雨の日の電車の匂い

今日は大雨で髪の毛はジトジト,靴下も水に浸したように濡れてておまけに極寒な一日だったけど,1つ感動したことがありました。

四年前からマスクが当たり前の生活になって,私自身,もうマスクをつけていないと不安になるような体質になってきていました。昨年からマスクなしの人も増えてきた中で,私はまだマスクの安心感から抜け出せずにいました。四年のうちに,口元を見られることや飛沫や口に直接風が当たる感覚に敏感になり、マスクを取ることが怖くなっていたのです。

しかし最近,自転車で家まで帰る道や平日の昼間の誰もいない道でマスクを取ってみると,驚くほどに開放感を感じ自分の中のストレスが少し軽減されたような気がしました。それと同時にマスクは人をこんなにも息苦しくさせるのかと,一枚の布の持つ力にぞっとしました。

そして今日,友達とごはんをして帰りの電車に乗ると自分がマスクをつけ忘れていることに気づきました。友達と浮かれ調子に店を出てからすぐに電車に乗ったのでてっきり忘れていました。あ,マスクつけなきゃと思ったその瞬間に,ファッと懐かしい匂いが私の鼻を通りました。雨の日の電車の匂いです。古い布の生地と湿気と人の汗と雨露が混ざった,あの少しこげ臭くてどこか懐かしい匂い。わかりますか?
小学生の時は超超超遠距離通学で今よりも長く電車に乗って通学していたので,この匂いには何度も出くわしています。梅雨の時期は毎日のように感じていた匂いに「懐かしさ」を感じた,これこそがコロナのブランク4年間を表していると私は思いました。そしてやっぱり,匂いの持つ力の強さは凄いですよね。私は普段からあまり五感を使えていない自覚があるので,小学生のあの頃と今が一瞬でガッ!と結びついた感覚に思わず感動してしまいました。良い匂いとはとても言えない匂いですが,逆にそれがリアルなあの頃を思い出させました。

パッと顔を上げると私の前に座っていた列の人達はちょうどみんなマスクをつけておらず,まるで本当に四年前の光景を見ているようでした。こうやって昔の状態に戻っていく人もいて,これからもマスクをつけて過ごして行く人もいる。どっちが良いとかではなく,新しい常識がこうやって生まれて,世の中が進んでいくんだなあとしみじみしてしまいました。

小学生の頃たくさんの荷物を抱えて,必死に登下校していた私が見ていた電車の中の景色と雨の日の電車の匂いがリンクしたことが何より嬉しく,匂いと思い出の関係性をもっと増やしていけたらいいなと思う雨の日になりました。

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