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ろろこちゃん

お腹が空かない喉も乾かない疲れない眠くない 行動する時に邪魔になる感情が一個もない死んでるからだし、死んだ後で行動する時に邪魔になる感情ないな〜〜ってなったところで意味なし とりあえず私は今日もフラフラお散歩をしてる

しばらくすると 行きたい場所に自由に行ける、ということに気づいた 今まで無意識に頭の中で行きたい場所を思い浮かべながら扉を開けこっちの世界に来ていたから気づいても  あ、そっか ぐらいにしかならないけど
生きてる間、行ってみたかった展覧会に出かけた 扉を開ける時部屋に飾ってる展覧会のポスターを頭に浮かべて 美術の教科書に載っているモネの絵を頭に浮かべて  美術に特別詳しいわけじゃないけれど モネの柔らかい光に包まれた夢の国の風景(私が勝手に夢の国と呼んでいる、現実にはあんなゆったりとしたまどろむような空気も風も水もない、絶対にないから)は小学生の頃から大好きだった

無事に着いてしばらく絵を見ているといつのまにかお昼を過ぎたみたいで大混雑してきた  私はもう人とぶつかっても痛くないし息苦しさは感じないけど やっぱり人が多いと落ち着かなかった 私を認識できないから私の中を通り抜ける人もいて気持ちが悪くなり私は美術館を出た 自由っちゃ自由なんだけどうまくいかない
フラフラ揺れて大通りを浮かんで行く事にした

灰色の不愛想なビルたちとせっかちな車たち読めない落書き 落書きするなら意味のあるものにすればいいのに モノトーン×モノトーンの集まり 木も暗く見える まだ四月なのに影は濃く夏みたい モネの絵を見た後だからきつい、原色か白黒 信号機の赤が唯一まぶしそうに見える 車両注意の張り紙を見て私みたいだと思った 黄色地に黒い文字 黄色い肌に黒い髪の私 あんまりいいデザインじゃないよな~逆なら面白い人間が出来たと思う 黒い肌に今の私の肌のように透ける髪色 神様、いるとしたら結構なミスでしたね ミスというかセンスなかっただけかもだけど

私は昔 歩道橋の近くにいるとおばあさんの幽霊に殺されるという怖い話を聞いてから歩道橋が苦手だ(確か歩道橋の上に連れていかれた後 トラックかなにかが何台目に来るか当てろと言われ、当てられたら死なずに済むというお話だった このお話を聞いたのは小学二、三年生の頃だったけれど ずうっと覚えていて中学校にあがってからも 学校の近くの歩道橋には近づけなかった) 今はその歩道橋の下にいる しかも長年恐れていたおばあさんと同じ幽霊の身になって、だ ちょっとおかしくなった 


向こう側の暗い緑の木を見た桜はもう散ってしまった、お花見はまた来年、そう、来年扉を開けていく事にしよう死んでいるのに次はあれその次はこれと予定がたくさんある 海か山にも行きたい外国にも行きたいし冬には思いっきり寒い場所に出かけたい

夏は涼しい場所がいいな