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私はかつて、急須に窮す日々を送っていた。 なぜ、あんなに急須というものは割れやすいのだろう。 生活に馴染み、日々を共に過ごしている急須は、なぜか突然注ぎ口が欠け、蓋が割れ、持ち手が欠ける。そのたびに、心に大きな衝撃が走り、自分の不注意を責め、精神的に弱っているときには、うっすら涙さえ浮かべることもある。 あのどっしりとした見た目に反し、急須は実に繊細な瀬戸物だ。 某通販雑誌で、高級な急須を見かけた。 その雑誌は、こだわりのある品揃えで、時折、芸能人や文化人がC
先日まで、私は山梨県・勝沼を舞台にした物語を書いていた。 勝沼には何度も訪れたことはあるが、その目的は小説の舞台にするつもりではなく、ワインを浴びるほど飲むためだった。 当時は、自分がまた物を書き始めるとは思いもしなかったので、記憶に残そう、という気概がなかった。残っている記憶といえば、 ワインワインワイン。そればかり……。 アルコールをまとった記憶というものは、どうしたって曖昧になりがちだ。 あの道にはぶどうがなっていただろうか。 あそこのコンビニはの駐