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この道

先週、夫の母が80歳で亡くなりました。

20年前にお義父さんを亡くし、それからは70歳まで現役で働くほど元気だった義母ですが、3年前に癌が見つかりました。
すぐに入院、手術となりましたが、2年前に再発。
その時にはすでに転移がありました。

それから今までできていたことができなくなったり、直近のことを忘れっぽくなったりと心配になる出来事が重なりました。

そして2020年の夏のはじめ、夫が完全リモートワークになったのをきっかけに、私たちは当時住んでいた千葉から、小田原への移住を決めました。
義母の家(夫の実家)近くに引っ越し、何かあったらすぐに行ける距離にということで。
結婚して以来、年に2度ほど小田原を訪れるたびに、この街の魅力を知り、私の「いつか小田原に住みたい」という願いが叶うことになりました。

2020年の真夏の最中に引っ越しを終え、わたしは人生で初めて海・山が見える街に住むことになりました。

わたしはフリーランスなので、場所を選ばないのがいいところ。

制作の仕事は一日中パソコンと向き合いっきりで、基本座りっぱなしです。
これは長く制作をやっている同業の方はわかると思うけど、本当に身体にとって良いことはひとつもありません。
出社があれば少しでも歩くきっかけがあるけど、在宅ワークだと自分で意図しない限り「運動」は皆無の生活になってしまう。
でも小田原に来てからは散歩がとても好きになりました。
朝から夕方まで集中し、夕暮れの日差しの中、山を見ながら海までの散歩は本当に気持ちがよくて。
海を見てリフレッシュし、また明日頑張ろうと思えます。

歴史を感じるこの街で、新しくやりたいことも見つけました。
これからそれを実現していこうと思った最中、義母とのお別れが待っていました。

2月中旬、もう歩けなくなった時に病院へ入院ということになったのですが、このご時世で面会ができないということを知り、夫兄弟は在宅で最後を看取ると決めました。
介護ベットを借りて、訪問介護で看護師さん達が24時間体制で来てくれました。看護師さんは優しく、思わず涙がでることも。
いつも思うことだけど、医療従事者の方への感謝と敬意を改めて感じる数週間でした。
「在宅で」と決めたのは良いものの、最後の1週間は心身ともに本当に大変で見ていられないほどだったのですが、夫兄弟は最後までやりきったと思います。
その最中、追い討ちをかけるようにわたしの父も胃がんの手術を控えていました。
3月初旬、夫家族と父母の両方の付き添いが必要でした。
父にはわたしの母が千葉で一人で付き添っていたのですが、母も昨年肺がんの手術をしたばかりです。
(わたしは兄がいますが、兄は仕事でアメリカにいます。)
わたしは2月の中旬から夫家族に付き添い、父の手術当日に千葉へ移動し、それから小田原と千葉を行き来する日々となりました。
(お陰様で父の手術も無事に終わり、今は落ち着いています。)

わたしは義母とのお別れを通して、当たり前ですが命は有限だと改めて感じました。日々忙しく日常の雑多なことを繰り返していると、そんな本当に当たり前のことを忘れて暮らしています。
今日生きていることは当たり前ではないんだと思った時、やはり思うのは今日1日に感謝するということだと思います。
そして、何よりも健康が第一で、全ては健康あってこそだと思うのです。
健康な身体があって、全ては成り立つのだから。

そう思うと、誰かがどうだとか、仕事での悩みとかそういったことも小さなことのように思う。
小さなことではないんだけど、今日も生きて美味しくご飯が食べられるということがどんなに素晴らしいか、そのことに感謝することがどれだけ大切かを思う。


まだ意識があった時、夫がYoutubeでかけた曲にあわせて、小田原の詩人として有名な北原白秋の「この道」をしっかりした声で唄ったお義母さん。
俳句を読み、小田原の文学・歴史のことをよく話してくれました。

そしてお義母さんが、最後にわたしにかけてくれた言葉は「たくさんたくさんありがとうございました」でした。
「たくさんたくさん本当に本当にありがとう。」
繰り返しわたしに言ってくれた。

おかあさん、こちらこそたくさんたくさんありがとうございました。
小田原へ引き寄せてくれて、わたしはこの地でやりたいことがたくさんあります。
どうか、見守っていてね。

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