の進入を防ぐように置かれた石のブロックにギャルが座っているなと思ったら、そのギャルは急に立ち上がり、前から煙草を吸いながら歩いて来たギャルに「はじめましてー」と、ハイテンションで挨拶をすると、ハグをした。初対面でハグ? しかもその相手、左手に火の点いたタバコ持ってるし。
「え、てかウチら顔似てない?」
「えー、やだぁ! やだぁは失礼か! あははは!」
そんなやり取りが始まったところで僕は銭湯に入ってしまったのだが、もうさっぱりついていけない光景が目の前で繰り広げられ、面食らってしまった。
何がどうなったら、ギャル同士が初対面で待ち合わせをして会って、挨拶も終わらぬうちにハグができるのか?
世の中、分からないことばかり。
そして最後は、自分のアパートに自転車で帰った時に会った、同じアパートの住人である。
僕が帰って来るのとほぼ同じタイミングで、その中年女性も帰ってきた。僕はゆっくりとした動作で駐輪場に自転車を置き、無駄にポストなんかを見て、共同のオートロックのドアのところでその女性と鉢合わせないようにと配慮していた。なのに、その女性ときたら延々鞄をごそごそとやっていて、全然鍵を開けない。鍵が見つからないのだろう。(すっと取り出せるとこに入れとけよ)
仕方なく、僕が鍵を開け、先に中に入っ、てドアが閉まらないように押さえてその女性を入れてあげた。にもかかわらず、その女性、本当に軽く、下げたと言われれば下げたかな、くらいの感じで頭を下げてさっさと行ってしまった。
マジで分からない。
「ありがとうございます」くらい言ってもいいだろ。別に寿命が縮んだり、貯金残高が減るわけでもないのに。
さらに分からないのは、こんな、「ありがとうございます」も言えない中年の女が、仕事をしていること。こんなにコミュニケーション能力無さそうなのに、どうやって仕事をしているのかと思ってしまった。
散々「分からない」と言ってきたが、場所やシチュエーション次第で自分も似たようなことを言われているんだろうな。
やっぱり、他人のことは分からない。
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