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コロナウイルス奮闘記 #25

投稿の空白期間はアニメを見たり小説を読むことが多かったから、久しぶりに映画を見た。その記念に今回見た映画を紹介しようと思う。

今日の映画は「グレイテスト・ショーマン」

やはり映画という芸術の凝縮感というか、贅沢さは飛びぬけているとおもう。アニメも小説も大好きだが、濃密感でいえば、映画は圧倒的だとおもう。さらに「グレイテスト・ショーマン」はミュージカル映画で、音楽やダンスの楽しさもぞんぶんに発揮されていた。

鑑賞後に知ったのだけどこの映画、P.T.バーナムさんという実在する興行師(公演を企画する人)のいわば伝記映画になっている。過去いくどとなくバーナムさんの物語は映画化されているらしく、その生きざまはまさに興行師の名にふさわしく突飛なものだった。

こういった面白い物語を土台にしているものの、単なる伝記映画で終わらないこの映画の見どころはなんといってもバーナムのショーのシーンだろう。「レ・ミゼラブル」や「ラ・ラ・ランド」とは違った、豪華で激しいミュージカルシーンになっていて、差別問題を中心に扱ったこの作品では、キャラクターの力強さや豪快さが表現されることが多かったようにおもう。

ミュージカルは、長台詞の役割―人物の感情や思想を表現すること―や会話での役割―人物同士の対話による関係性の変化―をこなしていて、さらにその二つの役割を内包するシーンを一つの曲にこめることができる魅力がある。

特に印象のあるシーンは、オープニング。あれほど興奮したオープニングはちょっと思い浮かばない。最初に静けさ、緊張感が高まる。そこから群衆の足踏みが一斉に始まり、いきなりのミュージカル。歌詞はささやくように始まって、だが、背景の足踏みは大音量で、嵐の前の静けさというか、期待感が高まっていく。そして、この映画を象徴する「史上最大のショー」。華々しい世界観が広がっていく。が、それは主人公の妄想。緊張感があって、クールで、豪華で、虚しい。羨ましくなる。

僕はなんといっても主人公の衣装が好きだ。いかにも胡散臭いサーカスの団長ぽくていい。それでいて夢を感じさせる豪華さとデザインだとおもう。ポスターを見たときに僕はなんだか悲しさを感じた。危うさのようなもの。主人公の顔は晴れやかで清々しいのに、全体をみると主人公の悲劇をどこか感じさせるポスターだと思う。すごい。なぜそうなのかは見当がつかない。配色なのか。

物語の中盤、自分の主催する団体のサーカスで名が売れてついに夢を叶える。ように見えたが自分を評価しない層、すなわち上流層(お金持ち)にも自分の存在を認めさせようと躍起になる。人間の欲は醜い。特に主人公のテーマとなる言葉は「本物」。彼のサーカスはフリークス(変人たち)を集めただけのバカ騒ぎで、芸術として「本物」とはいえないと、差別を受けていく。なにが「本物」なのかはよくわからないが、確かに世の中に「本物」の芸術はあるようにおもう。彼は上流に自分を認めさせようと財産をなげうって「本物」の公演を次々に開催していく。ここから彼の転落というか、悲劇は始まることになる。

「本物」は確かに強烈にかっこいいとおもう。常に憧れの的になる。ただ、バーナムのサーカスが「本物」の一つの形だとおもう。卓越した技術を披露しているわけではないし、圧倒的な存在感を示しているわけでもない。だが、人を惹きつけるなにか、本物と呼べそうななにかはあるのだとおもう。

僕も「本物」がほしい。渇望している。僕だけの唯一無二の「本物」。でもそれは誰かから見たら偽物のように見えるのかもしれないし、僕が見出していない僕の「本物」があるのかもしれない。ただ、全ての他人に認められなくてもいいのかもしれない。どこか僕の「本物」を置いておける場所、存在しても良い場所を見つけるのが最上の幸せなのかも。生きるだけで場所をとって迷惑をかける。ずっと居てもいい場所に居たいというのはなかなかない。だから、それができたらいいのに、と思う。

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