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心身一如の世界:こころとからだは一体です

 日常生活の中で、心の乱れが体調に影響したり、体の不調が気分に影響したりすることは、多くの方が経験されていることでしょう。例えば、ストレスが溜まると胃が痛くなったり、緊張が高まると吐き気がしたりすることがあります。また、事故や災害の後に動悸を感じたり、体の痛みが長く続いたりすることもあります。これらは、精神的なストレスやトラウマが実際の身体症状として現れる例です。心と体が密接に関係していることを示しています。

 近代医学は長らく、心と体を別々に考えてきました。精神的な問題は精神科で、身体的な問題は身体科で扱うという分業制です。しかし、約50年前、日本で精神身体科という新しい分野が生まれました。これは、心と体のつながりを重視し、両面から病気や不調の原因を探るという発想に基づいています。この分野は現在、「心療内科」として知られており、心と体の両面からのアプローチが治療に取り入れられています。日本の医学において、これは大きな進歩と言えるでしょう。

 一方、漢方医学では、心と体が互いに影響し合うという考え方を超えて、心と体を一体的に捉えることが基本とされています。漢方では「心身一如」という概念が根底にあり、心と体を切り離して考えるのではなく、統一された存在として扱います。例えば、心を穏やかにする効果のある柴胡剤や、元気をつける補気剤などは、精神状態にも配慮した処方となっています。それ以外の多くの漢方薬にも、心に影響を与える生薬が含まれています。

 もし長引く痛みに悩んでいるのであれば、一度漢方診療を受けてみるのも一つの手です。西洋医学とは異なる視点で、体の不調を読み解いてくれるかもしれません。例えば、肩こりや肩の痛みが続く場合、精神的な緊張から常に肩に力が入っていることが原因かもしれません。このようなケースでは、更年期の精神不安も考慮して、加味逍遙散という処方が用いられることがあります。加味逍遙散には、柴胡、茯苓、山梔子、薄荷など、心を整える生薬が含まれており、さらに胃腸を整える生薬や血の巡りを良くする生薬も配合されています。

 漢方の視点は、心と体を分けて考えず、一人の人を丸ごと見るという考え方です。もし漢方好きの医師の診察を受ける機会があれば、気になることをいろいろと伝えてみてください。医師はお話をよく聞いた上で、あなたに合った処方を考えてくれるでしょう。

 現代のストレス社会において、心と体のバランスを保つことは非常に重要です。日々の生活の中で心と体のケアを忘れず、どちらか一方に偏らないように心がけましょう。例えば、適度な運動を取り入れたり、趣味の時間を大切にしたりすることが効果的です。また、深呼吸や瞑想を行うことで、心を落ち着かせる時間を持つこともおすすめです。心と体の両面からアプローチすることで、より健康的な生活を送ることができるでしょう。

 私たちが健康でいるためには、心と体の両方がバランスよく機能していることが必要です。西洋医学と漢方医学、それぞれのアプローチを理解し、自分に合った方法を選ぶことが重要です。漢方医学の「心身一如」という考え方は、現代社会においてますます重要性を増していると言えるでしょう。心と体のつながりを大切にし、全体としての健康を追求することで、より充実した人生を送ることができるのです。

 これからも、心と体の健康を保つための情報を発信し続けますので、どうぞお楽しみに。フォローやサポートもよろしくお願いします。今日もにこやかにお過ごしください。

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