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心の水田を潤す旅

旅はできれば一人で行きたい私ですが、高齢の母に希望され、急遽、青森ねぶた祭りと秋田竿燈祭りを見に行きました。
目的はお祭りでしたが、車窓を流れる野山や田畑の夏の緑、特に、青森ヒバや秋田杉の森林風景がすばらしく、日本の多様な美しさをなにか誇らしく思いました。
仙台平野や秋田平野のどこまでも続く稲田の風景を眺めていて、ふと、日本人には誰にも、自分だけの水田のようなものが心の中にあって、耕して種を蒔き、水を張り、様々な出来事に見舞われても枯れないようにこまめに手間をかけ、仲間と助けあって収穫している感覚があるような気がしました。

青森では県立美術館も訪れました。青森出身の棟方志巧の美意識には、ねぶた独特の力強い表現に通じるものを感じました。地元青森の芸術に特化したコンセプトが明確で、唯一無二の施設だと、とても満足しました。
秋田の竿燈については、神秘的な気持ちになりました。時折、自分が大きな稲穂の下の小さなコロボックルになったような気さえしました。
ねぶたと竿燈は、隣接する地域であるにもかかわらず漂う美意識があまりに違いすぎて、どちらも同じ「ねぶり流し」が起源とはとても信じられません。勇大なものと神秘的なもの。簡単に好対照などと呼ぶには、現代への継承がどちらも見事すぎました。

当初自分が希望していた旅とは違いましたが、親と旅をする機会など滅多にありませんし、自分だけならお祭りを見に行こうなどと絶対に思わなかったので、良い機会になりました。これからも心の田んぼを大切に守っていきたいです。

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