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ろろこちゃん

赤いポストに寄りかかるような姿勢をとると赤い色が自身の色をぼかしながら入り込む 無駄なく効率的に染められたお手本みたいな色が 肌色に重なるとやる気がなくなったようになる ずっと優等生は、疲れるでしょう それをじっと見るのがすき
赤いポストに人が近づく 私の姿が見えたらどんな顔するかな と考えながらじっと近づいた女の人を見た タイトスカートから長い足が伸びていて羨ましい 堅苦しいスーツに閉じ込められた多分細い腕は誰かに送る手紙をポストに飲み込ませていた 女の人は遠ざかる 右手はコンビニの袋がコッツコッツとヒールの音と合わせて揺れるスタイルがいいと何持っても様になる私の短い手足じゃおつかいみたいになるのにな

携帯電話を持っていなくてLINEを知らなかったいつかの私は 冬休みが始まる前にクラスメイトの住所を聞いてメモして回った記憶が、誰かのかわいいメモ帳に自分の住所を書いてあげた記憶がーー ない そういう子を見た記憶はある 昔っからお友達がいない劣等生なのであった 南無…眼鏡屋さんから年賀状を受け取った事があるくらい

そういえば私は死んでから目が良くなった気がする 遠くの看板の文字が見えるし人の表情も前より分かる この間の美術館も楽しく見れた 眼鏡がない というのは煩わしくなくて良い 何より私はメガネがない方が、ほんのちょっぴり、かわいい ほんの少しだけど 目が少し大きく見えるし、何より疲れて見えない、これが大きい もともと、はつらつとした表情ではない、事あるごとに つまらない・めんどくさい・かったるい と心の中でぼやいてしまう私は年頃の少女らしいきらめくような快活さが微塵もない人間だった 眼鏡をかけるとそれが強調されるようで自分の顔を見るたびぐったりした気分になる けどお風呂から上がって髪を乾かす間、ほんの少しの時間だけど その時間だけは違った 相変わらず快活さなんてないのだけど 同じ顔なんだけど なんだか楽しそうな顔に見える  ぼやけた視界に曇った鏡 正確さなんてこの世にいらない

 濡れて綺麗なストレートになった髪も手伝っていつもよりかわいくみえる、気がしてた

鏡やショーウィンドウには私の姿は映らない 私、今どんな顔してんのかな

多分眼鏡をかけて生きていたあの頃より、かわいい気がする