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デザイナーとはどうあるべきか

武蔵野美術大学大学院 クリエイティブリーダーシップ特論、最後のゲストは家具デザイナーの藤森泰司さん。家具だけでなくスペースのデザイン、地域材を使った取り組みまで活動の幅を広げています。

藤森さんと椅子との出会いは、ハンス・J・ウェグナー(Hans J. Wegner)のTHE BULL CHAIR。道具でもあり、彫刻でもある、その曲線で描かれている姿に魅せられたそうです。

椅子の概念を疑ってみる

まずは、藤森さんの代表作をいくつか紹介したいと思います。

Fit http://www.taiji-fujimori.com/ja/furniture/fit/

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彫刻家Brancusiが作ったトルソーが好きで、三次元的なフォルムでデザインした椅子。ソファや椅子というアイテムにおさまってないけど、みんなが使いたくなるものを目指したそう。

DILL /カッシーナ CASSINA
http://www.taiji-fujimori.com/ja/furniture/dill/

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コンペで選ばれた作品。仕様だけを意識してデザインしたつもりだったけれど、藤森さんらしいねと言われて・・・自分の表現を意識せずとも、にじみでるものがある。そう認識してからは快進撃だったとか。

この作品では、まず木で何ができるからと考え、薄いベニアを張り合わせて木に継ぎ目がなくなる作り方をしています。フラッシュ構造(張り合わせてるから、中が空洞。安いものの代名詞だけど)なので、とても軽い。逆に軽いものが重くなったら?と考えたらいろんなことができるよね、と話してくださいました。

地域産材で自分で組み立てるつくえ

ひのき、すぎの一大産地、奈良県吉野町。

地元産の木材を使って机を作りたい。作って終わりではなく、子供達にも参加してもらえるようにしたいという地元からのリクエストからプロジェクトがスタートしました。

パーツを用意し、地元の大工さんに教わりながら子どもたちが机を組み立てていく。自分で作った机を3年間使い、卒業時には天板を外して家に持って帰って使うという仕組みです。

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地元の木材をつかい、地元の大工さんも関わる。つまり、地元に産業が育つということ。それだけでなく、子どもたちが地域の産業を理解し、愛着を持つことにつながります。家具が家具を超え、地域の子どもたちのシビックプライドを育む存在となっていました。

リ・デザインってなんだろう

好きな家具を見つけたら、先ずは実測して好きだと思った理由を探るという藤森さん。構造なのか、素材なのか、なんなのかを探り、自分のデザインに生かしていくそうです。部品を分解して組み立て直すということもするとか。リ・デザインについて、藤森さんはこう考えています。

リ・デザインとは、過去の形式を表面的に模倣することではない。
作られた時代の感受性を今の視点を追体験し、新たな形として発見すること
つまり、警鐘と進化のプロセスそのものなのである。

その対象を深く理解しなければ、リ・デザインすることはできない。それは家具に留まる話ではありません。地場産の商品をリ・デザインするとき、歴史的背景や文化から探ることで新たな形が見えてくる・・・地域文化商社「うなぎの寝床」代表の白水さんもそんな話をしていたなあと思い出しました。

「もの」をつくるとき、その「もの」が持つ歴史や意味を探り、その「もの」の機能だけでなく、その「もの」がどのように人々や環境に影響を与えるのかを考える。デザイナーの領域は好むと好まざるとにかかわらず、広がってきているのです。

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