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真武湯(しんぶとう)

 加齢と共に新陳代謝が落ちてきます。すると体も冷えてしまいがちになります。それが原因で体の調子を崩したりします。そういった時によく使われるのが、真武湯です。

 真武湯はもとは玄武湯と呼ばれていたそうです。玄武は四神のひとつで、冬をもたらすとされていますから、体の冷えと結びつけられて冷えを改善する効果と対応させたのかもしれません。また一般的には、五行では冬は黒と結びつき、玄武も黒っぽく描かれていますから、黒っぽい附子からのイメージで玄武湯と名付けられたとも言われています。その後玄武というのが皇帝を想起させるとのことで、真武湯と変えられたと言われています。

 真武湯は、茯苓、芍薬、蒼朮、生姜、附子の五つの生薬から構成されています。茯苓、蒼朮、小姜で水バランスを整えると共に気を補い、附子と小姜で体を温め、芍薬で筋肉の過緊張を緩めます。全体として、体をあたため、水分の偏在を正し、新陳代謝を良くして、体全体の活力を高める処方となっています。

 保険適応に挙げられているものは多彩です。「胃腸疾患、胃腸虚弱症、慢性腸炎、消化不良、胃アトニー症、胃下垂症、ネフローゼ、腹膜炎、脳溢血、脊髄疾患による運動ならびに知覚麻痺、
神経衰弱、高血圧症、心臓弁膜症、心不全で心悸亢進、半身不随、リウマチ、老人性掻痒症」となっています。

 実際にこれを処方する人は、体質が虚弱で代謝機能が落ちていることによって体の不具合が生じています。下痢気味で倦怠感が強く、冷えがあり、めまい、腹痛、むくみなどを伴うことも多く見られます。脈は触れにくいことが多いです。このように書くと、高齢者用の処方のように感じますが、若年者でも適応となる人は少なくありません。

 真武湯が対応するめまいは、ぐるぐる回るようなめまいではなくて、動揺感と表現されるものです。歩く時になんだかふわふわして、地に足がついた感じがせず、まっすぐ歩けないと訴えられます。

 応用できる診断名としては、慢性下痢、過敏性腸症候群、神経性食思不振症、低血圧症、レイノー病、自律神経失調症、慢性腎炎、蕁麻疹、湿疹、かぜ症候群、心身症(神経症)、慢性甲状腺機能低下症、浮腫、冷え症などが挙げられます。

 真武湯は代表的な附子剤です。生薬の附子は、冷えを除き、痛みを和らげます。血管拡張、抗炎症作用、強心作用などが報告されています。

 疲れてしまい、エネルギーがわかずに、ずっと寝ていたいと言った人に使うことも多いです。そのような人でさらに新陳代謝が落ちきってしまっているといった場合には、この真武湯に人参湯を一緒に使いことがあります。こういう使い方が必要な方も時々おられますから、今の日本には本当に疲れきっている人がいるんだなぁと思います。

 あなたは疲れていませんか。自分の体を時々点検し、普段から養生を心がけ、疲れ切ってしまう前になんとかしたいものですね。疲れきってしまっていると感じたらいちど診察を受け、大きな問題がないと分かったときには、漢方薬のことも思い出してみてください。

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