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ろろこちゃん

あなたは本当にあっちに行くのが好きねと呆れたように声を私に投げた 行っても何も出来やしないよ 何も変わらないのに行って虚しくはないの?
そうですねとだけ返した

私は昔から人が呆れるくらい虚しい事をするのが好きだ 雨の降る日、傘から手を出して落ちてくる水を下から叩いて遊んだ 切った爪の先を集めてアクリル絵の具で色を乗せる遊び ほしいお洋服や化粧品の切り抜きを集めてノートに貼る遊び 虚しいって言われると笑いが出る

虚しいって楽しい

これといった内容がなくて、誰かと競うこともない 誰の、何の為にも、自分の為にすらならない 馬鹿で、真剣な目的も崇高な意味もなさない遊びほど楽しい だいたい遊びってそんなもの

私はお買い物をして遊ぶより手に入ったおもちゃで遊ぶより お店の人が丁寧に掃除してあれこれ考えディスプレイした商品を展覧会のようにぐるぐる見て回ることが好き 頭の中でおもちゃを作っていろんな場所に連れて行く事が方が面白い 映画も本も観たり読むより、授業が退屈な時に電車に乗る時に 頭の中で上映会をする方が何倍も好きだ

私のする事は基本その虚しさがつきまとう 私じゃない人たちは私の事、随分と暗い馬鹿な人間だろうと思ってる それでいい 誰にも影響を与えず通り過ぎて行く事 不快な思いもさせないし怒られない 出来が悪いからと言ってとやかく言われない その他の対象と比べられない 虚しさとは私にとって心の平穏

忘れていた、私はごみ捨て場を眺めてそれらを使っていた人間を想像する遊びも好き

ゴミ捨て場は生前じっくりとは見れなかった 学校の行きは急いでるし、帰る頃にはゴミ捨て場のゴミは連れさらわれているから

ぐでっと仰向けになり太陽に照らされ雲を眺めていた 深い痛んだ青い椅子にオレンジ色のゴミ処理シールが爽やかな配色

この椅子を捨てたのは 四人家族 父 母 小学六年生のお姉ちゃんに小学五年生の弟くん 姉はこの椅子のキャスターがうまく回らなかったことを理由に新しい椅子と変えてほしいと言った 弟はそのくるくる回る椅子が好きで 姉がいない時に座っていた くるくる回るキャスターは弟が好きになった キャスターに感情が生まれた キャスターは弟が座る時はいつもの倍滑らかに動いた けれどある日キャスターは弟が姉に誕生日プレゼントを渡したのを目撃した 五年生になり思春期が訪れ普段姉にそっけない態度をとっていた弟が、顔を赤くし照れながらプレゼントを渡すその姿はキャスターを失望させるには十分だった キャスターは深い悲しみに襲われ、回る事をやめた

当たるか当たらないか、はどうでもいい
遊びなんだから

#物語 #イラスト #写真