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花丸恵の食べたり呑んだり作ったり

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自分が書いた食べ物やお酒などに関するエッセイをまとめました。 食べた感想だけでなく、食べ物に関して疑問や思ったことなども書いています。 今後もどんどん追加していきます。 食いしん…
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2021年6月の記事一覧

梅の実ころりん

「おぉ、待って待って」 梅酒を漬けるために洗った梅の実を キッチンペーパーで拭きながらヘタを取っていると、 ポロンと梅の実が私の手からこぼれ落ちた。 そのままコロコロと床を転がっていこうとする梅を 「待って待って」と言いながら拾い上げた私は、 (これじゃまるで、おむすびころりんだな)と思った。 日本昔ばなしの「おむすびころりん」は おばあさん手製のおむすびを、正直者のおじいさんが落とし、 コロコロとネズミの穴に転がり落ちてしまうところから物語が始まる。 拾った梅の実を見な

ラッキョ臭いシンデレラ

「あなた、おならした?」 私が夫に聞くと、 「してないよ」 そう夫は答えた。とは、いうものの、 どうにもこうにも漂ってくるものがある。 モワリとした匂いに、私の鼻が反応しているのだ。 いやぁ、何か臭うんだよねぇ、とつぶやく私に夫が言い放った。 「自分の手が臭いんじゃないの?」 私はハッとして、じっと手を見る。 思いがけず田原俊彦と石川啄木を 共演させてしまった気がしなくもないが、 とりあえず私は手の匂いを嗅いだ。 「臭い」 手が臭うだけではなく、指先は少し熱を持ってい

狂おしきラッキョの一日

私の夫は、若葉眩しい5月になると、ソワソワしはじめ、 何やら横で、モニョモニョ言い始める。 「ねぇねぇ、そろそろラッキョの季節だよ」 あぁ、そうねぇ、とツレナイ返事をしておく。 私がツレナイので、夫は「う~」と言いながら 口をにゅっと尖らせている。不満げなタコである。 その後、ネットを見ながら夫が、 砂地に生息するキツネ、 フェネックのように瞳をうるうるさせ、 「ねぇねぇ、鳥取でラッキョ販売の予約始まってるよ!」 と、自らの愛くるしさを最大限に発揮し、 夫は本格的な