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疝痛(さしこむ痛み)と芍薬甘草湯

 急激に起こる、差し込むような痛みを疝痛(せんつう)と言います。筋肉がギューっと強く収縮することによる痛みとされています。体に起こる痛みの中で最も強いとされる石による痛み、例えば胆石や尿管結石などによる急な痛みというのが疝痛に入ります。つまった石を排除しようとして、胆嚢管、胆管、尿管の筋肉が強く収縮したときに起きる痛みだと言われています。腸管の筋肉が強く収縮するときなどもお腹の疝痛が出現することがありあます。こういうときによく使われるお薬にブスコパンがあります。筋肉の収縮を緩めることで痛みを緩めるわけですが、これは平滑筋といって内臓にある筋肉にしか効きません。ですから、同様に筋肉が収縮して足がつるというときは、骨格筋が問題なわけですからブスコパンは効きません。

 ところが、漢方薬の芍薬甘草湯は平滑筋でも骨格筋でも有効ですからどちらにも使うことができます。ちなみに、保険適応病名としては、「急激におこる筋肉のけいれんを伴う疼痛、筋肉・関節痛、胃痛、腹痛」となっています。どうでしょうか。筋肉とだけ書いてありますね。ということは骨格筋でも平滑筋でも良いと解釈できます。実際にどちらにも効きます。

 検診などでたまたま受けたエコー検査などで胆石が見つかることがあります。全く胆石による症状を経験していない方もおられ、そういう場合サイレント・ストーンをその胆石を呼びます。一方、脂っこいものを食べた後、上腹部が痛くなることがあるという胆石を疑わせる症状の経験を述べる方もおられます。いずれにしろその後、胆石発作が起こるかどうかは誰にもわかりません。そんなとき、芍薬甘草湯をお渡しして、上腹部に痛みが出たらすぐ服用し、3袋まで服用しても痛みが取れないならすぐに病院にかかるように伝えることもあります。治療として手術をするかどうかは担当の医師、できれば外科医に相談してください。

 尿管結石の場合も芍薬甘草湯が有効です。芍薬甘草湯は頓服としてつかい、猪苓湯をしばらく服用すると排石を促すと言われていますから、両者をうまく利用するのが良いと思います。

 あと、腹痛全般に試して見ても良いですし、急な足のつりに対応する薬として、芍薬甘草湯に代わるものはないと思います。またぎっくり腰の時など、腰部の筋肉の攣縮を伴っているようなときにも使えます。

 漢方薬はじわじわ効くもの、という思い込みをしている方が多いと思います。実際そういう効き方をする処方も多いですが、切れ味抜群で即効性を示す場合もあります。芍薬甘草湯で痛みが取れればそれを実感できると思います。

 芍薬甘草湯は芍薬と甘草で構成される漢方薬です。芍薬にはまず副作用を気にする必要はありませんが、、甘草は偽アルドステロン症を引き起こすことがあり、低カリウム血症、ナトリウと水分の貯留のよる浮腫や高血圧を引きおきし、さらに進むと不整脈まで起こすことがあります。一般的に連用には向いていない処方だと言えます。一日の甘草摂取量が2.5gを超えると注意が必要とされていますが、甘草による副作用の出やすさは人によって大きく異なるので一概には言えません。ただし芍薬甘草湯の一日治療量には6gであるということは頭の片隅に覚えておいてください。あまり恐れすぎる必要はありませんが、服用していて、血圧上昇やむくみ、動悸、息切れなどを感じたら服用を注視して、医師や薬剤師に相談してください。

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