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おもちょろい夫

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面白いことを、ちょろっと漏らしがちな夫が登場するエッセイです。面白いだけではなく、たまに哲学的なことも言ったりします。
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2024年6月の記事一覧

六千万の胸騒ぎ

 ああ、鉄筋コンクリートの建物って、なんて楽なんだろう。  現在の住まいに越してきたとき、私はそう思った。  それまでは、都内某市に16年間暮らしていたのだが、そこは木造二階建てのアパートだったからだ。  元々、夫はあまり住処こだわりがなく、通勤にかかる時間が30分以内であれば、贅沢は言わない。というタイプだ。  私も大きな出窓が欲しいとか、ロフトがいいとか、特に希望もなく、心霊現象さえなければいいや、くらいにしか考えていなかった。  何のこだわりももたずに、《縁》だけで

噛みしめる人生

 三十代になった頃から、歯医者さんで、 「歯ぎしりしてませんか?」  と、訊かれるようになった。  これまで、家族からそういった指摘を受けたことがないので、 「いいえ」  と答えたが、歯が欠けてきたりヒビが入ったりしているので、噛みしめ癖があるのではないかと言われてしまった。  鏡に近づいて見てみると、前歯が少しばかり擦り減っているのがわかる。  診察を受けて驚いたのは、 「普通は口を閉じているときは、上下の歯の隙間は空いているものなんですよ」  歯科医師から、そう教えても

吸引力の強い男

 その日、私はショッピングカートをゴロゴロ引っ張っていた。  月に2回ほど開催されるワイン2割引の日を目当てに、近所のスーパーマーケットに、買い物に来ていたのだ。  会計を終え、カートに戦利品のワインをつめていると、真横から独特な匂いが漂ってきた。  ポマードだろうか。  スーパーマーケットという場にそぐわない重たい独特な匂いに、思わず目をやる。  するとそこには、スーツをビシッと着て、頭をビタッとなでつけた若い男が、買い物を終えて袋詰めをしていた。  ほう。  何に感