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男性更年期、味が分からない、風邪、床ずれには「亜鉛」

◆人体には亜鉛が必要

近年、若い人達を中心に、食べ物の味が分からない人が増えていると言われます。
無理なダイエットやファーストフードなどによる、亜鉛欠乏が原因の1つ考えられています。
そもそも「亜鉛」とは、なんでしょうか。

亜鉛は金属の一種で、人体にとって必要なものです。
人体に金属が必要と聞くと、驚くかもしれません。
人体に必要な主な金属は、多い順に鉄、亜鉛、マンガン、銅です。

鉄は赤血球の材料であり、不足すると貧血になります。
では、亜鉛はどんな役割をしているのでしょうか。

◆男性更年期障害

亜鉛不足はテストステロンの低下につながり、
男性更年期障害の原因となります。

また、亜鉛は精液にも含まれており、精液量にも関係しています。
男性不妊症の人は亜鉛濃度が低い傾向があり、
亜鉛の補充療法で精液量、精子の運動率が増えます。

◆味

人が味を感じることができるのは、舌の味蕾という1mmの30分の1の大きさの器官によります。
味蕾には味蕾細胞があり、甘味(あまい)、塩味(からい)、うま味(うまい)、酸味(すっぱい)、苦味(にがい)の5つの味をきき分ける働きがあります。
なじみのないのが「うま味」ですが、昆布やシイタケの味が「うま味」です。
日本食は「だし」が重要であり、「うま味」の文化と言えましょう。

亜鉛が不足すると、味蕾細胞を作ることができないため、味が分からなくなります。
「おいし~い」が分からなくなったら、人生の楽しみが半減するだけでなく、食欲がなくなり栄養失調になるかもしれません。

◆体の成長

亜鉛は体が成長するのに使われます。
亜鉛が欠乏すると「小人症」といい、
著しく身長が低くくなることがあります。
サッカーのアルゼンチン代表のメッシは、小人症だったと言われています。

◆免疫を高める

風邪をひいても、亜鉛が十分にとれていれば早く治ります。
風邪は薬で治るのではありません。
風邪の原因はウイルスですが、ウイルスは自分の免疫の力で殺すしかありません。
その免疫を高めてくれるのが亜鉛です。

◆傷を治す

加齢により、亜鉛の胃からの吸収が悪くなり、亜鉛不足になります。
傷を治すにはコラーゲンが必要ですが、
亜鉛が不足するとコラーゲンが十分にできません。
高齢者の床ずれなどの傷は治りにくいですが、
亜鉛をとると治る速度がアップするのを経験します。

その他、亜鉛不足で、慢性下痢、薄毛、乾燥肌、うつなど気分障害になることがあると言われています。

◆亜鉛の補充療法

亜鉛が不足しているかどうかは、血液検査で調べることができます。
正常は80~130µg/dlですが、日常診療の経験によると、4人に3人が亜鉛不足です。

亜鉛を増やすには、どんな食事をすればよいのでしょうか。
牡蠣(かき)、ほたて、うなぎ、レバー、卵黄、納豆、ナッツ類、チーズなどに多く含まれています。

亜鉛不足の人が、食事だけでまかなうのは困難であり、
サプリメントの助けを借りる必要があります。
通常のサプリメントでは1日12~14mg程度ですが、
この量では不十分であり、30~50mgは必要と思われます。

亜鉛をとりすぎると気持ちが悪くなったり、下痢をすることがあるので、
医療機関で検査をしながらだと安心です。

参考文献
1)堀江重郎:『LOH症候群』,角川新書,2021

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