#12 朝顔おじさん

 真面目に文字数はこれだけ書こうとか、そんなことを考えていたら、すっかり何かを書くということから遠ざかってしまった。とても良くない。
 何が良くないって、「書こう」「書かなきゃ」みたいな思いだけはあったのに、全然動いていなかったからだ。
 というわけで、まぁ、一旦開き直って、何となく心のメモみたいな、そのくらいの気持ちで、あ、これはちょっと覚えていたいことだな、といったようなことをつらつら書いていこうと思った。
 
 で、こんな前フリを書いてから記すようなことでもないんだけど、今日、「あ、いいな」と思ったのは、代々木公園にいたおじさん三人組だ。
 夜、なんとなく散歩をしようと代々木公園を歩いていた。すると、その途中に、完全に反社のような、もう反社じゃなけりゃ手に取らないような派手で独特な柄のシャツを着たおじさん三人組がいた。彼らはライトに照らされ、なんだか異様な雰囲気を放っていた。
 近づいていくと、おじさん三人は、スマホで朝顔を撮影していた。しかも動画で! 誰も口を開いていなかったけど、みんなうっすら微笑んでいて、楽しそうだった。
 それを見て、僕は二つのことを思った。一つは「もう朝顔の季節なのかぁ」ということ。もう一つは、「このおじさんたち、見かけによらず四季を愛でるタイプなのかぁ」ということ。
 なんだか、そんな光景に出会えて、得をした気分になった。で、この何とも言えない感覚を共有できるような人と話したいなと思った。

 それから、まいばすけっとで買い物を済ませて外に出ると、小太りの中年男女が、電柱の前に立っていた。よく見ると、電柱に立てかけるようにして、パンパンの買い物袋が置かれ、女の方は煙草の煙を盛大に吐き出していた。嗚呼、まごうことなきクズ人間。
 それを見ても、なんだか得をした気分になった。
 それはなぜ何だろうと考えると、自分の頭では想像できない光景だからなのかもしれないという考えに至った。作りものじゃない、圧倒的な“リアル”に反応していたのかもしれない。
 煙草を家まで我慢できず、スーパーを出てすぐの場所で、袋を地面に直置きして煙草を吸ってしまうどうしようもなさ、もちろんエコバッグなんか持たず、買い物のときはスーパーの袋を購入する感じ。
 自分の人生には絶対に関わって欲しくないけど、見る分にはとても面白くて、ウソのない感じはすこし羨ましくもある。

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