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模写の風景 画家の心 第23回「佐伯祐三 人形 1925年作」



  初めてフランスに赴いたとき、フォービズムの巨匠ヴラマンクから大いにくさされ、傷心の内に日本に帰国したが、翌年、早くも心機一転し、再度フランスに渡る。

 佐伯家族が二度目の渡仏したその日に古物商から一対の人形を1000フランで購入した。現在の価値に直すと140万円くらい。大金だ。

 この人形を購入するのに所持金のすべてを使いはたしそうで、次の日からの生活費にも困ったという。

 ちなみに男の人形はシルクハットに燕尾服だったそうだ。

 海千山千の古物商から見れば佐伯は、東の果ての外国から来た田舎者、きっとぼられたに違いないが、佐伯にはそれほどの魅力を感じる何かがあったのだろう。

 女の人形は、赤い大きな飾り羽根の付いた帽子をかぶり、赤のロングドレスを着、大きな目で、少し流し目をしている。その瞳が佐伯の心を一瞬にして射貫いたのかもしれない。
 
 1928年に「ロシアの少女」を描いたが、この少女像も大きな目をしている。佐伯は日本的なうりざね顔で引き目かぎ鼻の女性より、目鼻立ちのはっきりとした女性を好んだのかもしれない。
 
ちなみに正子夫人は、やや面長で目鼻立ちのはっきりとした女性だ。


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