『方丈記』再読
「方丈記」と言うと、何を思うだろう。
「ゆく川の流れは絶えずして~」
世を達観したような文章から始まるが、世の中に対する解像度が良いと、養老孟司がいうので再読してみた。
また堀田善衛が書いた『方丈記私記』に宮崎駿が影響を受けたという。
宮崎駿の最新作『君たちはどう生きるか?』について、いろんな感想を見たが、自分は死をめぐる冒険のように見た。もしかしたら、何度も見ているうちに変わってくるかもしれない。
ただ、宮崎駿という人物は、なぜあれほどまでに感覚知に対する執念があったのかと思う。
ジブリ作品は、すべて感覚知が強い。手触り、臭い、人間の行動を描いているように思う。それはきっと普遍的なものだろう。
堀田善衛の作品には自分も影響を受けている。訥々と事実を連ねていきながら、感情を揺さぶられる。
わかりやすいとかわかりにくいとかはあまり考えていないようには見える。コマーシャルのようなものを作ろうという気がさらさらない。書く文章は、読者との距離感がとても楽だ。突き放していると評されるらしいが、そんなことはないと思う。自分の見たものをしっかり書いているし、それこそがサービス精神であるとも思う。
さて、そんな堀田善衛が影響を受けた「方丈記」である。
それほど時間はかからないから、読むといい。
おそらく学生時代に読んだ人も多いと思う。
自分も20年ぶりに読んでみたが、あまりにも現代にも通じすぎていて、変わった自分を認識するのにも役に立った。
おそらく日本の空気というのはこういうところに根差していると思えた。
鴨長明が生きた時代、つむじ風は吹くし、火事の悲惨さもあるし、地震もあり、飢饉もあった。遷都もあったから、世間の移り変わりもあった。
だからこそ、激動の時代に突入してしまった現代の世界では刺さるのではないか。
後半は、四季の植物や自然に対する感覚知を描いているように読める。
現代の段ボールハウスと養老孟司は言っていたが、移動式の庵を作って山に住み、時々世間に下りて恥を感じるのは楽しかっただろうと思う。本人は、不安がないことを楽しみにしているらしいが、世捨て人というのは、こういう気持ちなのだろうと思う。
実際、自分は中年になり、なかなか欲を持つのが面倒になってきているので、随分と胸に突き刺さってしまった。
この状態で、堀田善衛の『方丈記私記』を読み、宮崎駿の『君たちはどう生きるか』を見ると、また違う感情を持つのかもしれない。
でも、それはまたいつかの夏の日でいいような気がしている。
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