メイクしたいと思える顔に出会った話

かっこいいなと思える人は数あれど、メイクしたいと思える顔に出会ったのは初めてだった。

5つ年下の男の子だった。仕事の関係で出会って、彼の連絡先を知ることも、プライベートで会うこともないが、密かにずっと想い続けている。

あーーーーー！メイクさせてくれーーーー！！！！

と。

先に言っておくが、私はメイクアップアーティストでもなければファッションや美容に関わる仕事をしているわけでもない。

至極普通の事務職員だ。

そしてその男の子は決して不細工だとか化粧しないとまともに見れないとかそんなことは一切ない、一般的に見てもイケメンの部類に入る子だ。

今どきの、重めの前髪を斜めに流していて、涼し気な一重の目元が小さすぎる顔に収まっている。

サッカーが趣味だというその子はスタイルも抜群であり、背は高くないものの俊敏性を感じさせる胴が短く手足が長い体型。そして信じられないくらい細い。体重で言えば平均そこそこ体型の女の私と同じくらいなのではと思っている。

そのままで十分完成されたイケメンなのだが、私はどうしてもこの顔に化粧したいと思った。

健康的に日焼けした浅黒い肌にトーンアップのファンデーションをのせ（これは普段の私の完全な趣味である。真っ白い陶器のような肌が好きで地肌よりも明るい色を肌にのせている）、一重の瞼の上にギラギラの青やシルバー系のラメ入りアイシャドウをこれでもかと塗りたい。そしてバサバサのつけまつ毛を付けた後、さらにマスカラを重ねたい。アイライナーで涼し気な目元をより強調させるようにラインをぐっと引いて、肉の少ない頬にピンク系のチークを控え目にはたく。リップはダーク系の赤みの強いマットなものにしたい。

ここまで一息で語れるくらいにはもういろんなことをこの顔に試してみたいと心から思っているが、そんなことを冗談でも言える関係には全くないので普段はおくびにも出さず対面している。

暖色よりは寒色の方が似合うと思っているけど今の季節だったら透け感のあるオレンジやレモンイエローなんかもいいんじゃないかなとか、その上にゴールドの大粒キラキララメ重ねてもいいんじゃないかなとか。

メイクに対して全く知識のない一般人が思っているだけなので「いや、その組み合わせはない」とか「色のバランスおかしいから！」というツッコミはあるだろうが、あくまで妄想の話として温かい目で見ていただきたい。

そんなにしたいなら自分の顔でやればいいのではとも言われそうだが、私は私がしたいメイクが正直似合わない。

動画サイトなどで研究中ではあるのだがなかなかに難しい。

いわゆるイエベ春だのブルべ冬だのなんてものも全くわからない…。

けれどもメイク動画を見るのは楽しい。デパコスもプチプラも気になったものは買ってしまうし、クリスマスコフレや福袋なんかもネットを見ているだけでも楽しい気分になる。

化粧ってすごい。楽しい！と思えるようになったのは実は最近のことで、色々挑戦したいし、このメイクに似合うようなファッションも考えようと思えた。

その最中で私はぜひメイクさせてほしい！と思える顔に出会った。その相手が男だった。

あ～この綺麗な肌に、形のいい目元に、薄い唇に、私の好みのメイクをさせていただきたい。

そしていつか、そのメイクが私にも似合うように頑張ろうと思う。