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〔介護を学ぶ17〕「ありがとう」には 生きる力がある

早苗さん(73歳)は、脳卒中の夫(75歳)の介護をしています。

介護者の大変さが注目されがちですが、
今回は介護される側(要介護者)の心理にせまりたいと思います。

◆「働く」は、はたを楽にする

「夫」は、その昔、社会と家族を支えてきました。
「ありがとう」を言われてきました。

人は「ありがとう」と感謝されることを欲しています。
「働く」の語源は、「はたを楽にする」と言われます。
周りの人を楽にして、「ありがとう」と喜ばれることが、
「働く」ことのだいご味でしょう。


一家の大黒柱として活躍してきた人の価値観は、
「社会に貢献する」「家庭を支える」でしょう。

老いや病により、介護される身になるとどうなるでしょうか。

◆要介護は、はたを苦しめる?

介護される身になると、逆に家族に支えてもらわなければなりません。
社会から支援を受けなければなりません。
それ屈辱と感じる人は、少なくないでしょう。

20代の社員を「ダメじゃないか」と叱ってきた人が、
20代の介護職員から「ダメですよ」と注意される立場になります。

みじめに感じても、体が思うように動かないのでどうしようもありません。
怒りをぶつけると、「わがままな人」とレッテルを貼られるので、
それもできません。

「周りを楽にしてきた人生」が、
「周りに迷惑をかける人生」になってしまった。
わが身に起きた余りの環境の変化に、適応できない人もあるでしょう。

  私は家族や社会に必要のない人間なのでは
  私は迷惑な存在であり、お荷物なのでは


底の知れない無力感で苦しむこともあるでしょう。

◆「ありがとう」を伝えよう

支えてきた人ほど、支えられるのに慣れていないのかもしれません。
「すごい」「さすが」と言われてきた人ほど、
「ダメですよ」と言われることに耐えられないのでしょう。

介護される人の苦しみの一つは、「必要とされない苦しみ」でしょう。

要介護者は「ありがとう」に飢えています。
「ありがとう」を見つけて、言葉をかけてゆきましょう。

「デイやショートに行ってくれてありがとう。お陰で習い事ができるわ」
「話を聞いてくれてありがとう」
「起きてくれてありがとう。寝てくれてありがとう」
「生きてくれててありがとう」

言葉には力があります。
「ありがとう」という言葉には、
人を「生きよう」と元気にする力があるのではないでしょうか。

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