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模写の風景 画家の心 第11回「岡鹿之助 三色菫 1972年作」

 岡鹿之助はすみれの花が大好きなようで、多くの絵にすみれが登場してくる。それらの中でもこのすみれが一番いいと思う(残念ながら画像は一部のみ)。
 岡の花の絵はほぼすべての花が、わたしを見てとばかりに正面を向いている。ギュビズム的表現といえるのだろうが、そうであってもピカソやブッラクの絵とは違い、不思議と不自然さを感じさせない。そういう意味では不思議な絵だ。
 岡の絵はかすれたようなタッチの絵が多い。スーラやシニャックのような点描画ではないのだが、画布や画紙表面の凹凸や、筆を使って絵具を置く圧力や絵の具の量を微妙に変化させているそうだ。それらのテクニックを駆使したのが、この「三色菫」だ。
 岡は言う。「行き詰ったとき、布に絵具を落としていく。やがて何か形を成していく。存外こりをさらりとほごしてくれる」そうだ。
 何とはなしにキャンバスに色を落としていく。やがて形が現れ、それが三色すみれへと形が整えられ、この作品が生まれたとしたら、岡のしてやったりの顔が思い浮かばれ、それだけで楽しくなってくるではないか。

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