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ものづくり探訪 #2 食用花とSDGsの関係。EDIBLE GARDENの取り組み

サラダやデザートプレートにあしらわれた、色鮮やかな花・・・あなたは食べますか?

おなじみの光景になってきた「食べられる花」エディブルフラワー
つい華やかな見た目に気をとられて、私個人としては、味わっていただいたこと、恥ずかしながらほとんどありません。

とはいえ仕事柄、とっても気になる存在。一度きちんと調べてみようと思いました。どんな花が食べられるのか?楽しみ方は?食べられるスポットは?
そうして日々調べているうちに、気になる情報を発見!
エディブルフラワーを通じた、SDGsに対する取り組みです。

オンラインで、化学農薬不使用のエディブルフラワー専門店 EDIBLE GARDEN を展開する.science Inc.木村龍典さんにお話を伺いました。

ロスフラワー削減だけじゃない!花とSDGs

花を巡るSDGsの取り組みは、「ロスの削減」「環境保全の取り組み」が中心のところ、EDIBLE GARDENでは、「人・社会的弱者への配慮」という視点から、障がい者就労支援施設との取り組みを進められています。

―障がい者就労支援施設、NPO法人 歩実さんと一緒に取り組みを始めることになったきっかけを教えてください。

学生時代から、ボランティア活動や園芸療法(※)の研究調査を通じて、障がい者支援施設との接点がありました。
前職では 室内型水耕栽培、いわゆる植物工場の責任者としてエディブルフラワーの生産技術開発に携わりました。そちらでも、障がい者の方たちとの協業について試行錯誤を。
NPO法人 歩実さん(以降、歩実さん)とは4年くらいご一緒しています。
.scienceは創業3年なので、それ以前からのお付き合いになりますね。
今では、支援施設の連携先も増えてきています。

※植物や自然とのかかわりを通じて健康の回復を図る療法

―これまでのキャリアの中で、自然な流れで取り組みが続いているのですね。障がい者の方には、どんな作業を任されているのですか?

工程管理や生産計画などのマネジメント部分を除き、実質的な作業部分をお願いしています。
種を植えるところから、苗を移し替え、収穫、出荷まで、ほぼ全てですね。

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一輪ずつ採花する、繊細な作業。

ここまで進んでいる!?栽培の舞台裏

―歩実さんの植物工場の、独自の工夫や特徴はありますか?

まず、工場の設備そのものの特徴として、光の色のバリエーションが非常に豊富です。
15万パターンほど、色が変えられます。

―15万!?すごい数です。

照射する光によって、生長効率などが変わってきます。
花の栄養成分も、どんな光を当てるかによって、変えられることが分かってきました。

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独特な光の色。植物工場内の様子

―花にも栄養があるんですよね。

機能性食品といえるくらい、実は栄養豊富な花もあります。

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※食用花ビオラに全食材トップクラスのポリフェノール含有量を証明

障がい者支援施設で上手く機能させるための工夫もあります。
工場内は、棚を縦に積むような形の設備になっているのですが、低めの脚立でも上段に手入れができるような高さに設計してます。

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ほかにも、車椅子でも通れるような通路幅を確保したり、手足の可動域が少ない方でも手間無く除菌できるように、入室前の除菌用エアシャワーを設備として整えています。

―想像より、はるかにシステマティックです!

機器の保守、衛生管理など、チェックリストも含めて200ページくらいの細かいマニュアルがありますが、長年のトライアンドエラーのおかげですね。

歩実さん以外でも、10年近く複数の施設で取り組んできました。
現場の作業内容は、支援員さんにフォローいただきながら、働いている方の特性にあわせた試行錯誤が日々続いています。
重度の障がいをもっている方にも対応いただけるように、マニュアルも調整しています。

―生産方法から採花、出荷まで、完成されたスキームのように思えますが、改善していきたいことはありますか。

「エディブルフラワーを普及させること」を最大のミッションに、障がい者の方にお支払いする工賃を上げていきたいと思っています。

障がい者就労支援施設 B型で、障がい者の方へお支払いしている工賃の相場、ご存知ですか?

―・・・。(勉強不足ですみません)

時給換算すると、約200円くらいといわれています。
そもそも僕たちは、クオリティの高いエディブルフラワーの生産、という価値のある仕事に従事していただいていると考えているので、この額を400円、600円、1000円に上げていけるように、商品と価値を広めていきたいと思って活動しています。

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パッケージはコスト削減を考慮し、現在の形に。

シェフからのトップダウンも、一般消費者への発信も。

―エディブルフラワーを普及させるための、具体的な方針やお考えがあれば、お聞かせください。

エディブルフラワーを「どうやって美味しく食べるか」の答えを明示していく。
これに尽きますね。
そのためには、料理人の方たちに向けての情報発信と、実際に食べていただく消費者の方たちにむけた発信と・・・両方向に向けて、積極的に発信を続けていきたいと思います。

―今注目の品種や、これからエディブルフラワーとして加わりそうな品種はありますか?

ペンタス という、小さな花の需要が伸びています。

―バラかと思っていました。意外です!

王道で、バラ、ビオラは人気ですよ。
シェフから、なるべく小さな花が欲しい、という声が多く寄せられています。のっぺりした印象にならないですし、さりげなく添えられる。独特の小さな星型のフォルムもあわせて、他の花にない特徴があるからかもしれません。

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歩美さんでは、設備の都合で高さのある植物は難しいのですが、ヒマワリ、ダリア、カーネーションなどは、花の造形的にも綺麗でインパクトもあるので、注目しています。

―エディブルフラワーは特別感というか、非日常を楽しむ食材、というイメージがあります。一般家庭にも普及させていきたいとお考えですか?

いくつか階層というか、段階があると考えています。
クリエイティビティの高いトップレストランのシェフたち、チェーン展開されているような規模の大きな飲食店、そして一般のユーザーの方。
現状では 業務用の卸5~6に対して、一般小売は1、くらいの比率ですが、どのフェーズからの発信も大切にしています。
今年初めには、とある寿司店チェーンの大手から、相当な量のご注文をいただいたこともあり、コロナの影響はありますが、ブレイクスルーはもう見えてきているなと感じています。

終わりに

エディブルフラワーを通じたSDGsに対する取り組みから、今後のヴィジョンまで・・・
「かわいいくて綺麗な花」という視点をすこし変えて、お届けしました。
お話してくださった木村さん、最後までお読みくださった皆さん、ありがとうございました!

※本記事は、取材時の2020年7月時点の数値・各種情報を元に記載しています。

EDIBLE GARDEN とは?
日本で唯一の農薬不使用のエディブルフラワー専門店です。指定の生産者による国内最高品質の食用バラをはじめ、ミシュランガイド星付きレストランでも愛用されるエディブルフラワー各種(生食用花・ドライ)を30種類以上取りそろえています。


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