裏イザヨイ島戦争:序章

ヤドリギ村には奇妙な習慣がある。
医者が存在を知らずに往診に来ることができないほど隔絶されたこの村は、水刃式で水の極みが発言する可能性が現れた者…すなわち青色に水の色が変わったものを供物として生贄に捧げ、病気を鎮めるという謎の土着信仰があるのだ。

明(みん)という男は外部から村に移り住んだこともあり、多少の医学の心得があったため、その土着信仰に苦言を呈した。

彼が村八分にされたのはその後すぐである。

彼の息子は母の命と引き換えに生まれたことや明の子どもであることを踏まえ、村長から凶(まが)と名付けられ、忌み子として扱われた。

明はそんな凶に対し、「どんな相手でも優しさを持って接すること」を解いた。

しかし、凶はどこかその話に対し納得がいっていなかった。

彼ら親子の仕事は科学都市から送られてくる、大量のゴミを人力で片付けること。
化学薬品や廃品になった刀。それを軍手もせずに扱わされた明はゴミ山がきっかけの破傷風で死亡する。

しかし、本当の恐怖はここからだった。
凶は廃品の刀を毎日のように振っていた。そして、明が死んでからリミッターが外れたように街の手練と呼ばれる男達を辻斬りしていった。

「この世界は暴力的だ…暴力が力なら俺が収めるべきだ…違うか?」

彼は物心つく頃には父親が弱い立場にあること、この村のふざけた土着信仰がハリボテであることに気づいていたのだ。
しかし、彼はそれを咎めなかった。

自身の独学の剣術が完成するのを、その力で村を支配する日を心待ちにしていたのだ。

ある日彼は村中の大人達に拘束され、ゴミ山の上に運び出された電気椅子に拘束される。

「何か言いたいことはあるか?忌み子よ」

「ハッハッハ!俺は死なねェ…お前らに俺は殺せねぇよ…」

凶は高らかに笑う。
年端も行かぬ九歳の少年を電気椅子に大の大人数人でくくりつけ、恐怖に慄いている姿が滑稽なのだろうか。

凶は体に電気を流され、口から大量の泡を噴き出し、ズルリと椅子から崩れ落ちる。
彼の心臓は確実に一度止まった。

止まったのだ…

しかし、彼の心臓は再び動き出し、周囲の村人をことごとく斬り裂いていく。

何本も刀が折れ、その度にゴミ山を漁り、切り裂くその姿はまさに悪鬼のようだった。

村人の殆どが死んだ後、そこに佇む二十代後半ほどの女性が優しい声で凶に話しかける。

「あなたの名前を借りたいの…」

「あ?」

「私ね…ゼラニウム街ってとこで寮母になるのよ。」

「寮母が忌み子の名を借りるってのか?」

「私はメアリー。でも、こんな名前じゃ心を鬼にして極みを教えられないじゃない?私は『悪魔の聖母』になりたいの。だから借りてもいいでしょう?」

「ハッ、何が言いてぇか分からねぇ女だが名前くらい勝手に使え」

「ありがとう。またどこかで」

メアリーは一言だけ告げると去っていく。

彼女の起こす行動は、後にゼラニウム街を大きく狂わせることになる。

それから数十年。

凶は野望達成のための仲間を集め、今宵、イザヨイ島を奪い取るのだ。

イザヨイ島の近くにある広々とした港。そこにいる金髪に厳ついマスク、その下にはおびただしい傷跡や焦げ跡が見える。

この男こそ成長した凶だ。

彼は仲間たちに集合をかけるため、眼鏡に笑顔が張り付いた男に声をかけた。

「イゾウ。散らばってる残りの八人はテメェが声をかけてこい」

「集合ですか?随分待ったなぁ…」

イゾウは腕に装着している鈴のついたブレスレットを振り、チリチリと音を鳴らす。
ブレスレットは凶の体から発されている『特異な静電気』と反応し、電気信号となり仲間に集合を伝達される。

「こっちのほうが早いですよね?凶さん。」

「…行くぞ」

「行く?」

「いちいち聞くな、イゾウ。バジンのところだ」

「はは、いよいよって感じですね。バジンさんも今日は早めに店仕舞してくれるかな。でも…」

足元にいるダンボールに入れられた猫を優しく拾い上げ、ぶらんとした状態で凶に見せる。
凶は刀を抜き、青白い電流が走る刀で猫を斬ろうとするが、その猫はスルリとイゾウの手をすり抜け投げナイフで凶に応戦する。
凶は軽々とそれを掴むと、イゾウのブレスレットと同じ形の首輪を見て、軽く笑う。

「ナマッてはねぇな…リッサ。」

リッサと呼ばれた猫は紫色のツインテールに猫耳、両耳にうるさいくらいきらびやかなリボンを着けた少女に変わる。

「ニャハ☆凶は相変わらず野蛮だにゃ。リッサが死んだら不利になるのにニャー」

「あなたはこのくらいじゃ死なないでしょう?それより問題なのは…『あの二人』ですよね。」

「知るか、勝手に死ね」

「それをまとめるのがイゾウだニャー☆」

冷たく吐き捨てる凶とそれすら楽しんでいるリッサの間に挟まれたイゾウが貼り付いたような薄ら笑いから困り果てた苦笑に、そして反対側から走り出してくる花魁姿に顔半分にひどい火傷の女性を見るなり苛立った表情に、普段表情の少ないイゾウがまるで百面相のようにコロコロと顔を変える。

花魁姿の女性は袖からイゾウに毒針を放ち、イゾウはそれを躱すと、女性の頭を叩き割るように容赦なく刀を振り下ろす。
女性靴から灯油のようなものを噴射しようとした瞬間に凶が間に入り二人の戦闘を止める。

「消すぞ…殺し合いはイザヨイ島奪ってから好きにやれ。俺が作る世界ではいつでも出来る。」

「やれやれ、ホウセンさん。悲鳴がどうとか炎がどうとか、あなたとはとことん合わない。」

「何を言うでありんす。貴方のように。『たった一人の美』を追い続けることこそあちきには理解できませぬ。究極の美とは『阿鼻叫喚、苦しみ果てる瞬間の叫び』…」

恍惚とした表情で語る花魁姿の女性、ホウセンに凶は呆れたように溜息をつく。
暴力そのものは好きだがこの二人の思想は理解できないなと考えていた。

「二人共、本当に気持ち悪いニャー☆」

「敵をおもちゃとしか見てないあなたにだけは言われたくないですね。」

「久々に気が合うでありんす。悪癖猫には言われたくない。」

「何を言ってるんですか、皆さん。最も美しいのは『切られて永遠に歳を取らない髪』に決まっているでしょう?」

リッサのどこから髪か猫の皮膚なのかわからない体の一部を金髪に色白赤目の見目麗しい男性の持つ巨大なハサミが切断しょうとする。
凶は男を突き飛ばし、『何度も同じことを言わせるな』と威圧する。

「ピルス、テメェがこのタイミングで来ると話がややこしくなる。」

「失礼しました。ですが…」

見目麗しい男、ピルスは懐から髪の束を取り出し、匂いを嗅ぐ。

「やはり僕は譲れませんね…この美しさ。」

「その髪。またエタンセル王国の人間か?」

「はい。やはり母国の人間が一番母を思い出させてくれて幸せなんですよ…」

「『エタンセル王国の汚点』、大量髪切り殺人鬼のピルス…吐き気がするでありんす」

「そんな事言わないでください、貴女様が髪さえ残してくれれば僕はあなたと争う気はないので…どうですか?イゾウさん、『麗神』の髪は僕に…」

イゾウの眉がピクリと動いたことにより、ピルスは言葉を引っ込める。

争う全員を無視し、凶は大きな帆船を出そうとしている男の首をはね、船を奪うと全員に乗船を促す。

「テメェら、行くぞ。島獲りだ。」

「おいおい、待ってくれよ。ずっと僕を無視しないでくれよ、天才科学者。プランヒュドラことヒドラをさ。」

青い髪、顔と鎖骨に派手なタトゥー、柄だらけの服、異形なほど尖った腕という奇妙な出で立ちの男は自らをヒドラと名乗り、グチャグチャとグロテスクな音を立てて翼を生やし、船に乗り込む。

「何かあれば『性癖』、何かあれば『刀』、何かあれば『暴力』。話がそればっかりじゃないか〜もっと楽しい話をしよう。ドグラくんは?彼とは話が合うんだけどな〜」

「あいつは友人に会いに行くって言ってたぞ、島で合流だ。」

「やれやれ、あなたは相変わらず騒がしいですね。『あの二人』がいないのが気になりますが…」

「えっ!?あいつらいないの!?やっば!!絶対殺し合ってるって」

船はイザヨイ島へ凶達を運んでいく。



イザヨイ島は国で一番治安の悪い島だ。とあるマフィアが市長になり、まるで治外法権のように犯罪が横行し、世界一安全な船ですら大量に沈んでいる。

…というのが二年前の話。

今のイザヨイ島は莫大な金が動き、きらびやかな花火ときらびやかなネオンに囲まれた国一番の歓楽街となっていた。

この時代に明らかに不釣り合いな巨大なビル。
派手な髪色にサングラス、生臭坊主というのにふさわしい男。笑顔に扇子を持ち、和服を着た胡散臭い男。女性の遊女の格好をした美しい青髪の男。
三人はオペラグラスで港を、ガヤガヤと賑わう夜の街を交互に眺め、胡散臭い男が開けたシャンパンをワイングラスに注ぐと、軽く乾杯し、飲む。

「ハイカラ社長、ヤナギが言ってた災いってあの船なんじゃ〜ん?」

胡散臭い男、ハイカラは「せやなぁ…」と呟き、扇子を広げてパタパタと扇ぐ。

「ヒュー副社長、どないする?」

「『どないする?』も何も。俺が情報集めただろ。『無間党』、奴らはうちの島を奪おうとしてる…ナム、お前なら見えただろ?誰が乗ってた?」

女性のような容姿の男、ヒューは派手な格好をした男、ナムに尋ねる。
ナムはこの街の用心棒兼勘定役だ。
彼はおちゃらけているが、敵を見定める目とその強さは二人も恐れるほどであり、彼が敗北する=イザヨイ島の崩壊を意味する。

だからこそ破格の待遇を受けているのだ。

「うーん…なんかヘンテコなマスクした厳つい男が居た〜的な?」

「それが凶やな。」

「ありゃ?そうだっけ?んじゃ。集合?」

「集合だ。」

ナムは巨大なビルから窓を開けて飛び降り、屋根から屋根へ飛び移ると、一際明るい港の端で歌を歌う動物の骨を被った顔の見えない女性の元へ向かう。

女性は歌を歌い終えると、船を指さし、見た目からは全く想像がつかないほど軽快に喋り出す。

「ナム!久しぶりネ!用は…アレかな?」

「そ、やっぱり敵みたいなんだよね〜、君の占いは当たるよ、『歌姫』、ヤナギ」

「オブリガード!『びる』に集合かナ?みんなと会うのは久々ネ!楽しみ!」

嬉しそうに動物の骨を被った女性、ヤナギがぴょんぴょんと飛び跳ねる傍ら、花火を打ち上げているドレッドヘアの体格のいい男は面倒臭そうに赤色の花火を打ち上げる。

「ドリックちゃ〜ん。居るなら言ってよ〜」

「そのうざったい絡みをやめろ。ヤナギ、戦争だからな?わかってるのか?」

ドレッドヘアの男、ドリックはつれない返事で黙々と次の花火を打ち上げる。

「赤色の花火は『集合』やる気満々なんでしょ?」

「私、ドリックの花火好きネ。一緒に行コ」

「わかった!わかったから離せ!」

グイグイと袖を引っ張るヤナギに根負けし、盛大に大きな花火を打ち上げると、ビルへ歩を進める。

途中、全ての戸が閉められ、『太陽がと特殊な電波を受けている』様子の模様が大量に描かれたあまり趣味の良くない家を通る。
ナムはその家の扉を数度叩くと、瘴気のようなものが三人を包み、扉から『入れ』の合図らしいノックが返ってくる。

ナムは家に入るなり、その模様が全身に書かれた服を羽織った女性に真っ黒な布を被せ、耳元で囁く。

「ヘリオスちゃん、集合〜。ホントは君には夜も入ってほしいんだよ?人気の遊女なんだからさ。」

「それは出来ん。月は有害な電波を放っている…」

「あのな、本来そんな事「月とは不思議な引力があるからネ。敵さんももしかしたら月に引かれたのかも…」

「今宵の敵は太陽を脅かすものなのか…ナム、私も参加しよう。太陽を脅かすものは淘汰せねば…」

『関係ねぇと思うんだが…』

模様の入った服を着た女性、ヘリオスは月に対する異常な敵対心によりすでに臨戦態勢となった。
ドリックはそんなヘリオスに対し、呆れ気味に心の中でツッコむ。

「ナムさま〜!しゃれらもごいっしょしますよ!なんでさそってくれないんですか?」

「し、しゃれら!?いつからここに!?」

背の高いナムに抱きつくように、刀から輸血チューブのようなものが伸びたしゃれらと名乗る女性が飛びつく。

「しゃれらはナム様のためならなんでもしますから♡しゃれらをつかってください」

ドクドクとチューブがら血が供給される音がなりながらしゃれらは目を♡にし、ナムに延々と話し続ける。
他の仲間はまるで興味がない様子だ。

「しゃれら、せっかく助かった命なんだ。わざわざ戦いで散らせることはねぇんだぞ?」

「しゃれらはナムさまにいのちをすくわれたときからナムさまのものです。」

「太陽を取り戻す。過酷な戦いになるぞ。」

「たいよう…?」

「ま、まぁまぁ…とにかくビル行くよ〜」

噛み合わない会話に少し戸惑いながらナムは全員をビルへと案内していく。
ホテルかのような豪勢な玄関には二対のロボット。いや、一人は全身を機械、パワードスーツとでも言うべきか。それに身を包んだ物々しい女性。
女性は「社長から話は聞いてるぜ」と陽気に言い放ち、手元のボタンを押し、大きな鎌を持ったロボットを起動させる。

「あたしの極秘兵器、AGNI(アグニ)も準備完了だぜ。」

AGNIと呼ばれたロボットは起動とともに。機械とは思えないほど流暢に、かつ、クールな女性の声で話し始める。

「アルビレオ、その人がナム先輩?よろしくね。社長と副社長にも挨拶をしたいのだけど…」

全身機械の女性、アルビレオは「じゃ、みんな上行こうか」とナムを差し置いて仕切り始め、科学都市の技術を逆輸入した上下に動く機械を使い、ハイカラとヒューが待つ最上階へと向かう。

「お疲れさん。よう来てくれたわ。ただなぁ…一人ほど足らんねん。副社長の情報によると敵は10人らしいねん。」

「って事は仲間は足りないのかね…?っと!」

おそらく凶のものと思われる大砲の奇襲攻撃をナムが錫杖で弾き飛ばす。

ヒューはナムを信頼しているのか、砲撃を見ることもなく「心配するな」と全員のグラスにワインを注ぎながら話を続ける。

「もう一人は政治的な面で我々に力を貸してくれる。開戦までには来るだろう。大丈夫、我々は強い。『イザヨイカンパニー社長』ハイカラ、『兵士長』ナム、『花火師』ドリック、『歌姫』ヤナギ、『遊女』ヘリオス、『輸血医師』しゃれら、『機械技師』アルビレオ、『最終兵器』AGNI、そして俺。『イザヨイカンパニー副社長』ヒュー。我々は負けない。」

「さすが、決める時は決めるわぁ…副社長。ほな、みんなグラスを天に。乾杯!!」

ハイカラに続くように全員がシャンパンを天に掲げる。
戦争の無事を祈るように…


「死ねや女男オオオオ!!」

「テメェが死ね男女!!!」

耳をつんざくような怒号と爆撃、打撃の衝撃音が港に着いた凶達を襲う。

ヒドラは「まただね…」と言いながら巻き込まれるのが嫌なのか船から降りようとしない。

一人は異常に声がでかい女顔に筋肉質の男。もう一人は筋肉質であることは同じだが、女性でありながら男顔だ。
互いが互いに対象的な存在が気に入らないらしい。

「凶さん。どうします?燃え尽きちゃいますよ?二人共」

「リッサは一抜けだニャー」

「みてください、ザクロさんとリキさんの髪の毛…とても良い香りですよ…」

「ああ…どちらが死んで悲鳴をあげるか楽しみでありんす。なるべく苦しんで死んでくれなんし…」

「イゾウ、止めろ。」

「また僕ですか…?困ったなぁ…」

イゾウは二人の間に入り、刀も持たず二人を制圧する。

「閃花無刀流『袋雪之下(フクロユキノシタ)』」

脚が浮いた瞬間をすくい上げられた二人はそのまま地面に押さえつけられ、制圧される。

「お久しぶりです。ザクロさん、リキさん」

女性のような顔立ちの声のでかい男、ザクロと男性的な筋骨隆々のボロボロの服を着た女、リキはイゾウに鎮圧され少し落ち着いたのか、何事もなかったかのように凶に挨拶をする。

「テメェらの好戦的なところは変態共より嫌いじゃねぇ。それは島の連中に向けろ。殺し合いは後でやれ。」

「なんだぁ?俺様に釣り合う相手がいんのかぁ!!」

「うるせえンだよザクロ!声帯俺が引き千切ってやろうかァ?」

「ああ?」

「黙れ。食堂へ行くぞ。」

二人の喧嘩をどうにか鎮圧させ、凶が辿り着いたのはとある食堂。そこは親子連れや一仕事終えた夜の店の人々で賑わうイザヨイ島には似つかわしくないほどの一般的な食堂。

「おじちゃん!またね!!」

「おう!美味しかったか?」

「うん!」

「はい!ラストオーダー終わりだよ!今日は店仕舞だ!」

一通り食事を提供させた主人は、無人の食堂に凶を呼ぶ。

「ご注文は…?」

「ふざけてねぇで座れ、バジン。すぐに着替えろ」

「集合か…今日やるんだな?凶」

食堂の気の良い主人だった男、バジンの目つきは武人のそれになり、調理道具が大量に入った扉を裏返し、牙の着いた毛皮の頭巾と戦闘服を取り出す。
そこへ…

「Boo!お久しぶり!Mr.マガ!今日はどんな武器をお求めで?ワーオ!みんないる!覚えてる!武器商人のドグラだヨ!ん〜これは大戦争になりそうだ!Meは今までこんなに死のニオイを感じたことはないヨ!Mrバジンも武器は研いでるんだろ?」

「ドグラ、来るなりゴチャゴチャ喋るな、座れ。」

全身縫い目だらけの体に紫の前髪、死者が羽織るような服に身を包んだ男、ドグラは陽気に全員に声を掛ける。

「お!ドグラくん。会いたかったよ君とは語りたいことがたくさんある。同だい?この力、また気味に近づいたと思わないか?」

「Mr.ヒドラ!体は大切にしないと死者ににらまれちゃうヨ。でも、君のそういうとこは嫌いじゃない」

「んじゃ…揃ったついでに。」

バジンは余り物で適当な夕飯を作り、ドグラの持ち込んだ頭蓋骨型の趣味の悪いコップに日本酒を注ぐ。

「ハッ!湿っぽいなァ!派手に行こうぜ派手に!」

「たまにはいいこと言うじゃねぇかザクロ!」

「落ち着いてくださ…」

「あのビルだな?」

「ああ!」

「「発射!!」」

バジンの食堂に置かれていた大砲を勝手に使い、ナム達のビルめがけてザクロが砲撃を放ち、リキはその腕力で遠投のようにビルに向けて大砲の弾をなげつける。
二つの砲撃は誰かに弾かれ、あらぬ方向で爆裂する。

「ハッハァ!こりゃ開戦が楽しみだァ!!なァ!『無間党党首』凶、『魔剣』イゾウ、『イザヨイの裏切者』バジン、『悪魔猫』リッサ、『死刑囚』ヒドラ、『狂気の花魁』ホウセン、『エタンセル王国の汚点』ピルス、『喧嘩屋』リキ、『死の武器商人』ドグラ、そして俺様『爆弾魔』ザクロ!!億に一つも負けはねェ!明日の朝!開戦だぁ!!」

ザクロの家がびりびりと揺れるかのような声とともに、凶達のささやかながら狂気の宴が開かれる。

ー開戦は、明日ー


かつてはとんでもない街だったここ、ゼラニウム街は今や国有数の温泉街となっている。

劇的な変化を遂げ、武器を捨ててなおこの街に誰も戦争を仕掛けないのは、緑髪を片側だけ伸ばし三つ編みにした奇妙な髪型の男、筆頭極師の『ラミア』を始め、長身に白目の部分が黒目の吸血鬼『マクベス』、メイド服を来た可愛らしい女性『リピル』、ファーコートを着た基本的に眠っている男『セキア』、丸眼鏡の細身の美女『メア』の『極座の四神』による抑止力が強いだろう。

そんな街の温泉を堪能し、饅頭を頬張り、黒い卵を抱えて筆頭極師邸に向かう烏帽子をかぶった明らかに見た目の浮いた一人の男性。

彼は今日四神を集め、重要な話をするのだ。

「ゼラニウム公、きちんと鍵はかけておくべきです。」

「僕の極みを知人の家のように軽々と突破できるのは君くらいだよ。で?どうしたの?現世直々に来るなんてただ事じゃないね。イザヨイ島の話かな?」

烏帽子の男、現世は「話が早い」とラミアの対面に正座し、自信が住まう和の都の菓子折りを手渡す。

「マクベス殿、貴方の知り合いが尋ねてきてましたね、戦争に参加するあの…」

「ああ、少し色々ね。で?それ言うために来たんじゃないでしょ?」

「少々長い話になりますが…凶殿が目指す世界は『暴力が法の世界』……すなわち、無法も同然の世です。ゼラニウム公の友人殿に調べていただいた情勢によれば、最悪の場合、我が都、ゼラニウム街…あるいはそれ以上の範囲に『無法』が広がるでしょう。都の立場といたしましては、こ度の事変でイザヨイ島が財の周り場以上となるのは近海一帯の懸念となります。そのために、都は手を講じることになるでしょう」

現世はお茶をゆっくりとすすり、凶の危険性をラミア達に語る。
凶が作る世界では世界を巻き込んだ大戦争になるのだと、そうなれば多くの死者が出てしまう、と。

「それ…アンタが行くほどなの?」

「凶は長い間息を潜めていた…わたくしより強ければ」

「君より強いなんて事ある?」

「わかりませぬ、あればわたくしは死ぬでしょう。その時は四神とゼラニウム公に任せまする。争いの種をばら撒くわけにはいきませぬので…」

「では…」と現世は五人の返答を聞くことなく、ゼラニウム街を去っていく。

彼はこのままイザヨイ島へ向かうのだろう。

「ラミアくん、どうするの?わたし達もやらなきゃならないかもしれないよ?」

「眠って…られないね…」

「ラミア様…どうなさいますか。大丈夫、貴方はわたくしが守ります。」

「ラミアちゃん。準備しておかない?」

「…」

ラミアは『相談役』としてゼラニウム街に貢献する自身の親友の家で見た光景を思い出していた。

「お!野菜スープじゃんよ!久々だ!」

「そ!食べてね〜オルキスちゃん。」

「お母様、ありがとうございます。どうしてもこの味ができなくて…」

「これはね、トマトをベースにして…「あの…おかわり…」

「ダメだぁ!!金払えよじゃあ!!」

「なんでなんよ…」

「お母様の野菜スープは有料でもいいほどだぞ、七福。」

「いや、お前おかわりしてるし…今日のはさ…ちょっと塩味が足りな「うるせぇよお前!!うめーで終わらせろよ!」

「いやいやいや!おかしくね!?」

「うるさいぞ、オルフェとイザベラが起きてしまう。」

ラミアが見たのは親友とその妻、そしてその妻の腕ですやすやと眠る、幼い息子と娘。
彼は覚悟を決める。

「…現世が負けた時は…僕らがやろう…準備だけはしておかないと…」

「筆頭極師らしくなったねぇ…『やっと』」

「じゃ…枕でも…変えてもらおうかな…」

「ラミア様、西に来た敵は誰一人活かしません。お任せを。」

「ま、アタシは知り合いもいるし、『同窓会』かしら?」


すっかり灯台の灯りが消えたイザヨイ島に『歩いて』やってきた現世は、海の上を歩く奇妙な妖怪のように見られ、灯台守の男達の一斉射撃を受ける。

「手荒い歓迎でございますな…」

銃弾は空間に固定されたように止まり、ポトポトと虚しく地面に落ちる。

「『びる』というのはあちらの大きな建物で御座いますか?ヒュー殿より地図をいただきまして…」

「ふ、副社長のお客様!!こ、これは失礼いたしました!すぐにご案内を!!こちらのアルビレオ様が作られた車に…」

「『くるま』…これはこれは。科学都市でこのようなものが走っておりましたが…なかなかに素早い…」

現世は車でナム達のビルへと案内され、空席に座らされる。

「ほ、ほんまに言うてる…?」

「ちょっ…冗談キツイぜ、副社長ちゃん。」

「あくまで協力関係だ。」

「き、協力関係って…あたしこの人科学都市で見たことあるけどさ…」

「和の都…現世…なんて膨大なデータ…」

「ナム様、このひとだれですか…?」

「ジャパニーズオンミョージ!!よろしくネ!」

「日出ずる都の…現世…様…」

「まさか最後がお前とはな…」

「ヒュー殿…いや、副社長殿の言う通り、わたくしはあくまで協力関係。あまりお気になさらず…明日に備えましょう。適度な飲酒、適度な食事はいいですが、しすぎると差し支えます。こちら、和の都の菓子折りです。皆様で…」

ゼラニウム街でしたように現世は菓子折りを全員に配り、ポカンとする9人の緊張をほぐす。

互いに10人の精鋭が集まった。

ー決戦は、明日ー

裏イザヨイ島戦争:序章
終わり


戦争参加者
『』…ナム軍は役職名、凶軍は通り名

ナム軍
『イザヨイカンパニー社長』ハイカラ
『イザヨイカンパニー副社長』ヒュー
『兵士長』ナム
『花火師』ドリック
『歌姫』ヤナギ
『遊女』ヘリオス
『輸血医師』しゃれら
『機械技師』アルビレオ
『最終兵器』AGNI
『和の都・神祇官・正七位ノ上相』現世

凶軍
『無間党党首』凶
『魔剣』イゾウ
『イザヨイの裏切者』バジン
『悪魔猫』リッサ
『死刑囚』ヒドラ
『狂気の花魁』ホウセン
『エタンセル王国の汚点』ピルス
『喧嘩屋』リキ
『爆弾魔』ザクロ
『死の武器商人』ドグラ

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