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模写の風景 画家の心 第32回「東山魁夷 秋翳 1958年」

暑かった夏も終焉を迎えたのかやっと秋らしくなった。
秋になると何故か物悲しくなり、旅に出たくなる。全山まっ赤に染める紅葉を見て、日本はいいなぁ、と四季折々に想いをはせる。

先日国連のグテーレス事務総長が今の気象状況を、「沸騰する地球」と表現した。
世界中で猛暑が続き、山火事も頻発した。ハワイのマウイ島での山火事は死者数97人、カナダの森林火災では15万人以上の人びとが避難した。

まさしく沸騰する地球である。それを冷やすためか、世界中で恐ろしいほどの雨が降った。1月に南スーダン、2月東南アフリカのサイクロン、5月ミャンマーを襲ったカテゴリー5のサイクロン、イタリアでは半年分に相当する雨が5月のひと月の間に降った。日本では6月に台風6号の被害で死傷者49名を出した。7月、島根、九州北部、秋田で記録的大雨…などなど、十指に余るほどだ。

気象学者は言う。
数年以内に北極海の氷や高山にある氷河が消滅する。日本では「四季」がなくなり、夏と冬の「二期」だけになる。

春のお花見や秋の紅葉狩りは、仮想空間のアバターとして、晴れ渡る野の中で楽しむことになるのだろうか?

これ以上は限界だという時点を、「ティッピングポイント」というそうだが、この点を今年超えたと考える学者もでてきた。

ちなみに、画題の「秋翳(しゅうえい)」とは、やわらかな曇り空に、ほっくりと浮かぶ紅葉の山を意味するそうだ。だがわたしの秋翳は、未来を先取りしたのか「火炎山」となった。

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