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息子との初対面(2022年12月)

昨年の今頃は、ラオスに行く準備の真っ最中でした。

2022年11月9日にラオス政府より養親候補になったと正式なレターを受け取り、11月18日に私の妊娠3か月が発覚してからの混乱を経て、諸々の覚悟を決めた私たちは、12月18日、養子縁組の審査の一環として、一生(いっせい)と1か月の共同生活を送るため、ラオスに発ちました。

バンコクを経由して、ラオスの首都ビエンチャンのワッタイ国際空港に到着すると、タクシーで20分ほどで仮住まいとなるアパートに到着。国の人口は740万人と、東京都の人口の6割くらい。実に小さな国だということが感じられます。

ラオスは1953年の独立までフランスの植民地であり、1960年代はベトナム戦争の影響を受けて内戦状態、1975年から社会主義政権が成立しています。そのためフランスは、ベトナム戦争以降、ラオスから多くの移民を受け入れました。私たちの相談相手になってくれたカップルも、女性がラオス系フランス人で、ご両親が移民1世としてフランスにやってきています。

私たちはフランス大使館の近くでアパートを借りたこともあり、ビストロ、カフェ、クリニック、と至る所にフランスを感じました。

到着したその日の午後は、弁護士さんの自宅で一生と初対面する予定。聞いたところによると、一生は、産院を出てからは、乳児院のようなところではなく、一般家庭に入って養育されています。主に面倒をみているのは、トイさんという50代くらいの女性。自宅には、孫を含む親族のこどもが何人もいて、一生も一緒になって育っているよることも後から理解しました。

さて、それまでに何冊か養子縁組をした夫婦の経験談の本を読んでいて、出会いはいつも感動的に語られていたけれど、いよいよ対面するとなっても、そのような気分の高揚を感じたかと言われるとちょっと違ったかもしれません。

ラオス特有のプロセスである1ヶ月の共同生活のため、一生との養子縁組はまだ審査中で、確定したわけではない、そのため気持ちを緩められなかったのだと思います。

実際、私たちの初めての出会いは、よそよそしさを残したぎこちないものだったように思います。私たちの遠慮がちな抱っこに、不安げな一生。2時間ほど滞在したのち、私たちはその場を後にしました。

一生との初めての対面。かわいいけれど、正直ドラマのような感激の涙みたいなのはない。

2022年12月19日のメモ

次の日からアパートで3人暮らしが始まります。

ラオスの時間の流れはおおらか。お昼くらいに来る予定だった一生が到着したのは、日が落ちてからでした。タクシーで1時間以上かけて、トイさんに連れてこられて、明らかに不安そう。

その日はトイさんも泊まってくれて、私たちはふたつある寝室の片方をトイさんに使ってもらい、一生は私たちの寝室で川の字スタイルで寝かせることにしました。

一生との1か月の共同生活、最初の夜

一旦寝ついたものの、いつもと違うことに不安を感じてか、泣いて起きてしまいました。私たちもあやしてみるものの、どうにもならず、シッターさんがあやして寝かしつけました。

一生が寝ついてから緊張が解け、ようやく少し気が緩んだときだったか、ふいに涙が溢れてしまいました。どういう涙だったか鮮明に思い出すのは難しいのですが、一生がこんなに小さい時から、日々の変化に敏感になってサバイブしなければいけない運命であることに心が痛みました。

私自身に似た経験がないのに、彼が産まれてきてから感じているであろう漠然とした不安を理解してあげることができるだろうか、とか、産みの母親は今何を思っているのだろうか、どんなに辛かっただろうか、というようなことを考えていたように思います。

今この記事を書いている時点で、実子の二葉が、当時の一生と同じ5、6か月。二葉が産まれてからぬくぬくと寝て、ミルクを飲んでいるこの間に、一生は何度も別離を強いられているわけです。産みの母親との別離、トイレ さんとの別離、私たちも1ヶ月後には一旦フランスに帰る。そうしたら、またトイレ さんのところに戻り、その数ヶ月後にラオスからフランスに連れていくことになる。

本当にいいのだろうか。彼にかけるストレスを考えると申し訳なく感じました。私たちのエゴでフランスまで連れて行く。これは正しいことなのか。シッターさんは本当に一生をかわいがっているようでした。彼の幸せを願うなら、経済的支援をすればいいだけなのに、なぜ私たちは自分のエゴを通して、息子として迎えようとしているのでしょうか。

これにはみんなが納得するような回答はありません。ただ、彼にはそういう運命だったと受け入れてもらうしかないです。でも、「それでよかったかも」と思ってもらえるように。

一生と同じベッドで寝たのは、今でもこの時だけ。押しつぶすのが怖くて、気分が昂って、全く寝れた気がしませんでした。

これが一生との最初の出会い。

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