ファブラボがつくりだす未来
迎えました、2020年。
武蔵野美術大学大学院に入学して、9ヶ月が経過しました。早い。
大学院生、NPOの代表、小売業、大学の非常勤講師、介護・・・と、もはや自分でも何をしているのかよくわからない状況。私はこの9ヶ月間、何を学んできたのだろうと焦燥感にかられていました。大量のインプットとアウトプットがあったけれど、すべてが中途半端な気がして。
でも、一つひとつは中途半端でも、それが重なって面となっていました。これまでより思考は深く、視座は高くなった・・・と思います(自分比ですけどね)。
このnoteも課題の一つ。
ある分野における第一人者がゲスト講師に来てくださる授業で、毎回話を聞いて考えたことをnoteにまとめるのが課題です。16回のうち、2回欠席なので14回分書かなければなりません。残りあと9本。締め切りは1月6日です。がんばるしかありません。笑
前置きが長くなりましたが、今回のゲストは慶應大学環境情報学部教授の田中浩也さん。国内初・アジア初のファブラボを鎌倉に立ち上げた方です。
ファブラボについては、第1回の田村さんの記事でも紹介しましたが、Fablab Japan Networkでは、Fablabを次のように定義しています。
ファブラボは、デジタルからアナログまでの多様な工作機械を備えた、実験的な市民工房のネットワークです。個人による自由なものづくりの可能性を拡げ、「自分たちの使うものを、使う人自身がつくる文化」を醸成することを目指しています。
田中さんは2005年に日本で初めて、自宅で3Dプリンタを使い始めたそうです。オープンソースの3Dプリンタ(RepRapプロジェクト)を複製して3Dプリンタを作っていたとか。話を聞いて、オープンソースの3Dプリンタが存在することに驚きました。誰もが手に入れられるというオープンソースの思想は、ファブラボの考え方につながっているのだと思います。
https://reprap.org/wiki/About/ja
現在、ファブラボは世界に3000ヶ所あり、公民館のような存在になっています。多様な人々が「つくる」ことを目的に集まり、デジタル工作機をシェアし、助け合い、地域の問題を地域で解決しています。
インドのファブラボで受けた衝撃
田中さんが日本でファブラボを立ち上げる前に訪れたのが、インドのファブラボ。200人くらい村で、1時間に1回くらいは停電し、水はちょっと茶色い、昭和10年代の日本と同じくらいの生活インフラしかない場所でした。そこにレーザーカッターなどの工作機があり、人々が生活に必要なものを自給自足で作っていた様子を見て、衝撃を受けたそうです。それが、日本でのファブラボ開設につながります。そして、生まれたのがファブラボ鎌倉です。
ファブラボ鎌倉には、小学生からお年寄りまでさまざまな人が集まっています。定年退職したエンジニアが三面図の書き方を教え始めたり、カレー屋さんがご飯の型を作ったり、花屋さんが花瓶作ったり、小学生が自由研究したり。多世代の連結が起き、教えたり、教えられたりと、参加者の成長とともに関わり方が変化しているのが面白いと話してくれました。
もっとファブラボを楽しもう
日本ではお金を出せば、何でも手に入ります。しかも安く。それが消費社会を加速させています。
高校生の頃はお金はないけれど時間はたっぷりあったから、自分で服やバッグを作ったり、プレゼントに手袋を編んだり、ものづくりをする機会はたくさんありました。当時の私にとっては、作ることが最も合理的だったのです。
一方で、今は、お金で手に入れるほうが合理的。お金はないけど時間の方がもっとない。暮らしの中で工夫をする余裕もないのです。マンションも既成のサイズだから、既製品の家具がぴったり。
でも、それが楽しいかどうかは別の話です。
自分で工夫して考えて作るのは、とても楽しい。そしてその創意工夫は、誰もが作り手となりうる社会において、必須のスキルになるのかもしれません。
いま現在は多くの人が同意しないが、未来になって明らかになる大切な真実とは何か?
さて、授業の冒頭に、田中さんから「いま現在は多くの人が同意しないが、未来になって明らかになる大切な真実とは何か?」という問いが投げかけられました。これは「30年後にはすべてブラウザベースになる」と予測した、研究者の江渡浩一郎さんが授業で出された問いだそうです。
ファブラボが示唆する世界は、どこにいても孤立化せず、格差なく、自分の暮らしたい生活が手に入る、そんな世界のように思えます。
あなたは30年後、なにが真実であってほしいと思いますか?