皮膚がんは、日焼け止めで予防しよう
◆最も多い「皮膚がん」は?
「日光角化症」は、皮膚がんの「前がん病変」です。
「前がん病変」とは、放っておくと「がん」になるかもしれない皮膚病のことです。
「日光角化症」は、よく見かける病気であり、
若い頃から日光に当たってきた高齢者の顔には茶飯事です。
先日も、70代の方の手の甲の5ミリ程度のシミを検査したら、
日光角化症でした。
◆原因は紫外線
日光角化症の原因は紫外線です。
皮膚の表面を「表皮」といい、リンゴの皮ほどの厚さです。
「表皮」は5~10層の細胞が積み重なってできていますが、
その最下層を基底層といい、基底細胞からなっています。
基底細胞が分裂して表皮が作られています。
この基底細胞の核に紫外線が当たると、DNAがダメージを受けます。
DNAがダメージを受けるとどうなるのでしょうか。
DNAには、沢山の遺伝子が収まっています。
中には「がん遺伝子」といわれるものもあれば、
「がん抑制遺伝子」というものもあります。
基底細胞のDNAは、毎日、紫外線の刺激を受けて傷ついています。
そのため、正常に細胞分裂できずに死んでいくものもあります。
「がん遺伝子」のスイッチが入って「がん細胞」になるものもあるでしょう。
その後、「がん抑制遺伝子」のスイッチが入って自滅して事なきを得ていると考えられています。
日々、何事もなく生きておれるのは奇跡と言えるでしょう。
人体は、毎日、5千個ものがん細胞ができていると言われています。
それでもがんにならないのは、防衛システムがしっかりと働いているからです。
◆加齢と共に衰える
若い頃は、歩いていても滅多に転びません。
たとえつまづいたとしても、素早く手をついてケガはしません。
高齢者はどうでしょうか。
段差がなくても、つまづいてしまいます。転ぶ機会が増えます。
転んだとき、上手に防御できず、顔をぶつけたり、骨折したりします。
細胞レベルでも同じことが言えます。
老化した細胞に紫外線が当たると、「がん化」する確率が高くなります。
「がん細胞」の自爆システムも作動しにくくなり、
結果、「がん細胞」の増殖をゆるしてしまいます。
平家物語には「諸行無常」とあります。
「諸行」とは、「すべてのもの」ということです。
「無常」とは、「常がない」「必ず衰える」ということです。
咲き誇った桜も散るときがあるように、
栄耀栄華を極めた平家も滅びました。
すべてのものは必ず衰えるという真理は、皮膚にも当てはまるようです。
皮膚の細胞も無常であり、衰え滅びるさだめから逃れることはできません。
◆日焼け止めで予防しよう
日光角化症は、早い人は40代で発症します。
頬や目の外側に1㎝くらいの赤いシミとなって生じます。
放置していると大きくなり、盛り上がってきます。
日光角化症は99%予防できる病気です。
日光角化症は、お腹など、日光に当たらないところにはできません。
日焼け止めをしっかりぬって、がんを予防しましょう。
参考文献
金子高英, 澤村大輔:「先行病変 日光角化症 臨床診断」,日本臨牀 71(増刊号4): 528-531, 2013
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