海の藻屑

海へ向かう。

朝練習の代替として
6時から7時までの間だけ竿を
振り続けて3週間になろうとしている。

大森浜で狙う魚はサクラマス。
川で孵化した稚魚が降海して
海で大きくなったサケ化の魚だ。
海に降りず、川にとどまったのがヤマメ。

大きいものでは60~70㎝を越え
強烈な引きが特徴だ。
その魚体は美しく、食べても美味しい。

しかし、そういう
『釣って良し 眺めて良し 食べて良し』
という魚は、そう簡単には釣れない
というのが世の掟だ。

この3週間、延べ時間にしたら
丸1日分ぐらいは海にいるとおもうけれど
サクラマスの気配があったのは、1回だけ。
(グググッときてすぐハリが外れた)
そして外道でカジカの小さいのが
1匹釣れただけ。(リリースしました)

そんな釣れない魚釣りをしていて
何か楽しいのか・・・わからない。
(同じような事、走ってても言われるけど)

でも海へ出てしまう。何かに誘われるように。

魚釣りにはまってしまった
そもそものきっかけは
一昨年の12月妻から誕生日プレゼントとして
サケ釣り用の竿を買ってもらったからだ。

昨年も2月に数回、3月に数回
大森浜に行ったが釣れなかった。
こんなに釣れないのにどうして
一心不乱にみんな竿を振ってるんだ
と思っていた。
釣れないうちは当たり前だが、はまらない。

しかし
4月に行ったときに2日連続で
サクラマスを釣りあげた。
この時の興奮を表現することは
文章では到底できない。

画像1


去年ビキナーズラックによってもたらされたサクラマス

釣り上げた人にしか分からない。
そして
釣り上げた人はまた味わいと思う。

だから、一度釣り上げてからというもの
隣で釣り上げた人を見ると
もの凄く羨ましくなった。

サクラマスは回遊魚なので
左隣りの人が釣れだすと、自分にもチャンスが来る。
なのに次に釣れたのが、自分を飛び越えて
右隣りの人だったりすると
そのまま海の藻屑になりたくなる。

だから少ないチャンスをものにする為
みんな必死になって血眼になって竿を振る。

釣りは確率をあげれば釣果が上がる。
確率とは魚が泳いできた時に
餌なりルアーなりが
魚の目の前をホレホレホレと通過する確率だ。

さっきも言ったがサクラマスは
中々釣れない。へたくそな事もあるが
そもそも、サクラマスという魚は
としまえんのプールみたいに
所狭しと泳いでいない。

海の中が見えるわけではないので分からないが、
周りの人もひたすら竿を振っていて、
たまに竿がグニャと曲がったと思うと
昆布だったり流木だったりする。
ちなみに、去年は誰が釣ったのか
フランス人形が浜に置き去りにされていた。

海にはほとんど
サクラマスはいないと思った方がいい。
たまに沖から気まぐれで
陸の方に近づいてきたサクラマスの前に
誰のルアーが落ちるかだ。

だから、100投中99投は
間違いなく何もいない海の中に向かって
投げているということだ。
冷静に考えたらなんと非生産的な行為なんだろう。

しかし釣り人というのは
冷静とはほど遠い生き物だ。
いない99投より、
いると信じた1投のことしか頭にはない。
1>99という非数学的な公式を立ててしまう。

もちろん、その1投の確率を上げるために

100投なげるより200投
投げた方がいい。

1投の距離が
50m飛ぶより100m飛んだ方がいい。

このシンプルさはランニングにとても似ている。
量と質の関係だ。
距離を踏んで、量を確保することで
レースを尻つぼみにしないための
スタミナを作る。

スピードを養うことで、質を上げ
レースをどのレベルで組み立てられるかが
決まる。

質をあげるためには、
フォームも大事だ。

釣りも同じで、竿のしなりをどう使うのか。
振り切るスピードをあげる為に
右手と左手の使い方をどう相関させればいいか。
いいスイングをした時は
ビュッ!という音が違う。

そして、投げる量をこなしていくうちに
竿のスイングの無駄が削ぎ落され
飛距離が上がってくる。
量をこなせば、質も比例してあがってくるのも
のもランニングに似ている。

スイングフォームが良くなれば、
フィッシングエコノミーもあがるので
(そんな言葉あるのか?)
100投、投げようが疲れない。

どちらかだけではだめで
バランスよく組み合わせることが大事だ。
走れないが、他の趣味からも学ぶ姿勢も
大切にしたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?