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[読書]ルポ路上生


2021年夏、オリンピックを横目にホームレスと共に生活を見つめた記録

果たして貧困とは何なのか?
2021年夏、オリンピックを横目にホームレスと共に生活を見つめた衝撃の記録。

一日七食のホームレス!? 貯金ができるカラクリとは?

寝床探しから襲いかかる災害・犯罪の恐怖まで、家に帰らず2カ月間の徹底取材。
大阪・西成のドヤ街で暮らした日々をまとめた『ルポ西成』で鮮烈デビューを果たした著者が、《生活》の常識を根底から問い直すドキュメント。

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この本を読んで、年金をもらいながらホームレスをしている人がいるというのを初めて知った。何となくだが、年金をうけとるような人は金銭に困れば役所などに相談してホームレスにならない生活をしているのだと思い込んでいた。

確かに厚生年金などがもらえず、年金額が月七万円程度の人が生活保護を申請し、月13万程度の金額を貰えたとしてもその金額でアパートに住むと七万円も自由に使えるお金は無くなってしまう。
ネットでは手取り13万円の若者が生活に苦しんでるなどのニュースに対して「俺なら十分生活できる」などの貧乏自慢をしたがる人が大勢いるが、そういう人であればこそ年金をもらいながらホームレスになるという選択は理解できるのではないだろうか。
路上で寝るということを受け入れれば月七万円使えて、食べ物は炊き出しなどで無料で手に入るのだから。

もちろん、路上生活には常に命の危険も付きまとう。
ホームレスが路上で突然死などは良くある話だし、バス停で寝ていた女性が男性に理由もなく殺されるという事件もある。

犯人は、ふだんから深夜に周辺を散歩していたようで「邪魔だった」と供述したそうだが、深夜に散歩する不審者の方がよほど邪魔だと思う。
他にも若者が集団でホームレスをリンチし殺してしまう悲惨な事件も度々起こる。

いくら日本が治安はいいとはいえ、邪悪な人間は一定数存在しているのだからいい選択肢とは思えない。

また、この本の中で東京都では炊き出しなどのサービスが頻繁に行われており、ホームレスとして潜入取材している著者は食べ物に困っていない様子が描かれている。しかし、全てのホームレスがその恩恵に預かっているかというとそうともいえない。
本の後半に出てくるホームレスは炊き出しがあるということを知らずに生活されている。
積極的にホームレスとして生きていこうとしなければサービスには辿り着かないし、田舎にホームレスを見ないのはそもそもそういったサービスがないからだろう。
また、炊き出しをおこなっているのはボランティアが中心であり、行政が税金で何かをしているわけではない。

僕たちが、ボランティアにでも加わらない限り、本書に出てくるホームレスのことをタダ飯を食べて楽しているなどという資格もないのだ。

年金をもらいながらホームレスをしている人がいるというのも、ある意味年金システムの破綻だとも言える。
そもそも年金というのは老後の暮らしを働かずに可能にするサービスであって、実際に年金を貰ってもそれは叶わず、生活保護を受けても食事をするのがやっとの金額しか手元に残らないというのが正しいのか。

生活保護をもらっている人の方が働いている人より良い暮らしをしているのが許せない、という人がいるのもわかるが、それは働いている人に対する賃金の設定がおかしいのではないか。

会社が儲かっていないから、賃金の底上げはできないというが非正規雇用を増やして働いている人を解雇しやすくしたのなら会社が存続しやすくする必要もないのではないか。ダメな会社は潰してみんなで景気の良い会社に移れば良いだけではないか。

最後に著者はこの国をホームレスになっても、本人の気質によっては「健康的で文化的な最低限度の生活」を送ることができる恵まれた国だと述べているが、それは国が制度としてしっかりしているからではなく、有志の支援によるものだということを忘れてはいけないのだと思う。

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