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何首烏(かしゅう)

 何首烏というのはツルドクダミのことで、葉がドクダミに似ているところからツルドクダミと命名されたそうです。何首烏の根の塊部分が生薬として使われます。滋養強壮といえば、薬用人参(朝鮮人参、高麗人参)が日本では有名ですが、中国では何首烏もそれに並んで強精、強壮の秘薬として珍重されていたようです。何首烏を焼酎に漬け込んだ何首烏酒などは、ハブ酒のようなイメージになるのかもしれません。

 何首烏は、血を補い、滋養強壮効果があり、髪に栄養を与えて白髪となるのを抑え、解毒作用もあるとされています。薬理作用とすれば、コレステロールを下げる、血糖の上昇を抑える、抗菌作用、腸管の動きを刺激するなどということも言われています。中年以降のメタボな人間にぴったりじゃないかと思うのですが、日本で医療用漢方薬に何首烏が入っているのは、当帰飲子くらいです。

当帰飲子は、冷え傾向の人の、慢性湿疹や皮膚掻痒症に使われます。10種類の生薬からできた漢方薬で、微小循環を改善し、炎症を抑え、皮膚の状態を良くしてくれます。一般的には、体力のあまりないような人や老人で、皮膚がカサカサしてかゆみを訴えるような場合につかわれる薬です。この中で何首烏は、血を補い、体に潤いを与え、痒みを止める役目を果たしてくれるのでしょう。

 高齢になると、お肌がカサカサして粉をふいていいる人がいます。かゆみのためにかきむしった傷跡があることもあり、その傾向は冬に強まります。病名でいえば、老人性皮膚掻痒症になりますが、このような方に当帰飲子を処方することが多くなります。栄養をつけ、潤いを加え、痒みをとってくれます。保険適応は、「冷え症のものの次の諸症:慢性湿疹(分泌物の少ないもの)、かゆみ。」となっています。

 お肌カサカサ状態は、漢方では血虚ととらえることが多いです。血虚に対して血を補う補血剤が、そのような時に利用できる漢方薬となります。補血剤の基本は四物湯で、当帰飲子にも四物湯の、地黄、芍薬、当帰、川芎が含まれています。お肌以外の症状なども総合的に考えて、温清飲、十全大補湯、人参養栄湯、滋陰降火湯その他の補血剤を利用する場面もあるかもしれません。どの処方が良さそうか、漢方医と相談してみてください。

 ちなみに、生薬名として何首烏の名前を知ったとき、最初はカシューナッツの友達?と思いましたが、全く関係ありません。それにしても、生薬の何首烏、なぜこんな漢字があてられているのでしょうか。何首烏という人が見つけて、それを服用していたところ、三代にわたって長生きしたとか、何公という王が服用したところ首のあたりの白髪か烏のように黒くなったとか言われているようですが、どうなんでしょうか。

 さて私もそこそこの年齢になってきましたから、何首烏を漢方薬店でも覗いて買い求め、何首烏酒なるものをつけてみようかな。いや、その前に5年位前につけた梅酒がどうなっているか確認するのが先だ。

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