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「あれ?宮下、宮下じゃない?」 声をかけられ、視線を向けると、見覚えのある顔がそこにあった。 そのとき私は居酒屋の小さなテーブル席に一人座っていた。ビールと焼き物を注文し、次は何を頼もうか考えながらメニューを見ていたところだった。 「やっぱり宮下だ! 元気?」 ここいいかな? と訊くこともなく、当然のように私の目の前に座る。私が黙っていると、 「まさか、オレのこと忘れてないよね?」 そう言って昔と変わらない笑顔を見せる。忘れるわけがない。高校時代、私が恋をした先輩だ