[読書]命をどこまで操作してよいか:応用倫理学講義
第2章 動物で人の臓器を作ってよいか
この表題を見るまで気づかなかったのだが、これってファンタジー小説でよくある「キメラ」の作成の話だとわかり驚愕してしまった。
なまじ医学知識がないためスルーしていたのだ。
難病が治るとかあるならいいことだくらいにしか思っていなかったのだが、確かにこれは難しい問題だ。
そもそも人の命を助けるために他の動物を実験材料に使って良いのか?
ネズミを使うのは大して気にならない。
豚も気にならない。
野犬を捕まえて使うのは少しモヤモヤする。
でも人の飼っている犬なら酷いと思う。
線引きはどこにある?
命を大切にっていうけど、僕は大切にする命を区別しているようだ。
本書では一つの見解として、命を尊重するには、道徳的地位というものが十分条件になっているとの見方を示す。
命があるだけでなく、理性的な判断と道徳に従う能力を持つかどうかとかが重要だということらしいけどそれでもやっぱり不十分でこの条件では赤ちゃんよりも大切にしないといけない動物が出てきたりするらしく、また精神疾患で判断力を失っている人もこぼれ落ちてしまう。
いちいちめんどくさいけど、しっかり考えて理屈をつけておかないとルールが作れずやりたい放題になってしまう。
答えは出ないかもしれないけど考え続けなくてはいけないことだ。
第5章 子どもの遺伝子を操作してよいか
例えば、子供の病気などの予防のために生まれてくる子供の遺伝子を操作しても良いものか。
これも僕は何も考えずに病気の予防になるならいいんじゃない、と思ってたんだけどこれが当たり前になると遺伝子操作を受けた人と遺伝子操作を受けずに病気になっている人の間で差別が生まれる可能性もあるし、そもそもお母さんのお腹にいる時の記憶ってないけど忘れてるだけで意識とかあった場合に勝手に体をいじられるのってどうなのとか考えると怖くなってくる。
結局、最後まで読んでも命をどこまで操作してよいかはわからなかった。
それはその時代の倫理観にもよって変化し続けるだろうし、僕らが知らないだけで草木にも意志があるなんてことが今後解明されるかもしれないし。
人間の脳を他の動物に入れ替えることができたとして、その動物は喋れないだろうけど以前の人間の知識と記憶は保ってるとしたら・・・とかわからないことも多いから。
これは心の片隅において考え続けろよということを教えてくれる本だと思った。