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花丸恵の食べたり呑んだり作ったり

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自分が書いた食べ物やお酒などに関するエッセイをまとめました。 食べた感想だけでなく、食べ物に関して疑問や思ったことなども書いています。 今後もどんどん追加していきます。 食いしん…
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2020年11月の記事一覧

やさしい名無しさん

私は、広島の宮島口で、うえののあなごめしを食べたことがある。 香ばしくて、あなごがふっくら。本当に美味しかった。 あまりにも美味しかったので、宿泊先近くのデパートで うえののあなごめし弁当を買って、また食べた。 食べながら思わず、口をついて出てしまった。 「あー、コレ、ばあさんに食べさせたいわー」 私の祖母は大正生まれ。 食欲旺盛。本当に食べるのが大好きな人だ。 海鮮と鶏肉が大好き。菓子にも目がない。 ちょっと、旅にでも行こうか、なんて思っても、 祖母の口に合う食べ物が旅

秘伝!? 煎餅再生術

夫が台所でなにかしている。ゴソゴソ、バタン。 ムーーーーーーーン 電子レンジの音がする。何かを温めているらしい。 ピッ! とレンジを止める音。良い頃合いになったのだろう。 醤油の香ばしい香りが漂ってきた。 夫が小皿に乗せた煎餅を持ってくる。すぐには手を付けない。 私が物欲しそうな顔してみると、夫はパリンと割って ひとかけ私に温めた煎餅をくれた。 自分で物欲しそうな顔をしたくせに 「あら、悪いわねぇ」 などと言い、温まった煎餅を口に入れる。 温かさの残る煎餅と一緒に

崎陽軒が輝いて見えた

あまり走らないでいると良くない。 私のことではなく、車のことである。 それならば、ちょいと出かけよう、ということになり、 我々夫婦はドライブに出かけた。 フードコートの他に、ラーメン屋や焼き鳥屋などが並ぶ施設に入る。 こういうところでの買い物は、普段の買い物とはときめき度が違う。 久々に楽しい買い物を楽しむ。 目に飛び込む崎陽軒の赤い看板、心が踊る。 シウマイとビール。いや、白ワインもいいな。 安い赤ワインも、中華と合うんだ。 特にシウマイは小ぶりでお酒のお供にピッタリ。

ダシの匂いがする女

先程までうたた寝をしていた。 寝ると呼吸が深くなるので、気づいたのだが、 自分から、ダシの匂いがする。魚系のダシの匂いだ。 食い意地が張りすぎて、とうとう体からダシの匂いまで投出するようになってしまったかと、我が身を哀れんだが、 何のことはない、先程までめんつゆを作っていたのである。 厚削りの鰹節、頭とワタを取った煮干、昆布、干し椎茸、梅干しの種に 醤油、酒、みりんを適当に鍋に入れる。分量はその時の気分。 甘めにしたければみりん多め。 軽い仕上がりにしたければ、醤油の半量を

みかんの通信簿

一年ぶりにみかんを食べた。 みかんの良さは、刃物を使わず、自分の手で剥けるところにある。 しかも、持ち運ぶのに、容器もラップも何もいらない。 ただ、カバンに入れてしまえばいいのだ。 この簡便さは、みかんをおいて他にない。 と、言いたいところだったが、 テーブルに置いてあったバナナと目が合う。 「私も、結構良いやつですよ」 確かに。 バナナに関しても語りたいことはあるのだが、また今度ね。 気の良いバナナとお別れしたところで、みかんの話である。 今日食べたみかんは、近所に植え

牛丼で死体はよみがえる

人間も、本当は冬眠をしたいのではないか、と思う時がある。 「今日、寒くない?」 と、つい口から出るようになると、人は明らかに行動が鈍くなる。 何か膜でもかかったように、頭がボーッとして、 体も鉛が入っているかのように重い。 季節の変わり目は体調を壊しやすいというが、 特に秋から冬にかけての時期はそれを感じる。 私は、アレ?と思った時は、すぐ葛根湯か補中益気湯を飲むのだが、 自分の体調の変化に気づけず、いきなりぐったりする時がある。 昨日の私がそうだった。 ホットカーペットの上

崩れた肉団子を救え!

「あんた、主婦歴何年目よ!」 鍋の中で崩れた肉団子を目の当たりにし、 私は私に叫んだ。これは緊急事態である。 今すぐ、この肉団子の応急処置をしなければならない。 再生の道はあるのか? それとも違うものに変身させるか。 考えてるうちにも、肉団子はだらしなく煮崩れる。 煮崩れの原因は、肉ダネのつなぎに使った、厚揚げ。 普通の厚揚げではない、最近良く見る、モチモチしたタイプの厚揚げだ。 そのまま焼いて食べれば、新食感の美味しさがある。 そのモチモチとした厚揚げをツンツンしながら魔