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花丸恵の漫筆日和

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思いつくままに書き留めたジャンルなしの日記やエッセイです。
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2021年10月の記事一覧

小三治と卵かけご飯

 私は卵が好きだ。  生であれば舌の上でとろりと流れ、温泉卵だと、より濃厚に舌にまとわりつく。かき混ぜて焼けば優しい色で弁当を彩り、出汁と合わせて蒸しあげると、愛らしくぷるぷると震え出す。  なんと魅惑的な食べ物だろう。これが人間ならば、ちょっと警戒してしまいそうなくらいの艶めかしさである。  簡単なものから手間のかかるものまで、卵料理というのは実に多彩なものだ。その中でも、一番手軽な食べ方と言えば、卵かけご飯になるだろう。私もたまに食べることがある。  茶碗にご飯をよそ

トウキョー御伽噺~otogibanashi

 「東京は夜の七時」という曲がある。  ピチカート・ファイヴの代表曲になるのだろう。この「東京は夜の七時」がリリースされたのは1993年の12月。当時私は14歳。いわゆる中二である。中二病などと揶揄させるが、この頃に感じた印象や思いは大人になっても影響を及ぼすほど根深いものがある。  中二病(厨二病)とは、思春期の格好つけたい年頃の少年少女にありがちな、空想や自己愛や全能感が生み出す、奇矯で珍妙な言動や嗜好のこと。 揶揄または自虐の意味を込めて用いられるスラング。(Webl