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デビュー40周年のとんねるずに寄せて

2020年は、とんねるずのデビュー40周年だった。ポニーキャニオン所有音源のサブスクが解禁された以外には、周年記念と思える動向はなかったが。木梨憲武が美術展の全国巡回/多彩なコラボの歌手活動/ネットテレビ連動のラジオ/趣向を凝らしたインスタ…等々で前年同様に八面六臂だったのに加え、石橋貴明が盟友テレビディレクターのマッコイ斉藤と共にYouTubeチャンネル「貴ちゃんねるず」を開設し“大逆襲”を開始したことから、結果《2人とも稀代のインフルエンサー》というとんねるずの特性が広く再認識される一年になった。ある意味、彼らがそれぞれの単独企画を持ち寄って一つの番組を成していた日本テレビ「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」に近い現況である。

■YouTubeにおいても流行に依存しない石橋貴明

「貴ちゃんねるず」は週2回、月曜と木曜の夜9時配信。月曜版は「貴ちゃんスポーツ2020」といい、タカさんがプロ野球(帝京高校出身の杉谷拳士選手)を中心に一週間分のスポーツ解説を披露するのが通例だ。視聴者はまず、日頃あらゆる試合中継にかぶりつき独自の考察を醸成しているタカさんのスポーツ狂ぶりに圧倒されることになるが。本質は何を話しているかでなく、どのように喋っているか。すなわち香具師の啖呵売や見世物小屋の呼び込み口上と同様、解説から超越した話芸が、“売りもの”に関心がない人々もリピーターにさせるほど素晴らしいのである。YouTubeゆえ各競技の資料映像は皆無。だからこそ凄味が伝わりやすい。

一方、木曜版は不定型のバラエティ。フジテレビ×とんねるずの伝統だった木曜夜9時に再び遊び場を手に入れたタカさんとマッコイさんの不良学生感がプロフェッショナルな技能によって輝く企画の数々だ。特筆すべきは、その中にYouTuberの常套手段が含まれていない点。時事や時の人物について意見するとか、話題の歌やダンスやゲームに挑むとか、業界話や私生活を切り売りするとか、他のYouTuberと徒党を組むといった《見出し至上主義》ではない。テレビと反りが合わなくなったから開設したという経緯だけれど、実のところテレビからみてもYouTubeからみてもタカさんはハミ出していて、いわば彼自身がメディアの一種なのだと観ていると分かる。

音楽ユニット=Ku-Wa de MOMPE(くわとモンペ)は、マッコイさんが高校時代BOOWYに倣ってバンド活動していたことが雑談中明かされたのを機にタカさん主導で結成。とんねるず関連楽曲の大半を手がけてきた後藤次利の全面協力を得て、氷室京介や吉川晃司を彷彿とさせるデジロック「Stranger to the city」を配信し、大手企業の後ろ盾がない(マスコミが完無視する)中でもオリコンのダウンロードシングルランキングで見事1位を獲得した。

利害度外視で活路を見出してあげたマッコイさんと、暗にその御返しとしてかつての夢を叶えてあげたタカさん。男気溢れる2人の友情は我々の胸も熱くさせる美しさだが、タカさんが書いた歌詞がマッコイさんの出身地=山形県鮭川村を曲解した抱腹絶倒の内容のため「Stranger to the city」を聴いている間に胸が熱くなることは絶対にない(庄内平野をShow night hey ya!と表した箇所はロックスターへのイジリとしても実に秀逸だ)。誠実と狂気の両輪で突っ走る「貴ちゃんねるず」は、今後も他の追随を許さぬYouTubeチャンネルで在り続けるに違いない。

■突飛なクロスオーバーを仕掛けまくる木梨憲武

それぞれの現在を対比してみると、タカさんには《絆》ノリさんには《出逢い》というキーワードが思い浮かぶ。一度心を開けば相手の人となりや背景を隅々まで把握し関係を深めてゆくタカさんとは対照的に、ノリさんは公私とも常に心を開いて過ごし、まだ名前すら覚えていなくとも挨拶が済んだら仲間内というくらいの軽やかさで関係を繋いでゆく。本当は心の全てを開いているわけではないのかも知れないが、心の玄関が異常な広さであるのは確かだ。

ノリさんは、周囲が想定しない処へ現れること、其処にいるはずがなかった誰かを連れて来ること、そして関係なかった誰かと誰かを引き合わせることがめっぽう巧く、めっぽう好きとみられる。フジテレビ「とんねるずのみなさんのおかげでした」が終了した2018年春以来、彼のソロワークはほとんどそのいずれかに該当している。最初に目立ったのは、様々な業種に融け込んだ写真をインスタで公開する「お仕事シリーズ」だったか。いや、その前にもあった。

主演映画「いぬやしき」のPRを兼ねてTBSラジオ「ジェーン・スー生活は踊る」の相談投稿コーナーに参加した際、映画関係の仕事をぼんやりと夢みながらも何も行動に移せずフリーターのままだと云う若い相談者に対し「もう俺、彼の就職先を決めてます」と言いきり舞台挨拶現場に招待、映画プロデューサーとの面談機会を設けてあっという間にこれからの仕事と“やる気”を与えてみせた。はたして人気芸能人ならば誰にでも出来ることだろうか。活字の上でしか接点がない段階で相手の人生の分岐点にここまで豪快かつ華麗に飛び込んでゆけるのは、ノリさんだけだろう。

それから約半年後にTBSラジオ「土曜朝6時 木梨の会。」とGYAO!「木梨の貝。」が放送開始。新たな発信拠点が出来きるやいなや、ノリさんは更に自由奔放となり、以後仕掛けたクロスオーバーは枚挙に暇がない。リスナーの自宅から生放送すると電話で突然予告し翌週に機材を搬入して決行/アルバムのPR先にジャパネットたかたを選び通販番組に参加/FNS歌謡祭当日に事情を知らない旧友の見栄晴を呼び込み生出演を強要(2015年以来2度目)/自身の絵画を所有していたあいみょんの最新MVを御礼として全面パロディ化/楽曲公募を通じて知り合った一般人(運送業者)を同行させMステでも共演…等々。

思いつくのも行動に移すのも、まぁ早い。そんな底知れぬプロデュースセンスの持ち主でありながらもコンビで活動する際には必ずタカさんに方針を委ねるというのだから、転じて、ノリさんがタカさんに寄せる信頼の厚さも分かってきた今日この頃である。

■今後が黄金期でも不思議でないとんねるず

タカさんが「Stranger to the city」でオリコンランキング1位を獲得したのと同時期に、ノリさんは4曲入EP「木梨ミュージックコネクション」でiTunesランキング1位を獲得。また、タカさんが不定期番組「石橋貴明プレミアム」でABEMAバラエティランキング1位を獲得したのと同時期に、ノリさんは「木梨の貝。」でGYAO!バラエティランキング1位を獲得した。言わずもがな、日本のお笑い界で他に類をみないことだ。とんねるずは死んでいない。死んでいないどころか、なのである。

さて、本格再始動に関してはどんな進捗状況だろう。ノリさんが折に触れ客前で口にしてきた2人でのコンサート構想はまだリップサービスの域にとどまっているのだろうか。そのカギがタカさんの気分なのだとすれば「貴ちゃんねるず」や「石橋貴明プレミアム」で総合バラエティが、Ku-Wa de MOMPEやB Pressure(野猿のメンバーだった平山晃哉・神波憲人との音楽ユニット)でライブステージがタカさんの選択肢に戻っている現在は、遂にスタートライン目前という希望的観測もできる。

正月のテレビ朝日「とんねるずのスポーツ王は俺だ!!」で年に一度顔を合わせる様子を“夢の共演”と思うようになってしまって早何年。どだい誰かと対等な力関係でコンビを組むにはあらゆる力が強すぎる石橋貴明と木梨憲武が意気投合し、とんねるずになったことの偶然と必然を、爆発するようなエンターテイメントの中で早くまた感じたい。そのためにはこんな世の中でも元気でいないと…と、思わせてくれる時点で既に大感謝である。した!

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吉祥寺出身、和光大学卒。ちょっとしたイラストレーター。
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