見出し画像

旅立ちのときに

ある日、一通のメールが届いた。
「わたし、あたたかいところへ引っ越すよ」

そのメールを受け取った日、
私は空港にいた。

何でもない日に、20年近くも来たことのない
空港にいた。

もう20年以上前から苦楽を語らっては、
お互い見守っている
大切なあの子からのメールだった。

だから私は一瞬だけ驚いたけど、
それ以上に嬉しさを感じた。

「おめでとう!やったね!」

そんな気持ちでメールを返した。

もちろん、合格したわけでも
何か特別なことがあったわけでもない。

突然届いた一行のメールで、
全部を察し、その上で喜んでいる自分がいた。

引っ越すのではなく、すべてを消して
新しい土地で暮らしを一から始めることを
あの子は決めたのだ。

北から南へ、誰も知らない土地へ
帰る家を消して、仕事も消して、一人で小さな娘をつれて移ること。

普通であれば、みんなが止めるだろうことを
「やっちゃった」と明るくいう。
そして私は「よかったね」という。
はたから見れば、おかしいのかもしれない。
ずっと昔から言っていた あたたかいところへ住むことがどんな形であれ叶うのだから。

不安はいっぱいなのを、言葉の節々で
分かり合って、それ以上にワクワクするんじゃない?と聞くと「うん!」という。

その、いままでの中で1番澄み切った声が
白い砂浜ときれいな海の景色を私の頭の中に呼んできた。

「さよなら」も「バイバイ」も「またね」も
言わない。
新しい日々への旅立ちだから。

そのかわり、
あの子が音色が好きで大事にしていた鈴と
同じ薄い水色の鈴を私に手渡し、
私は、知らない土地でも優しく見守っていれるようにと薄いピンク色の花模様を贈った。

旅立ちのときに贈る花模様は
いつの日もやさしくその日の決断を
包んでくれるかもしれない。


そんなエピソードとともに
展示の前にやってきた、
わたしの「花模様の日」。

---

「花模様の日」
Mariko Matsuhashi small exhibition
花模様の水彩画の小さな展覧会を開催いたします。
--
日時:
2023.11/9(木)-12(日)
11:00-17:00
会場:
川反中央ビル2階(秋田市大町3丁目1-12)
Flower Space T’s
cafeEpice
--
限定コラボ企画
Flower Space T’s(花束)
cafeEpice(焼菓子)
sui(和菓子)
---
お花屋さんとカフェの2会場での開催。
お花を選んだり、お茶をしながら
花模様を選ぶひとときの四日間を
お楽しみいただけたら幸いです。
限定コラボ企画も👀
心ほんわか冬支度ができますように。
みなさまのご来場を心よりお待ちしております。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?