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「年のせい」でなく「認知症のせい」?

◆認知症の前段階で気づこう

認知症になりたい人は、1人もいないでしょう。
認知症予防には、軽度認知障害(MCI)に気づくことが不可欠です。

MCIは、認知症の前の段階であり、
MCIを通らずして認知症になる人はいません。

専門家による認知症のテスト結果は、正常、MCI、軽度認知症、中等度認知症、重度認知症の5段階評価です。

認知症は、年月をかけて徐々に進行するため、
それに気づくことは難しいといわれます。

毎日、鏡で顔を見ていますが、少しずつ老化していくため、
自覚が困難です。
昔の写真をみて、「昔は若かったな。お肌がつるつるだ」と老化に気づきます。

同じ原理で、認知症を早期に気づくことは、きわめて難しいのです。
どうすれば、自分がMCIだと自覚できるのでしょうか。

鳥取大学の浦上克哉教授の、「MCIの人に見られる12の変化」を見てみましょう。
12項目のうち、3つ以上当てはまれば、MCIの疑いが強いので、
専門医への受診が勧められています。

◆記憶力の低下

認知症の最も大きな特徴が「もの忘れ」です。
加齢による「もの忘れ」との区別が難しいです。

①ゴミの出し忘れや、曜日を間違えることが増えた。
 ゴミを出す日は曜日で覚えています。
 曜日の感覚があやふやになると、出し忘れたり、曜日を間違えて持って行ったりします。

②洗濯をしても干すのを忘れしまう。
 半日や1日たって、洗濯機に脱水の終わった洗濯物を発見する。
 洗濯したことを忘れてしまったからです。

③同じものを買ってしまう失敗が増えた。
 買ってきたショウガを冷蔵庫にしまおうとすると、2つあるのに気づく。
 以前、買ったのを忘れていたためです。

④同じことを何回も話すことが増えたと言われる。
 誰に何の話をしたのか、記憶があいまいになってくるためです。
 1回の会話中に、同じことを何度も言うこともあります。
 話をしながら、このことを、さっき言ったかどうか、あやふやになってくるためです。

これらは「年のせい」で済まされるでしょうか。
40~50代のころ、どれだけ、こんなことがあったでしょうか。

◆意欲の低下

認知症は「もの忘れ」だけではありません。
意欲が低下してきます。

「情熱」は若者の特権です。
ライバルに勝つぞ! テストで、運動で。
今度の日曜日は、友達と映画館へ、食事へ行きたい。
好きな彼氏を、彼女をゲットするぞ!
あの服、ダッサイ。流行に遅れたくない。
将来は学校の先生になりたい。看護師になりたい。

若いころは意欲に燃えています。
認知症になると、情熱が失われがちです。

⑤外出するのが面倒になる。
⑥外出時の服装に気を使わなくなった。
⑦長時間会話すると疲れる。おしゃべりが楽しくない。
⑧入浴がおっくうになった。
⑨手の込んだ料理を作らなくなった。

「〇〇したい!」という意欲がなくなり、多くのことが「おっくう」で、「面倒」で、どうでもよくなります。

◆判断力の低下

⑩小銭での支払いが面倒で、お札で支払うことが多くなった。
 367円は、100円玉が何枚で、50円玉が何枚、10円玉何枚、5円玉何枚、1円玉何枚か。
 レジで頭が回転せず、千円札を出してしまいます。

⑪味つけが変わったと言われる。
 調味料の微妙な匙加減ができなくなり、料理の味つけが変わってしまいます。

⑫車を擦ることが増えた。
 空間認識能力が低下するため、車庫から車を出すとき、横を擦ったり、バックで止めようとして、壁にぶつけたりします。

◆年のせいでは済まされない

上記12項目のうち、3つ以上当てはまる場合、
専門外来の門をたたきましょう。

いずれも、若いころは滅多になかったことばかりです。

加齢とともに顔にしわが増えるように、
少しずつ、今までなかったことが身の上に起きてきます。
「年のせい」でなく、「認知症のせい」かもしれません。

参考文献
青柳由則:『認知症は早期発見で予防できる』, 文藝春秋,2016

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