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探訪|千葉県君津市・カラー生産組合 Bloom-Netを訪ねて

こんばんは。hanaike ディレクターの太田です。
新たにスタートした、花の産地直送サービス fanfarm で連載している、産地訪問と生産者との対談記事を、今月から、こちらでも紹介することにしました。

第一弾は、直送に対応していただける産地さんを探していたところ、快く引き受けてくださった、ブルームネットさんに伺ったときのお話を。
どうぞご覧ください!

Bloom-Net|ブルームネット とは
千葉県君津市でカラーの栽培・出荷を行っている生産者組合です。
テーマは、美しく「咲ききる」カラー。
長年愛されているカラーの魅力をこれからも発信し続けられるように、品質の向上に日々努めています。
現在、湿地性カラーは8軒、畑地性カラーは2軒の生産者が取り組んでいます。

訪問の前日に、「ハウスの中に入るなら長靴がいるよ」と連絡が。
深く考えることもなく、せっかくなら入らせていただこう!ということで長靴片手に行ってきました。

電車とバスを乗り継ぐこと約3時間・・・気分はまるで小旅行。目指すは、千葉南部に位置する君津市!

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鳥のさえずりや草木の葉音をBGMに、広がる田園風景を満喫しながら目的地に向かいます。

今回対応してくださったのは、ブルームネット創立メンバーの2代目である松崎さん。
準備していた質問項目の数々に、丁寧に答えていただきました。

生産者の方に聞く!カラーはこんな花

カラーには2種、「湿地性」と「畑地性」があって、ブルームネットでは湿地性のカラーをメインで栽培しています。
育て方が全く違って、湿地性カラー(以下、カラー:湿地性カラーとします)は常に水が流れているところで栽培します。

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カラフルなカラーは、畑地性。
湿地性のカラーは、ホワイトやグリーンで茎が畑地性に比べて太さがあります。

君津は200m掘れば地下水が噴出するような、水資源に富んだ場所。
水温も年間を通して14~16度くらいで安定していることから、地の利を生かしたカラー栽培が実現できています。

カラーは球根植物。
球根は基本的に植えっぱなしで、植え替えなどは行いません。
たくさん芽吹いて混みあってきたら、子株を移動させたりして調整しているそうです。

「ワサビっぽいよね」とほどよく育った球根を見せていただきました。

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ハウスの真ん中の通路だけでも、15cmくらいの深さ(場所によってはもっと深い!)で、相当なぬかるみ。気を抜くと顔から泥に突っ込んでいってしまいそうです。
大切な花たちを傷つけないように、泥を飛ばさないように慎重に・・・。
球根が植わっているエリアはもっと深く、膝上丈くらいの長靴がないと入れないくらいだそう!

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花のピークは1月から3月にかけて。
暖房も使わず、日照も自然任せなので、需要期にたくさん花を切れないこともありますが、ブルームネットでは品質保持の視点から、無理に花を咲かせて出荷しないことにしています。
こうしたポリシーには、とても信頼が置けます。

さらに、カラーはもともと農薬が少なくても問題のない花だそう。
使うとしても他の花に比べて少量で済む「環境負荷の低い花」とお話いただきました。松崎さんのハウスでは、農薬を一切使わずに育てています。

カラーの栽培は難しい?

球根の植え替えが不要で、施肥も最低限。
なんだか育てやすいような印象のカラーですが、どんな苦労があるのでしょうか。

「とにかく、傷つきやすい花なんです」と松崎さん。
カップになっているところの内側は、少し当たるだけでも傷、シワになったり、茶色く変色したりしてしまうことがあるそうです。
それだけに、採花には最大限の注意を払いながら行われます。

開花のタイミングは気温などに左右されることから、見極めが必要です。
開いてくる前のすっと尖ったフォルムも美しいです。

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雑草も生えてくるけれど、除草でまわりの花にダメージを与えることを考えて、シーズン中はそのままにしています。
カエルや川エビとの共生は当たり前。時にはザリガニを食べに、タヌキなどの動物が入ってくることもあるとか。

ちなみに、カラーの採花に、ハサミやナイフは使いません。
手でスポッと引き抜くのですが、これが意外と力が必要で・・・。
私も1本挑戦することになりましたが、力不足で抜けませんでした!

また、水辺にハウスを建てていることもあり、大雨や台風の影響を受けやすいのも困りごとのひとつ。
松崎さんは、植えたばかりの球根が流されてしまったことがあるそうで「あの時は相当なショックを受けました」と苦笑い・・・。

ハウス内に流れている水は全て繋がっていて、肥料、疫病、農薬などの影響が、どこか一ヶ所に出ると行きわたってしまいます。
カラーは育てるのに手がかからない反面、採花、維持が大変な花ということが分かりました。

本当に欲しいと思ってもらえる花を作り続けたい

白いカラーといっても、ホワイトの色味、花のフォルムや茎の硬さ、バランスなど品種ごとの個性があります。

私も今まで意識したことがなかったのが、湿地性のカラーからは、テッポウユリのような爽やかでほんのり甘い香りがあるということ!
カラーがお手元に届いたら、ぜひ確かめてみてほしいです。

現在、ブルームネットで育てている品種は「ウエディングマーチ」のほか、「しろたえ」「アクアホワイト」「コキーユ」など。
オリジナルの品種も幾つかあります。

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市場の規格では、同じ品種・品目でも長さがある方に高値がつくものですが、「長さだけが等級じゃない。本当に欲しいと思ってもらえる花に良い価格がついてきてくれたら」と松崎さん。

今年また新たな品種が誕生するそうで、これをどのように育て、普及させていくかが目下の課題です。
試作を拝見しましたが、販売開始が待ち遠しい!

比較的若手の作り手の方が多いブルームネット。
今後チャレンジしたいことについても伺いました。
言葉を選ばずに表現すると、今後もカラー生産が続いていくために、しっかりと稼げる職業であることを示していきたい、とのこと。
カラーの魅力をダイレクトに発信でき、中間マージンの少ない「(産地)直売はとても良い取り組みだと思います」とのコメントをいただきました。

元々家業を継ぐつもりがなかったという松崎さん。就職は、生産とは異なる花業界へ。
そこでの仕事を経て花の魅力を実感し、さらにブライダルでブルームネットのカラーを使ったことで、「ブルームネットのカラー、いいじゃん!」という確信に変わったとか。

私も同じ気持ちです。
これを書いている今、これまでの人生で一番カラーが好きです。
ブルームネットのカラー、いいですよ!
残念ながら、2021年春の出荷は終わってしまったので、次シーズンの再開をお待ちください。

writer:太田


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